第32話 不運は続く


文化祭実行委員は男女一人ずつらしい

まずは男子からということで番号順にくじを引いている

俺の番号は16番で今は3番の人が引き終わったからまだ時間はある

とりあえず心のなかで当たらないように願っておく

そうすればこの前唯さんと見たあの魔法使いの映画のようにくじの箱がわかってくれるかもしれない


少し時間が経ち10番ぐらいまでは進んだ

今のところあたりは出ていないらしい

後半のほうが男子の数が比率的には少ないので少し怖くなってきた




俺の番が来てしまった

先生がくじの箱を持っているので席を経ちそこまで移動をする

くじを引く前に祈っておく

あたりは嫌だ、あたりは嫌だ、あたりは嫌だ


来い、はずれ



「おぉ~おめでとう桜井くん」


先生からそんな声をかけられる


「えっ、あっ」


当たってしまった

早く帰りたいからやりたくなかったのに

まぁしょうがない、当たったならやるしかない


「は~いじゃあ男子の方は桜井くんに決定です」


先生がそう言うと俺よりあとの番号の人たちから

安堵の声が漏れている




女子の方のくじが始まった

俺は話しやすい、優しい人がいいな〜なんて思う


くじを引き終わった女子たちがはずれて安堵しているのを見ると文化祭実行委員が嫌なのか俺と作業をするのが嫌なのか、どっちなのか分からず少し嫌な気持ちになる


優愛の番になった

別れたとはいえ少し前まで大好きだった人をそんな簡単に嫌いになれるはずもなく無意識に目で追ってしまう


優愛がくじを引く

どうか当たりませんように、優愛とは気まずいから嫌だな〜なんて思っていると


「先生、当たりました」


「それじゃあ女子の方は佐藤さんに決定です」


「えっ」


そんな声が漏れてしまった

なんで俺は2度もこんな仕打ちを食らわなければいけないのか

運の悪い日ってあるんだなと思う


「はい、では当たった二人は前にお願いします」


担任がそういったので俺たちは教室の前の方に移動した


「えーと、文化祭実行委員はこの二人に決まりました、それではお二人は実行委員の仕事をお願いします」


「はい、頑張ります」


俺は適当にそんな返事をしておく

クラスを見回してみると

この前の騒動を見ていたやつはなんて言ったらいいのかわからないような表情をしていた

この前の騒動のとき休んでいたやつは良かったとでも言いたげな顔でこちらを見てくる

それが良くないんだよ、と言うわけにもいかないので、とりあえず教室の後ろに貼ってある掲示物を眺めていた



文化祭実行委員についての話が終わったので席に戻る

とりあえず社交辞令的に優愛に声をかける


「佐藤さん文化祭実行委員頑張ろうね」


俺がそう声をかけると意外にも返事が返ってきた


「はい、頑張りましょう」


返事が返ってきたのは驚いたけど、この前動物園であったときの声のトーンとは明らかに違うものだった、こいつは本当に何がしたいのかわからない

そんなことを考えていても意味がないと思ったので担任の話を聞くことにした

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