第55話 振り返り


駅のホームにて電車を待つ

電車まであと30分近くある

つい先程電車が出てしまったらしい

これが田舎の嫌なところだ

こんな時間にこんな場所にいるその光景はまるで

唯さんと会った最初の日と対比しているようだった

あの日もこの時間ぐらいに一人でこの場所にいた

あの辺りの日を思い出すだけで今でも胃が少しキリキリ痛む

多分俺はあの日から何も変われていない

唯さんや芽依さんが居てくれたお陰で今がある

俺は周りの人に動かされて変われた気になっていただけだ

現に優愛や裕翔には口ではもう関わりたくないといったけど、二人にもなにか大切な理由があったのではないかと昨日から考えてしまう

裕翔からは直接理由を話されたが優愛はなんであんなにお金を欲しがったのかわからない

俺が知らなくても良いことかもしれないがでも気になって仕方がなかった


あの日ここで唯さんと出会ってから色々と楽しいことが多かった、というか楽しい日しかなかった


この場所で唯さんと出会って元気をもらって

病院に行くことになって何故か一緒に住み始めたり

唯さんとでかけて服を選んでもらったり、ゲームを買ったり、

その後知らない人と揉め事起こしたりしたけど、

一緒にゲームをしたり、膝枕してもらってお昼寝したり、

紅葉を見に行ったり、ホラー映画を見たり

唯さんと一緒に生活し始めてから知らなかったことをたくさん知ることができた

今までは朝少し顔を合わせる程度だったけど今は違った

唯さんが実はゲーム好きということを知れたし、

動物が好きということも知れた

今までだったら特に何もしなかったハロウィンも一緒に遊んだ

唯さんと出会ってからずっと唯さんに甘えてばっかりだ、俺は一つでも唯さんに返せているのだろうか、俺の母は妹を産んですぐにどこかへ行ってしまった、なので唯さんにずっと甘えている

このままで良いのだろうか、唯さんもずっと俺の近くにいてくれるわけではない、俺は唯さんがいなくなったとき耐えられるだろうか、

もし唯さんに彼氏が出来て、同棲するから出て行ってほしいと言われたら唯さんに彼氏ができたことを素直に喜べるだろうか、

(多分無理だな、)

そんなもしものことを考えただけで目頭が熱くなる

唯さんとは一ヶ月程しか一緒にいないけど、もう

俺の中で欠かせないものになっている

(ってこんなこと考えてても意味ないか、頑張ってと言われたんだから頑張らないと)

電車の到着アナウンスが聞こえる

もうそろそろ電車が来るようだった



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