反撃 02
□□□ マルヴァースの大森林とマルタの街、中間の草原:ファング □□□
1週間前からの威力偵察で相手の戦力は大体把握した。今もドローンを使った偵察で相手の陣地は丸見え……くふふふ、一生懸命に防御柵なんか立てて健気で笑えるぜ。
そんなものハリスの作ったパワードスーツなら軽く吹っ飛ばせるぜ。
まぁ、相手の魔法射程範囲外からしか偵察出来ないから、細かい所までは分からないが、敵の布陣が分かるだけでもイージーモードだぜ。
今回であの街を落とさないと俺達も詰む……何せパワードスーツは10機、ドローン30機は拠点の構造物を使って作成したからな……これが失敗したら帰る所も無い。
「しかし、まさか人が住む街があったとはな……原住民に会わなかったら知らないまま森の中に引きこもっていた所だったぜ」
「ファング、フレーナちゃんは俺が貰うんだからな……手を出すなよ」
ボラーが牽制してくる。心配するなよ俺だって人の女を奪ったりはしないぜ……まぁ、隙があったら食っちまうかもだけどな。
「わーってるって、しかしアイリはどこにいるんだろうな?」
「けひひひっ、本当だよな、ガットのたくましい大胸筋を早く拝みたいぜ」
「「……」」
ハリスの趣味は置いておいて、クソ生意気なエイジの作った拠点を制圧した俺はリーダーとして好きに生きていけると思ったが、あのクソガキは施設のインフラの殆どを持ったままトンズラしやがった。
まずはひとつ、総イクシア量が圧倒的に足りなかった。
いくつか持って行かれちまったが……住居になるコンテナハウスは俺達が住むには問題ない数が残っていた、だがそれに使う照明、空調、水回りなどのシステムを維持するためのイクシアは、ほぼあいつの手持ちで賄われていた。
お陰で昼間はあせくせモンスターを退治でイクシアを稼ぎ、夜は節電のために早く寝るという原始人みたいな暮らしを余儀なくされた。
ふたつめは、飯のレベルが激しく下がった。
あのクソガキが準備していた飯のレベルはレイドガーディアンの時と遜色ないレベルの旨さだった。
あのレベルをあの量で作るなんてファクトリーだけで出来るもんじゃ無い……多分あいつフードコートを持っていやがったんだろう。
普通はそんな物を持つメリットなんて無い……それこそこの状況を予期していなければだ。
元々、拠点に合流するまでは我慢してそれなりの飯を食っていたんだが、一度あのレベルの飯を食っちまったら……贅沢を忘れられねぇ。
お陰で働くだけで唯一の楽しみのはずの飯が味気ない事この上ない。
みっつめ、女がいねぇ……お陰で俺達、男共のストレスがマックスだ。
俺達の作戦ではクソガキを追放した後で、ゆっくりと火災を消しに行ったメンバーを捕まえる予定だったんだが……通信をジャミングしていたにも拘わらず、どういうわけかここの状況が漏れたのか、火災現場に向かっても奴らを捕捉することが出来なかった。
マルタ達から情報が漏れたのだとしても、合流してからでも間に合うタイミングだったはずだ。
なのにも拘わらず周囲をドローンで探索しても見つけられなかったのはおかしい。タイミング的にあのクソガキが追放されたすぐのタイミングで逃亡したとしか考えられねぇ。
つまりあのクソガキが通信以外の何らかの方法で消化組に伝えたって事だ……クソ忌々しい。
完璧な計画で奴を嵌めたと思って浮かれていたが、蓋を開けてみたら大部分であのクソガキが上を行っていた訳だぜ。
そこを支配出来れば今の原始人から抜け出せる。圧倒的な力と知識を持って街を支配する事が出来るだろう
切っ掛けは原住民を捕まえた事だ……訳の分からん言葉を話しているから、理解するまでに時間が掛かったが、そいつの情報で街が在る事が分かった。
俺達は準備を整えていざ街を見つけると……いるじゃねぇか、フレーナ達が。
軽く威力偵察した感じでは街の戦力はあいつら以外は大した事は無い。人数も俺達の方が多いが、念には念を入れてパワードスーツと戦闘用ドローンが完成するまでは待っておこう……またあのクソガキの時の様に、最後の詰めをしくじるわけにはいかないからな。
「石の村案内した、約束通り、俺……くれる約束忘れるな、マリチャパ、俺の番い」
「ああ、分かったよ……別に原始人の女なんているかよ。どうせお前みたいにくせーんだろ?」
この体中に青い入れ墨をいれた男が街の存在を教えてくれた原始人だ……何でも俺達と同じような格好をした人間に嫁を取られたとか?
案内の報酬に、あの街にこいつの嫁がいたら渡すという約束をしている……いちおう街に原始人がいても殺さないように仲間には言ってある。
「全員配置についたようだぜ」
「おう、行くとするか」
まったく、装備が整ってれば夜襲をかけられたんだが、旧式ドローンのカメラだと夜の精度ががた落ちだからな。
街にはクソガキはいないようだが、
「おう、辛い生活もこれでおさらばだ!! さっさと街を占領して快適な生活、美味い飯、そして女を貪ろうぜ!!」
「「「「「「「「「「おおおーーーーーーーっっ!!!」」」」」」」」」」
俺の声に仲間達が応える……進軍開始だ!! 奪い尽くせ!!
パワードスーツを着込むとそれは鈍い機械音を立てながら動き出す。
部隊は3つに分けている……敵の主力がいるであろう正面に俺やボラー、ハリスを含むパワードスーツ6機、拘束手錠をかけた3人、戦闘用ドローン20機。
街の両サイドを強襲する各部隊、パワードスーツ2機、拘束手錠1人、戦闘用ドローン10機。
合計でパワードスーツ10機、拘束手錠5人、戦闘用ドローン30機というかなりの戦闘力となっている。
戦闘用ドローンは近接が得意なレイドガーディアン組なら軽くあしらえるだろうが、相手はイクシア魔法特化のメンバーのみ。
完全には防げないが、耐イクシアコーティングを施したドローンなら簡単には倒せないだろう……お前らの運命は決まってんだよ。
『けひひひ、おいおい、あいつらこっちの動きに呼応して配置についてるぞ……なんで分かったんだ?』
『あっちはドローンなんか飛ばしてないのに』
ハリスとボラーから通信が入る……確かに妙だが、それでもこちらの有利は動かない。恐れる必要はねーだろう。
「互いの位置が分かっていても別に困らんだろう……このまま行くぞ!」
俺はローラーダッシュするパワードスーツの姿勢をより前に傾けてスピードを上げた。このスーツは
このスーツにも耐イクシアコートを施してあるから、たとえ奴らが魔法をぶっ放してきても構わず突っ込む事が出来るだろう。
その途端、隣のパワードスーツが爆煙に飲まれた。
おいおい、もうこの距離でイクシア魔法が届くのかよ。さすが魔法特化組だな……だが……
『おお、こいつは凄い、無傷だぜ……仕返ししてやるヒャッハーーッッ!!』
煙の中からパワードスーツがローラーダッシュ状態で出てくる……表面を少し焦がしただけで損傷は殆ど無い、さすがハリスだな
俺達はそのまま前進を続ける……絶え間なく魔法が飛んでくるが問題は無かった。だが、魔法は距離が近いと威力も上がってくる、相手が見える位置くらいになったら注意だな。
俺達は蛇行しながら街に迫る。
そろそろ防御柵が見えてきたころに……漆黒の球体が高速で飛んでくると、真ん中に陣取っていたパワードスーツの半身が消し飛んだ。
『ギャアアアアアッ、腕がぁぁぁぁっっ!! 俺の腕がぁぁぁッッッ!!!』
フレーナか? 俺達を殺しに来てやがる……捕まえたらキツくお仕置きしてやらねぇとな。
「連発は出来ないだろうし消費も大きいだろう……このまま突っ込め!!」
一瞬、速度を緩めたパワードスーツ組は再び速度を上げると、前で防御柵を破壊したかと思った瞬間地面から火柱が上がった。
『うぎゃああああっ!! あついいいいいっっ!!』
ちっ、こんな高威力の地雷を用意しているだと!? 相手にファクトリー持ちはいなかったはずだぞ……クラフトスキル持ちがいたか?
『ドローンを先行させろ!!』
既に相手を目視出来る位置まで来ている。
ドローンは両手を上げると相手陣地に向かいイクシアエネルギー弾を発射する。相手の陣地の防御に使われているブロックに命中するが破壊には至っていない。
「ちっ、ファクトリーが無くてもそれなりに準備を整えているようだな……だが、舐めるなよ!!」
目の前のドローンが次々と罠や高威力の魔法にやられていく……だが、この距離なら俺達が敵陣に辿り着く方が早い。
「
全員が一斉に散開すると、元いた場所を漆黒の球体が飛んでいった……数機のドローンは巻き込まれたがパワードスーツ組は無事だ。この魔法以外は当たってもそれほどのダメージは無い。
高威力の魔法は確かに強いが、対人では読みやすいぜ~初回の魔法発動からクールタイムをカウントしてある程度タイミングが分かってたからな。
「これ以上行かせるか!!」
防御柵から何かが飛び出してきたかと思うと、自分の身長以上の大剣を振り回して来たマルタだった!!
『ぐっ!?』
ボラーが捕まったか……マルタが大剣を振り回すとボラーが面食らって防戦一方となっている。
挑発スキルに引っかかったドローンが周りからマルタを集中攻撃しているが、防御バフでもうけているのか攻撃が効いている様子は無い……とは言え、生身なら時間の問題だろう。
俺はこのまま敵陣に向かうぜ。
そのままローラーダッシュで敵陣に突っ込む。防御ブロックを飛び越えると……いたいた、長い杖を両手持ちして掲げているフレーナが。
俺を確認した瞬間、フレーナは詠唱中の魔法を放棄して宙に浮いた状態でサイドステップで逃れようとするが、俺の投げた投擲ダガーが進行方向を塞ぐように飛んでいく。
「うあっ!?」
パワードスーツ用の巨大ダガーの投擲が衝撃波を生むと、その衝撃でフレーナが反対側に跳ね飛ばされる。
俺のパワードスーツの右手でフレーナの両腕を、左腕で両足を掴むと壁際に押しつけて拘束する。
「ぐうっっ!?」
苦悶の声を上げるフレーナがこちらを睨み付けてくる。周りの人間はダガー投擲の衝撃で何人か気を失って倒れているようだ……へへへっ。
パワードスーツの上半身が跳ね上がると俺は生身を晒した。
「よう、久しぶりだな~フレーナーァァッッ!!」
「ボクは会いたくなかったけど何の用? こっちは用はないからもう帰っても良いよ」
生意気な事を言う女だ……しかし
ボラーには悪いがちょっとだけ楽しんでいくか?
「つれない事言うなよ~、お前が可愛く言う事聞いていれば悪いようにはしないぜぇ」
「そっちの悪いようにって事がボクにとって良い事とはとてもじゃないけど思えないな」
パワードスーツから上半身だけ乗り出すと、片手でフレーナの顎を持ち上げて顔を近づける。
嫌悪感を隠しもしないでこちらを睨み付けてくる……へへへっ、こいつはどうやら分からせてやる必要があるようだな。
「最初は嫌がっても最後にはちゃーんと満足させてやるぜぇ」
「くっ、いやだ……エイジ!!」
俺はフレーナの顔目掛けて自分の顔を近づける……急に目を何かが塞いだ? いや、俺に何か覆い被さってきた。
「うおおおおっっ!? あがががっがががががっっ!!!」
覆い被さった何かは俺の上半身を包むと上に引っ張られる……下半身はパワードスーツを装着したままなので、その重さが一気に俺の下半身に掛かってきた。
そして、目の前の視界が開くと……目の前に一体の巨人がいた。
『よう、久しぶりだな
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