第81話 考え事


「今日はお風呂どうする?」


あっ、

そんな声が漏れそうになった

今日はとても長く感じてすっかり忘れていたが今の俺は自分でできないことのほうが多いぐらい怪我してるということを


「俺的には入りたいですけど、迷惑かけてしまうならタオルとかでも全然、」


今の俺がお風呂に入るためには唯さんの協力が必要不可欠だった、


「私は全然大丈夫、お風呂もう沸かす?」


「はい、よろしくお願いします」


俺はそう言って軽く頭を下げた




少し経つと機械がお風呂が湧きましたと鳴る

俺と唯さんはその音を聞いてお風呂場に向かった



「服は脱げる?」


「流石にそれはできます」


脱衣所に着き服を脱いだ

見えちゃいけないものにはしっかりとタオルを巻いた、もちろん唯さんは向こうを向いている


「体とかは洗える?」


「はい、できます」


「そっか、なら何かあったら呼んでね」


「わかりました」


お風呂場に入るところを唯さんに手伝ってもらった

その後は流石に自分でやらないとまずい


「あと、、今日私は遠慮しておくね、狭いし、」


含みのある言い方と少し赤くなっている唯さんを見て昨日のことを思い出してしまう


「はい、」


唯さんにはそう返事をしたが頭の中では昨日のことを思い出してしまいそれを打ち消そうと必死だった



唯さんは向こうに行ってるね〜と言ってお風呂場から出ていった

なぜだか少しモヤッとした

なにかわからないこの感情を俺は恥た

無知による恥なのか、申し訳なく思う恥なのかそれも分からなかった



俺は少し心がモヤッとしながら、

難なく体を洗い終えた

壁をうまく使いなんとか浴槽に入りぼーっと考え事をしてしまう

不意に頭の中に一番最初に浮かんだのはあの手紙のことだった


「お見合い、」


外にいる唯さんに聞こえないぐらい小さい声で口に出し頭で理解しようとする

しかしそれはテレビの中のフィクションのようなものでなかなか現実味をおびない

一度理解した気になってもやっぱりそれは他人事だった

俺はそれを忘れようと浴槽の中の水を両手で器を作るようにして掬うとバシャバシャと音を立てて顔にかけた

そうすることでその考えも水と一緒に何処かに流れてくれると思ったのかもしれない

俺はそのことを頭の中で蓋をして、

考えないようにし、

さっきからモヤモヤしている心を見ないふりして

お風呂からあがった


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