反撃 01

 ワレワール側の中央セントラルの門を俺とムカチャパ族の仲間達、そして達が潜っていく。

 そのまま裏道を通り出てくる事には全員の集団に変わっていた。さすがに大勢だと目立つので人数を分けて拠点に戻る……既に場所が足りない事が分かっていたので追加の土地を借りてある。


 拠点の広場で全員を集めて今後のやるべき事を話し合った。


「まずはエル……ワレワール組は冒険者ギルドへ登録、その後は訓練してモンスター狩りだな。目標は☆4まで上げる感じだ」


「待って下さい、我々は戦操兵ウォーレムにこそ遅れを取りましたが、通常の戦いならば負けはしません!! 訓練など不要です!!」


 見た目の若そうな男が異議を唱えてきた……人族に変装はしているが、髪の色と耳を隠しているだけで顔の作りは変わっていない……自分の強さに自信があるのだろう。


「どうなんだリリア?」


「そうじゃのう、精霊に頼めば普通の戦いならそうそう負けはせぬが、武器を使った戦いじゃと一歩劣るかの?」


「ひ、姫様!?」


 自分の味方をして貰えると思っていた男はショックを受けている。


「妾は王の資格を目指す姫じゃぞ! 平等な目を以て判断しておるのじゃから贔屓などせぬわ」


「確かに、実力をハッキリさせておかなければ今後の戦いで危険が伴うか」


「ならば、試していただきたい!! たとえ我らを救ってくれた恩人でも、侮られるのは我慢なりません」


「まぁ、自分の力に相応のプライドを持つ事は大事だ……で、どうする? 俺と戦うのか?」


 自分の力に不相応なプライドを持つ奴がイキったら殴っちゃうけどな。


「待つのじゃ、エイジでは駄目じゃ。お主はリーダーじゃから強いのは当たり前じゃ。そうじゃの~アナチャパが戦うがよい」


「あちし~?」


 なるほど一歩進んだ実力を持つマリチャパの陰に隠れてはいるが、彼女の強さもなかなかのものだ。

 既に実力を見せている俺よりもその仲間の実力を垣間見た方が納得しやすいだろう。


「良いでしょう……我々エルフの実力を思い知らせてやりましょう」


 今は変装しているんだからエルフとか言うなよ……こうしてホームの中央広場で模擬戦を行う事になった。





 広場でぽかーんと跪いている若い男がひとり……さきほどのエルフだ……地面には二つに割れた弓が落ちているが、それを気にする素振りも見せていない。


「うむ、予想通りじゃったか……じゃから精霊の力を借りろと言っておいたのにの」


 試合前にリリアは男に忠告をしたのだが、聞き入れられる事は無かった。


「し、信じられません、コヤンは上位の力を持っているというのに」


 エイシャは共に死線をくぐり抜けてきた仲間の敗北が認めがたいようだ。


「まぁ、もう一度本気で勝負させろなどと小物臭い事を言わないのは褒めてやろう」


「姫様、自国の戦士にもっと優しくして下さい」


 察しの通り勝者はアナチャパだ。


 アナチャパの獲物はククリナイフ……くの字に内反りしたナイフを二刀流で使う。

 白兵戦の能力はもちろん、そのナイフを投擲して中距離もこなす万能型に近い戦いが出来る。

 しかも得意の風魔法で投げたククリナイフの軌道を変えてブーメランのように飛ばし、自分の元へ戻ってこさせるなど多彩な攻めが得意な戦士なのだ。


 戦闘開始後、距離を取らせずに二刀のククリナイフで攻められ、何とか距離を取った途端にククリナイフを投擲されて弓を破壊されてそのまま押し切らたという、ぐうの音も出ない負け方だった。


「勝ったのはあちし~」


「アナチャパよくやった、部族の誇りだ」


 エルフ族とは違いムカチャパ族は大いに盛り上がっている……まぁ、これで全員訓練を文句言わずにこなすだろう。



□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 翌日から俺達は全員のギルド登録をすませた後……もちろん☆3で登録だ……モンスターの素材集め兼、全員の訓練に励んでいた。


 え? 昇級依頼はどうしたって?


 実はまだ達成報告をしていない。さすがにギルド側も既に依頼を達成しているとは思っていないようなので、せっかくならエルフ達全員を含めて☆5に昇格してしまおうかと考えたわけだ。

 何事も効率よく物事をこなしていかねばな。


「よし、これで全員☆4になれるくらいの素材を狩る事が出来ただろう」


中央学院セントラルアカデミーに入学する時に冒険者ランク☆5であれば大分有利になるじゃろう……エイジ、そなたの思慮深さに感謝じゃ」


「あぁ、ビシッと周りに俺達の存在を……強さをアピールしてやろうぜ」


「しかし、これほどエイジ殿に借りが出来てしまっては、どうやって恩を返せばよろしいのやら……」


 エイシャは困った顔をしながら生真面目な事を言っている。エルフ特有なのか彼女の性格なのか、貸し借りを作ったままにするのは気になるようだ。


「まぁ、困った時はお互い様……俺も何かあれば力を貸して貰う事もあるはずだ」


 そんなやりとりがあったりしながら、黙々とモンスターを狩り続けていく……


 あまり同じ大地のモンスターを狩りすぎると他の冒険者の獲物がなくなるかもしれないので、未開拓の大地を回ったりしなどをして着々と準備を進めていった。


 ……そんな時、中央セントラルへ戻った俺達に来訪者が現れた。




「エイジくん、やっと会えた……」


「エリ!?」


 以前の拠点で3馬鹿の罠に嵌められていた薄幸の女の子エリだった。


 夜通しでこちらに向かって来たのか大分憔悴しているようで、その腕にはまだ拘束の腕輪が付けられていた……やはり、これを外すのは難しかったのか。


「大変なの!! 街が、アンドの街があいつらに襲われて……」


 話を聞くと……フレーナ達と無事に合流したマルタとエリ。その後、3馬鹿の拠点を迂回するように俺のいる方向を目指して進んだらしい。


 そして無事にアンドの街へ辿り着く事が出来たようだった。


 それからしばらくは全員アンドの街で再び俺達に合流するため、中央セントラルへ向かう準備をしていたようなのだが、そこに3馬鹿達が手勢を率いて街にやって来たらしい。


「さすがにEXTイクストは無かったけど、3人共パワードスーツを装備した状態で襲ってきて……私は拘束の腕輪があるからそこにいたら危険だって……だからエイジくん達に助けを求める為に来たの」


 あの馬鹿ども……拠点でお山の大将を気取っていれば良いのに。フレーナ達を探していたらアンドの街を発見してしまったのかもしれないな。


『向こうのドローンをワレワール側に移動させていたせいで事態を見過ごしてしまったニョ……ダーリンごめんなさいだニョ』


「(俺が了承した事でネジコのせいじゃない……お前は十分すぎるほど優秀でよくやってくれている)」


『ダーリン!! やっぱりダーリンはネジコの事を愛しているのだニョ!! ネジコはいつでも婚姻届を提出する準備は出来ているニョ!! あとはダーリンの名前を書くだけだニョ』


 俺の視界にネジコの名前が入った電子婚姻届が表示されるが、ポイッとそれを視界の外に追いやると、すぐにやるべき事に取り掛かる。


「(ワレワール側のドローンは最低限を残して、後は先行してアンドの街方面に展開してくれ)」


『ああん、相変わらずガンスルーだニョ……もちろん既に移動開始しているニョ』


 よし、猿山の大将を楽しむ時間は十分に与えただろう……そろそろお仕置きの時間を開始するとしよう。


「リリア、俺達は今から仲間の救出に行かなければならない。お前達はこのまま訓練を続けていてくれ」


「何を水くさい事を言っておる。そなたは妾の仲間を助けてくれた……今度は妾たちがその借りを返す時じゃろう? ……のう、エイシャよ?」


「仰るとおりです姫様。エイジ殿、我々エルフ達を恩知らずな種族にしないでいただきたいです」


「お前達……そうか、それじゃ力を貸してくれ。俺は仲間を助けて裏切り者に制裁をくれてやらなければならないんだ」


「「「「「「我々エルフ達は恩に報います」」」」」」


「ありがとう……でも、変装しているんだからエルフ言うなって」




 ……こうして俺達は再びアンドの街へ向かうのだった。




 俺達は早々に準備を整えるとアンドの街方面の門を潜った。街道を外れるとバスを2台出す……エルフが仲間になる事がわかった時点で既にファクトリーで作成をしていたのだ。


「今回はかなりのスピードで飛ばすからな……アナウンスがあったらしっかりと捕まるんだぞ」


 フレーナ達が心配だが焦って事をし損じても駄目だ……移動中もエリから詳しい話を聞いた。


 襲撃と言っても今現在リアルタイムで襲われていたわけでは無く、数日前に3馬鹿たちはパワードスーツを着て、戦闘用ドローンを数機を伴い威力偵察を仕掛けてきたと言う話だ。


「戦闘用ドローンは大したことは無いんだけど、かなりの数で襲ってきたの……でもやっぱりパワードスーツを来たあいつらは強かった」


 戦闘用ドローンの戦闘力はフレーナ達にとっては大したことは無いのだが、現地の人間にとっては脅威となるだろう。

 そしてパワードスーツ……今の所、全員分は作れていないようだが、次の襲撃でその数を増やしてくるのか、それともドローンを増やしてくるか? 予想ではドローンを増やしてくる可能性が高いと見ているようだ。


「あんまり本気じゃ無かったみたいで、ニヤニヤしながら帰って行ったの」


 フレーナ達魔法使いがパワードスーツを着た白兵戦要員が数人いるだけで押し込まれる可能性が高い。

 威力偵察の時は魔法でかろうじて撃退したが、次回は魔法対策を施したパワードスーツで来る可能性が高いと考えているようで、街の防御を高めるために要塞化を進めているらしい。


 街の人間も奴らに負けたらどうなるかを恐れて戦える人間はフレーナ達に協力をしているらしい。そして威力偵察から既に数日……いつ責められてもおかしくない状況だ。




 俺達に出来る事はただひたすら急いで目的地に着く事だけ……待っていろよフレーナ。



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