第11話 唯さんとお出かけ(3)


気がつくと知らない天井だった

とても顔が痛い

前にもこんなことあった気がする


時は遡ること数時間前

あのうどん屋さんのときに遡る


「俺はあなたが嫌いなので帰ってください」


俺がそう言うと


「おいガキ、ちょっと表でろや」


男がそう言い俺の髪を引っ張って外に連れ出した

もちろん抵抗したが力の差が激しく意味がなかった


お察しの通り

俺はその男に外でいっぱい殴られた

俺も必死に抵抗したが喧嘩なんてしたことがなかったため、その勢い虚しくぼこぼこにされた


その男は俺をぼこぼこにしたあと


「ちっ、こいつまたあのときのガキかよもういいや」


と言ってどこかに消えた

その後俺は唯さんに大事にしたくないから警察は呼ばないでほしいと頼んだ


俺の記憶があるのはそこまで

時間をもとに戻そう


目が覚めると隣には唯さんがいた

上半身を起こす

唯さんと目が合うと唯さんは目いっぱいに大粒の涙を貯めて泣き始めてしまった

唯さんを泣かせたあいつが嫌だったのに結局あいつと同じになってしまった


「ごめんね、ごめんね、」


そう言いながら俺のお腹のあたりに顔をうずめて泣く唯さん

こんなとき何をすればよいのだろうか

頭を撫でればいいのだろうか?

心配をさせないようなことを言えばいいのだろうか?

俺にはわからなかった

なので


「こちらこそすいませんせっかく楽しかったのに台無しにしてしまって」


と言う


「ううん、私が悪いの、本当なら私があそこで頑張らなきゃいけなかったのに、過去のことに縛られて」


そう言い自分を責める唯さん

そんなことないと言いたかったけどそんなこと今の自分に言う資格はあるのだろうか?

俺が強ければ唯さんを泣かせずに済んだのに


それから少し時間が経ち唯さんが話し始める

唯さんが高校の時

彼に告白され、それを断ったとき

その時から軽いいじめのようなものが始まったらしい

彼はクラスの中心人物だったらしく

そんな彼の告白を断った唯さんは悪者扱い

クラスの女子や男子から無視されたり、物を隠されたり、典型的ないじめが始まったらしい

幸いそれは3年の終わり頃だったのですぐ卒業だった

それでも辛く、怖かったそうだ


話が終わり目にいっぱいの涙をため、精一杯の笑顔を作りながら


「また助けられちゃったね」


という唯さん

さっきの男の人も言っていたけどまたって何だろうか?


その後は病院の先生が来て

その先生にとても元気ですというところを見せ

なんとか今日退院することができた


これはあとから聞いた話だが

あの男はあのうどん屋でことあるごとにケチをつける厄介客だったらしい

なのでお店の外で喧嘩をしてしまったことに対して

逆にあいつを追い払ってくれてありがとう

と感謝をされた


今日1日色々あったけど

全部丸くおさまったようで良かった気がする

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