反撃 03

□□□□ 数十分前 □□□□



 目的地に向かって軍用バスは高速走行している……この調子ならあと30分も掛からずに行けるだろう。


『ダーリン、ドローンを先行させて街の様子を見てきたニョ』


「(向こうの様子はどうだ?)」


 ネジコの話によるとまだ戦闘は始まっておらず、街から離れた森の位置に3馬鹿達が待機、そして街を包囲するように部隊を3つに分けて同時攻撃するつもりのようだ。


『包囲の状況からあと10分ほどで戦闘開始するかもしれないニョ』


「(了解だ、よし、時間は少ないがその情報を元に作戦を練るとしよう)」


 相手はフレーナ達と当たる正面に戦力を集中して、左右はバランス良くパワードスーツをドローンを振り分けて当たるようだ。俺の作戦は単純に片方を俺、マリチャパ、リリア、カムチャパ、アナチャパの5人、残りを全ての戦力で当たり、そのまま敵を殲滅して合流という単純な作戦を立てた。


「パワードスーツ……大鎧を来た敵は強力だが、ムカチャパ族は防御に徹して、エルフが射程外から攻撃し続ければ問題ない」


「精霊なら味方に当てず、敵だけ攻撃する事が出来るからの」


 そうなのだ、精霊魔法はフレンドリーファイアが無いらしい。俺も試しに使って見せて貰って大いに驚いた。今回はそれを利用して、相手に度肝を抜いて貰おう。


 作戦とも言えないような物だったが問題ないだろう……何せこちらには秘密兵器もある……負ける要素が見つからない。強いて言えば人質を取られないように気を付けるくらいだろうか? いや、それも精霊魔法や秘密兵器があれば問題ないか?


『敵が動き出したニョ……あと5分でこちらも戦場に到着だニョ』


「よし、みんな、そろそろ作戦開始だ……俺の声を聞き逃すなよ」


 俺はこめかみに指を当てて見せ、作戦開始の秒読みを始めた。




 作戦開始位置に付くと二台のバスを回収して二手に分かれて走り出した。俺達の前方遙か遠くに街の側面を突く敵が見える。

 いつもなら自力で戦うのだが今回は容赦なく使える物は使う……手心を加えて人質を取られても面白くないからな。


 奴らの上空からキラリと輝くと何機かの戦闘ドローンが爆発した……上空からの探索ドローンの攻撃だ。


 敵がこちらの存在に気付いて街と俺達と目標をどちらに絞るか迷っている……いいぞ、どんどん迷ってろ、その1秒1秒とお前らの終わりが近づいているんだよ。


 そのままDSから取り出した 二丁拳銃ケルベロスを掃射すると、戦闘用ドローンが次々と爆発していく。さすがにこの段階で敵は街に向かうのは危険と判断してこちらに向きを変えてきた。

 だが、敵がこちらに向かう間にも上空と俺達の攻撃で敵の戦力は消えていって、あっという間にバトルスーツ2機となった。


「くそ、エイジ……お前のせいで俺達は散々な目に合った……許せん」


「しかもまた違う女を連れて……相変わらず取っ替え引っ替え、お前は敵だ」


 どうやら逃亡するときに襲ってきた奴がスーツの中に入っているらしいが、もう顔を忘れているので誰だったか分からん。


「よくわからんが全て自業自得だろう? 人を裏切るような奴は報いを受けるんだよ」


「何じゃこの男は? 言ってる事が小物臭いの」


あるじ、作戦通り小物はマリチャパ達に任せて先に行く」


 後ろから付いてきた仲間達がここを受け持ってくれるようだ。俺達の存在が見つかった時点で3馬鹿に連絡が行くのも時間の問題だからだ。


「行かせると思うか? お前ならともかくこの星の人間にSOFランカーの俺達を……舐められたものだ」


「どちらが舐めてるのかすぐ分かるぜ」


「抜かせ!! 女の敵は消えろ!!」


 パワードスーツの一人が両手に短剣……と言っても生身から見るとロングソードと言っても差し支えない長さ……を振りかざして襲ってくるが、しかしその剣が2本とも俺の身体に触れる事は無く上に跳ね上がる。


「そんな遅い剣が通用すると思われるのはマリチャパは大変不満だ」


「オラの斧を簡単に抜けると思うな」


 槍を振り回しているマリチャパに、ポールアクスを構えたカムチャパが俺の前に立ち塞がった。


「原住民に庇われて良いご身分だな……だが隙ありだ」


 側面に回り込んだもう1体のパワードスーツが両手に凶悪なクローを伸ばして向かって来る……が、目の前に巨大な岩が現れてその爪は防がれる。


「土の精霊の岩はどうじゃ……下手な金属よりも堅いのじゃぞ?」


 そしてその後ろにいつの間に回り込んだアナチャパがパワードスーツの膝関節部分にククリをお見舞いする。


「ぐあ、早い!?」


「悪いが今日は本気だ……お前達の土俵に入って勝負をしてやるほど俺は優しくは無い」


 DSから俺はある物を取り出すと、それまで俺の身体を照らしていた太陽の光が届かなくなる。


「なっ、そ、それは……まさか……」


「こんな、辺境の星で……それを……」


 戦闘中にも拘わらず呆然と立ち尽くすパワードスーツの二人。その身上げた先には片膝をついた巨人……EXTイクストの姿があった。


 その姿はアンドの街やワレワールで見たようなものとは違い、非常にスリムなボディ、そしてその背中には翼のような物が生えていた。


「お前らが人から奪った拠点で楽しくやっている間に俺はひたすらこいつを作るための努力をしていた……お前らとは努力や信念、全てにおいて格が違う」


 俺はすぐにコックピットに乗り込むと起動シークェンスを開始する。


「やらせるか!!」


「起動前に潰す!!」


 我に返った二人はEXTイクスト目掛けて動き出そうとするが、それを仲間達が阻む。


「オラを無視して何処に行こうとしている」


「それは攻撃してくれというマリチャパへのサインと見た」


 左右から息の合った攻撃を何とか双剣で受け止めるが動きは止まってしまった。


「そらそら、ジッとしていると大地に貫かれてしまうぞ……妾は甘くないのじゃ」


「あちしも~」


 クロー使いは地面から次々と出現する岩槍を躱しつつ死角から襲ってくるアナチャパのククリナイフをクローではじき返す……お陰でこちらに近寄るどころかどんどん距離が離れて行ってしまう。


「起動シークェンス完了……『フェイタルエッジ』、お前の力を見せて見ろ」


 名前を呼ばれたEXTイクストの二眼が青く光り輝くと、ゆっくりと立ち上がる……久しぶりのEXTイクストはやはり戦操兵ウォーレムよりもスムーズに動く。その挙動に俺のテンションは嫌でも上がってきた。


 フェイタルエッジ……ソリッドエッジを基準としたスレンダーなスピード系のEXTイクストなのだが、武装はフェイタルウィッチの使うファミリアを改良した物を装備している。

 それが背中に装備されている翼のような武器『フェイタルエッジ』……この武装は……おっと、それは使ってみせる方が早いな。


「いけ、フェイタルエッジ……俺の目の前に立ち塞がる敵を切り裂け」


 背中の翼が12枚に分かれて空に飛び出すと、光の軌跡を描きながら周りを飛び交う。そして獲物を吟味し終えると光となってバトルスーツ目掛け飛んで行く。


 一瞬でバトルスーツの周りと光が通り抜けたかと思うと、バトルスーツの装甲が綺麗に表面を残してバラバラに剥がれていった。


 スーツが無くなり身体を支える装甲が消えて二人とも地面に倒れ伏す。


「ば、なかな!? ハイクラスのEXTイクストだと……」


「しかもスーツだけを切り裂くとか……あり得ない技術だ」


「お褒めに預かりって奴だな……これがトップランカーの実力、知らなかったか?」


 周りを飛び交っていた翼が再び俺の背中に集まって翼となった。

 うん、初めて扱うEXTイクストだがなかなか悪くないじゃないか。


「こら、エイジよ、妾達の獲物を奪うとは、とんだ不届き者じゃ!!」


あるじ、狡い!!」


「オラの活躍の場面が無くなって怒りのやり場が無い」


「あちしも~」


 おっと、仲間の機嫌を損ねてしまった。だが、許して欲しい、まだ戦闘は終わっていない……むしろ始まったばかりだ。


「悪いな、だが敵はまだあっちに沢山いる……まだまだみんなには活躍して貰うからな」


「むぅ、仕方ないの……それでは行くかの」


「拘束完了……そこでアリンコでも見ながら大人しくしているといい」


 バトルスーツを破壊された二人はマリチャパ達にロープで拘束された。もちろん簡単に切れない素材で作られている特殊なロープだ。


「それじゃあ俺は先に行っているから頼んだぜ」


「任せておくあるじ、マリチャパは約束をしっかり守ると村で評判」


「妾もすぐに追いつくから仲間によろしくの」


 俺はEXTイクストで二本指の敬礼をすると、3馬鹿が襲っている正面に向かってブーストダッシュで向かう事にした。


『既に正面では戦闘が始まっているニョ。パワードスーツを魔法で迎撃しているけどドローンの数も多くてなかなか数が減らせないようだニョ』


「ヤバいやつを優先してこちらのドローンで攻撃を開始しろ」


『了解だニョ』





 さて、3馬鹿ども、借りはしっかり、たっぷりと返してやるから待っていろよ……安心しろ、もちろん倍返しだ!!




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