第19話 夢


家に帰ってからは特に何もなく普通な日常だった

いつも通り唯さんと今日あったことを話した

今日見たものだどうだったとか今日やったゲームがどうだったとか、あの動物可愛かったとかそんな話


その後はご飯を食べてお風呂に入って

いつもと違う事といえば疲れたので早く寝たことくらい

早く寝たことでいつもより長く夢を見た

嫌な夢だった

前までは良い夢だった

この夢を見たトリガーは多分優愛と会ったことだろう



いつも通りの通学路

駅から学校までの道

隣にはいつも通りの友達

いつも通りではないことと言ったらこれが夢であることぐらい

これが夢だと気づいたのは些細なことだった

ただ今は駅の近くで工事をやっていたはずなのにこの世界ではやっていなかったということだけ

明晰夢なんて初めて見る

少し楽しみだ

そんなことを考えていると隣の歩斗が口を開く


「久しぶりの学校つらいな、まだ休みが良かったよなー?」


「あぁそうだな」


歩斗の言葉が少し引っかかった

久しぶりの学校?

自分の周りを見渡してみる

青い空に白い雲

とてもきれいな空

その後自分の服も見てみる

ブレザーを着ずにワイシャツだけでの登校

しかも半袖

このことから想像するに多分夏休み後最初の登校なのだろう

だとすると優愛とはまだ仲良かった頃なのか

いや?仲良かったのは表面上だけで本当はもう優愛は浮気しているのか

あの頃の俺は気づかなかったけど今ならどうだろうか?

でも夢は本人の記憶から作られるっていうから


「どうした?純平難しい顔して」


「いや、別になんでもないよ」


「そーかなら良かった」


「そんなことよりコンビニ寄ってこうぜ」


「あーまぁ時間あるしいいか」


優愛のことについて考えるのは一旦やめた

夢の中のコンビニはどうなのだろうか


コンビニに行くはずだったのに気づいたら学校にいる

夢はこういうものだから仕方ないか


そうこうしているとあの人物が教室に入ってきた


「おはよー純平」


「おはよう優愛」


自分がどんなふうに挨拶していたかさえもわからない、なので適当にそれっぽく挨拶をする


「ねぇー見てこれ」


優愛はそう言いながら俺の席近づいてくる

近くまで来ると俺が椅子に座っているのにその上から座ってくる

もうこのときから優愛と裕翔は

また嫌なことを考えてしまう


優愛は俺の上に座ったままスマホを操作している


「純平、これ食べたい」


そう言いながらスマホの画面を見せてくる優愛

そうだった、こんな日常だったな

ニコニコしながら話す優愛、それを面白がって見ている歩斗と来翔と裕翔、重いな、恥ずかしいななんて思っても結局時間まで優愛の椅子になっている俺

懐かしい気持ちと寂しい気持ちと悔しい気持ちが

同時に襲ってくる

これが夢じゃなければ俺は今どんな顔をしているだろう



目が覚めると朝だった

嫌になるほど眩しい朝

スマホを確認すると8時だった

隣の唯さんはまだ寝ていた昨日はとても疲れたのだろう

まだあの夢の余韻が残っていて考え事をしてしまう

俺は優愛のことが嫌いなのだろうか

休み明け教室であったときとても嫌な気持ちになった

放課後優愛と裕翔のキスを見てしまったときも嫌な気持ちになった

動物園で見苦しい言い訳をしているときも

だけど考えたことなかった

俺は優愛のことが嫌い、大嫌いになってしまったのか

昨日唯さんが優愛に色々言ってくれたときスカッとはした

だけど、どうなのだろうか

俺はこの間まで大大大大大好きだった人のことを

すぐに割り切って大嫌いなんて思うことはできなかった


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