反撃 04

 俺はフレーナの元に向かうために最短ルートを通る事にした。


『ルートはしっかりとネジコが示すから安心してぶっ飛ぶニョ』


「分かっている、お前を信頼している」


『ニョ!? またダーリンがネジコの好感度を上げてきたニョ!! 既に告白すれば落ちるのに未だに限界突破を狙っているニョ!!』


 俺は街の中をブーストダッシュを用いて高速で走り抜ける。通常ならあり得ない速度でダッシュしながら建物には全くぶつからない。

 ネジコがドローンを使って最短ルートを表示してくれているので不安も無く全力ダッシュ出来る……まさに、EXTイクストでパルクールアプリを使っているかのようだ。


『ロリ巨乳とバトルスーツ組の戦闘が始まっちゃったニョ……このままだとあっちの方が早く接触するニョ』


「マジか……少し危険でも構わない、もっとギリギリを攻めるルートを出せ」


『分かったニョ……ダーリンならこれくらいならイケるかニョ』


 ネジコの表示したルートは家の屋根もルートに入ったとんでない物だった……EXTイクストで屋根を踏み潰さないようブーストを調整して空中で、まるでゲームで言う二段ジャンプのような真似事をしろと要求している……まぁ、できるけどな。SOFランカーならありありのテクニックだ。


 俺はそのままジャンプで家の屋根に飛び上がるとブーストペダルを調整して速度を更に上げた。


『ダーリン、窓ガラスが割れたニョ……減点だニョ』


「マジか……後で弁償するから許せ」


 少し調子に乗っていたようだ……ゲームでは建物はともかくガラスだけが壊れたりしなかったから油断していたぜ。

 そんな事を話している間も俺はスレスレでギリギリな操作で高速を維持して街を通り抜けていた。

 やがて門のある高い塀をジャンプで乗り越えると……門の外にある光景が目に入った……それは1体のバトルスーツがピンク色のボディーアーマーの女性を襲っている様子だ……俺はその地点目掛けて急降下する。


 聞こえたからだ……俺の名を呼ぶその声が!!




 バトルスーツから乗り出したゲス顔のエルフが、スーツの腕で拘束しているフレーナの顔を掴んで顔を近づけようとするその瞬間、巨大な腕がそれを包み込んだ。

 その刹那2枚だけ発射していたフェイタルエッジがスーツの腕を切り落とす。


 フレーナが解放されたのを確認すると俺はEXTイクスト手に包み込んだそれを容赦なく持ち上げた。


『うおおおおっっ!? あがががっがががががっっ!!!』


 きったない悲鳴を上げたのを確認すると、指を動かして苦痛に歪むその顔を確認してやる……おーおー、口からよだれ垂らしてるぜ。


「よう、久しぶりだな三下ゲス野郎ファング


『なっ、EXTイクストだと!? こんな辺境惑星で……嘘だ……あだだだだ、離せ!!』


「これが現実だ……そしてお前の下らないお遊びもここで終わりだ」


『エイジだな……くそ、なんでお前がEXTイクストを……ぐううううっ』


 俺はファングをゆさゆさ揺すってやると、バトルスーツの重みで苦しそうに声を上げる。


『エイジ!? エイジなんだね!?』


「あぁ、待たせて悪かったな……もう大丈夫だ」


『うん、うん!! エイジが来てくれるって信じていたから』


「少し待っていろ、全部終わらせてくるぜ」


 ネジコに頼んで戦場の様子を確認するとリリア達がこちらを追い越して戦場に到着したらしい。EXTイクスト並に早いとか……精霊魔法なのか?


 俺はリリア達が向かった場所とは別の方へフェイタルエッジを飛ばした。


 戦闘用ドローンもバトルスーツもリリア達の攻撃に……上空からの索敵ドローンのレーザーに……俺の放ったフェイタルエッジに次々と破壊されていった。




『ばかな……俺の、俺の部隊が……俺の作戦が……』


 呆然としながら俺の手の中でファングが呟く……下半身にかかるバトルスーツの重みすら気にならないくらい現実を認めたくないようだ。


「これが作戦って程の物かよ……お前は負けたんだよ、現実見ろよ」


『なんで、エースの俺が、SOFランカーだった俺がこんな奴に負けるんだ……認めねぇ』


「別にお前が認めようと認めまいとお前は負け犬……人の好意につけ込んで不意を打つくらいしか出来ない卑怯者、しかも、それをやっても結局は最終的に負けてるから良いとこ無しだからな」


『ぐうっっ、俺だってお前のようにファクトリーを準備していれば……』


「だから最初からそれを用意出来なかった時点で、俺とお前との間に埋めがたい差があったって事をいい加減分かれよ……さっさと現実見ろクソ雑魚三下野郎」


『うそだああああああっっっ!!』


「叫ぶなうるさい、もう寝てろ」


 EXTイクストの手のひらに捕虜を無効化するスタンボルトを使うと、ファングはビクッと痙攣した後グッタリと気を失う。


 やれやれ、現実を見れない身体の大きな子供に付き合っていられないぜ……さて、戦場を見る限りもう敵はいないようだな。


 俺はEXTイクストを片膝をついて座らせるとコックピットを開けて外に出た。降りた先には緑のボブカット、ピンクのナイスバディなボディーアーマーの女の子。


 俺の大切な女……フレーナが瞳を潤ませながら立っていた。


「まぁ、なんだ、さっきも言ったけど待たせて悪かった……お前が無事で良かった」


「エイジ!!」


 俺の言葉を合図にフレーナは胸に飛び込んできた……久しぶりに愛しさと柔らかさと良い香りを堪能する。


「会いたかった……ずっと会いたかった」


「あぁ、俺もだ……ちゃんと大切だと思っていたつもりだったが、離れてそれを嫌というほど実感した」


 ギュッと俺の背中に手を回すフレーナの腕が強くなる……俺は彼女の頭を包み込むと今までの時間を取り戻すように撫でる。


「ボクも……エイジが大切で……大好きで……会えなくて切なくて」


「もう離さないから何も心配はいらない」


 フレーナは顔を上げるとその潤んだ瞳をそっと閉じる……その後に少しだけ持ち上げられた顎に片手を添えると、ピンク色の艶を放っている唇に自分のそれを合わせた……フレーナの腕が俺の頭を包み込んでくる。


「エイジ……エイジ!! んんっ!!」


 軽いタッチのようなキスの後、フレーナはより強く気持ちを伝えようと深く口づけを求めてきた。


 いつの間に戦場は静寂に包まれていた……もう、戦闘の音は何処にも聞こえない……まるで、この世界に俺とフレーナしかいないように……と思っていたのだが……


「ぬわあああああっっ!! エイジ!! おぬ、おぬっおぬしは何をしておるのじゃあああああっ!!!!」


あるじ!! マリチャパは次の順番を要求する!!」


「お、オラは何も見ていないぞ」


「あちしも~」


「なんて不潔な……エイジ殿、あなたはいったい何人の女性に手を出しているのですか!!」


 なぬ! いつの間に皆が集まってきている!! 俺もフレーナとの再会でつい周りの気配察知を怠ってしまっていた。


「んんっ!? んんん!?」


「ちゅ、ちゅ……んんっ……」


 って、フレーナ!? 離れようとしてもその腕が俺の顔に組み付いて離れない。


「なっ!! 早く離れぬか!!! 破廉恥じゃ!!」


「フレーナ、次はマリチャパだぞ!!」


 そしてその場所には続々と仲間達が集まってくる……待て、見ては駄目だ!! 何この羞恥プレイ!?


「おお、つがいの誕生だな」「やだ……すごい」「おお、さすがエイジ殿……」「公衆の面前で!?」「人族では当たり前なのか?」


「ぷはぁ……これでエイジとボクの関係がみんなに知れたね」


「お、お前は……なんて事を……」


「エイジ!! そなたは、妾という者がありながらなんたる……なんたるっ!!」


あるじ、次はマリチャパにして!!」


 すぐに二人が俺の左右に組み付いてくる……いや、ちょっと待て、リリアとは別に何も無いだろう!! アレやコレは人助けだし、ってかマリチャパは内緒だと言っただろう!!


「ちょっとまって、エイジ、マリチャパが何で……あと、この人誰? まさか、ボクと離れている間に新しい恋人を増やしたの?」


「いや、違うんだ……色々な深い事情があってだな」


「何が違うんじゃ!! そなたは妾の唇を奪ったでは無いか!!」


「マリチャパもキスした!! もっとしたい!!」


「エイジ!? やっぱり浮気したんだね!!」


 やばい、せっかくピンチを助けてハッピーエンドになると思っていたのに、気付けば二股どころか三股、四股クソ野郎の浮気がバレた修羅場になっている……修羅場エンドは望んだ結末じゃ無いぞ!!


「待つんだ、もっと大切な事がある……今は戦後処理が大事だ」


「エイジはボクが大事だって言ってくれたよね? それより大事なの?」


「マリチャパはあるじを独占しなくてもいい、ただそばにいれれば良いぞ」


「エイジよ!! そなたは……妾の唇を奪っただけでは無くて、妾の全てを見て触っておるでは無いか!! 責任を取るのじゃ!!」


「「「えっ!?」」」


 おいいっ、お前それをここで言うか!?


「エイジ殿!! 姫様に何をしたんですか!?」


「エイジ!? ボクにもして無い事を、この娘にしたの!?」


あるじ!! マリチャパもしたい!!」





「収集がつかん!! 頼む、誰か助けてくれ!!!」




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