第80話 お見合い?


「お見合いってなんで、」


手紙を渡されて少ししたあとやっと状況が飲み込めたので詳しい話を姉さんに聞いてみる


「将来的には純平が会社を継ぐでしょ、だから父さん的には早く結婚してほしいんじゃない?」


「なるほど」


声ではなるほど、と言ったが心ではやっぱり納得できない


とりあえず手紙全体に目を通す

そこにはご丁寧に日付、時間と場所が書いてあった

その日付は文化祭の次の日だった

俺の学校は金曜と土曜で文化祭を開催する

そして日曜日はお見合い、やることが多すぎてまるで他人事のようだった


「これって相手はもう決まってるの?」


相手に関することは何も書いていなかったので姉さんに聞いてみる

こういう手紙には相手のことは書かないのだろうか?


「んー、私も詳しくは覚えていないけど、どこかの会社の娘だったと思う」


お見合いなんだからそりゃそうだろ

と思ったが口には出さず適当に相槌をしておいた


ピンポーン


家のチャイムが鳴った

こんな時間に訪問してくる人は珍しい


「私出るよ」


姉さんはそう言うと自分の座っていた席から立ち

玄関に向かった


「誰ですか?」


姉さんの不思議そうな声が聞こえたので俺も少し体を動かしてドアの方を見た


「あっ、お〜い純平く〜ん」


玄関に立っていたのは唯さんだった


「唯さん?!なんでここに?」


「純平くん宛の荷物来たからどうしようかな〜って」


荷物なんて頼んでいただろうか?


「私はお邪魔ですね、先に失礼します、純平、その件でなにか不満があるなら父さんに相談しなさい」


姉さんはそれだけ言うと先に帰ってしまった

これで良かったのだろうか?



「それじゃあ帰ろっか」


「はい」


俺と唯さんも帰ることにした

手紙は唯さんに見つからないようにササッとポケットにしまった


「ありがとうございました、助かりました」


あのまま話を続ける気もなかったので唯さんが来てくれて助かった


「ごめん、なにか大切な話してたんでしょ?」


「別になんでもない話でしたよ」


俺はそう答えると何かを確認するようにポケットにしまった手紙に触れた


「そう?ならいいけど、なんかあったら相談してね、家族の問題は無理かもしれないけど」


「ありがとうございます」


相談できるはずもないので感謝だけしておく


家につくと早速ご飯の支度がしてあった

手を洗ってから席につき手を合わせる


「いただきます」


そう言いご飯を食べ始めた


「そういえば優愛と芽依さんと麻衣さんっていつ帰ったんですか?」


ゲームをする前ぐらいから気になっていたのだが聞けなかったことを今聞く


「純平くんがお昼寝してる間に帰ったよ、また来るって」


「またみんなでご飯食べれますね」


子供の頃からみんなでご飯を食べるという経験がなかったので少なからずそういう憧れがあった


「そうだね、次はもっと豪華なものにしようか」


「いいですね!」


そこからはずっと雑談のような他愛もない話をした

別に話す内容に意味があったわけじゃない、

こうやって話せることが嬉しかった

だけど、さっきから俺は唯さんの目を見て会話をすることができていなかった




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