開始 08
「やれやれ、まさか集落を壊滅させるよりも後始末に時間が掛かるとはの」
俺達は部族のみんなを集めて手分けして後始末をしていた。特に素材にならないオークを丸ごと
討伐証明と認められる
まさにリリアの言うとおり手分けしてもこの作業に2時間くらいを要している……これでも俺がDSを使って死体を集めているからかなり速いんだぜ?
「マリチャパお腹すいた……今日の夜はステーキが良い」
「オラはミディアムで」「あちしも~」
「お前ら、オークの火葬を見て、よくその食欲が湧くな」
ムカチャパ族達はたくましい。
「何にせよこれでもう大丈夫だろう……さて、日が暮れる前に帰るとしようぜ」
「「「「「「おう!」」」」」」」
……俺達はオークの集落……だった場所を後にしたのだった。
「お、お前達……本当にやりやがったな」
ギルドではマークスさんが顔を引きつられながらなんとか言葉を絞り出した。
「いや、言うほどオークが
「マークスさん、全部で63の耳です……予想より多いです」
後ろから血まみれのエプロンと手袋を付けたギルド員がやって来る。
「で、数がなんだって?」
「いやぁ、数は多かったかもしれないですが、体が小さい弱いオークしかいなかったかな?」
「マークスさん……これ……オークリーダーじゃなくてジェネラルですよ! 上位種でもヤバいやつに進化していたって事ですよ!!」
進化したモンスターは体内に魔石を持っている事があり、オークのリーダーはそれを有していたのでとりあえず回収してきたのだ……まさに異世界あるある……置いてくれば良かったかも?
「で、どんなオークしかいなかったって?」
「~♪」
「俺は本当に危ないから止めろって言ったよな?」
「いや、ここはひとつ軽ーく偵察でもと思ったんですけど、予想以上に敵が弱かったというか?」
「お前朝ギルドに来て依頼を受けていったよな……この場所は往復2週間の場所だぞ」
「そこは企業秘密って事で」
「きぎょう? 何だか分からなんが、只者ではないと思っていたが、想像以上にお前達は得体の知れない強さがあるって事だな」
「まぁ、王の資格を目指していますからね……このくらいはやってのけないとね」
マークスさんは手で顔を覆いながら大きくため息をつく。色々心配させてしまったようだが、俺達もトロトロしている訳にはいかないからな。
「わかった、上に掛け合ってやる……資格のある冒険者が現在建国しているいずれかの国から直接
周りを見渡すと小声で俺にそれを教えてくれた。なるほどな……とりあえず国からのクエストを待つほか無さそうだな。
「わかりました、それじゃあ俺達はそれまでは鍛錬でもしていますよ……俺達が借りている場所は知っていますか?」
「あぁ、そんなもの初日に確認してるぜ」
そうですか、さすが……表向きは……期待の新人の動向は気にしているって事なんだな。
「どの国がどんな依頼を出してくるかは分からないが、それほど時間は掛からないだろう」
「分かりました、それでは今日の所は帰るとします」
俺達はギルドを後にして、拠点に戻るとその夜は本当にステーキパーティーだった。
2日後にギルドからの連絡があった。急いでギルドへ向かうとカウンターで紙の依頼書を見ながら苦い顔をしたマークスさんが迎えてくれた。
「早速昇級依頼が来たんだがな……依頼国は……ファーガス王国だ」
ファーガス王国……リリアが一瞬ビクッと体を震わせた。あの国からの依頼……どんな内容だ?
「まぁ、お前は何やらあの国に思う所がある様だがチャンスでもある……受けるか受けないかは見てから検討してくれ」
俺は依頼書を受け取るとそれを確認する……既にこの国の文字はネジコに学習させてるのでマリチャパ達も含めて読み書きは出来るようになった。
「ワレワール国に潜伏する残党の捕獲……もしくは討伐」
「なっんじゃ……っっっ!!」
リリアが思わず大声を上げそうになる。それはそうだろう、自分の国の民を仲間を捕まえるか殺せという依頼だ。
「ワレワールって事はエルフですよね? 彼等が何か悪い事をしたとでも?」
「いや、既に亡国となったも同然の国が抵抗をしてファーガスに被害が出ているらしい……どちらが正義とか悪とかは問題じゃない。ファーガスが困っているからその依頼を受けるかだ」
なるほど、
この依頼を受けるという事は、俺達はワレワールに入ってエルフ達を探し出す事になるのか……ふむ。
「わかりました、この依頼受けましょう」
リリアがガバッとこちらを見る……深く被っているフードが外れそうになるのを抑えている……後でちゃんと説明するからここは堪えろよ。
「いいのか? あまり冒険者向きの依頼ではないし、待てば別の国が依頼を出すと思うぞ」
「いえ、俺は急いで
「おまえ、言い方……まぁ良い、いや良くはないが。とにかく抵抗している人数はおおよそ40人ほどと言われているようだ。少なくとも30人はどうにかしろと言う事らしい。捕縛はともかく相手を討伐したのならその証明も必要だ」
「なるほど、抵抗している半分以上を減らせば……って事ですね。でもこれ、それこそオーク50体以上より大変なんじゃないですか?」
「そこはなにせ……オーク50体以上を軽く殲滅した冒険者だから期待したって事なんだろう」
「なるほど、俺達なら出来るとファーガスに思われたって事ですか」
まぁ、そうだろうな……きっとこんな馬鹿げた依頼は本来いち冒険者に達成する事は難しいはずだ……だが、俺達なら出来る。
「良いでしょう、早いほうが良い……1週間以内には出発します」
「そうか……エルフの精霊魔法は強力だ。いくらお前達が強いと言っても油断するなよ」
「分かっていますよ、こちらにも精霊魔法に詳しい仲間がいますからね」
俺は今にも感情が爆発しそうなリリアを連れて拠点に戻る事にした。
「エイジ!! 一体どういうつもりじゃ!! 妾たちの同胞を……妾たちを裏切るつもりか!!」
「落ち着けリリア」
拠点に戻るとコテージに入った途端にリリアが詰め寄ってくる。マリチャパ達は異様な雰囲気を察して入ってきていないようだ……いつの間に空気が読めるようになっておる。
「これが落ち着いていられるか!! 妾はそなたを信頼しておるのじゃぞ!!」
「話を聞け!!」
俺はリリアの両肩を強く掴みしっかりと目を見て声を強めていった。
「こんなに早くチャンスが巡ってきたんだ……これを逃す手はない」
「ど、どういう事じゃ?」
ようやく俺の言葉が聞こえたようだな……そのまま肩を押してリリアを椅子に座らせる。そのまま俺は向かいに腰掛けると……説明を始める。
「俺は
「そ、そうじゃな」
「だが、この依頼ならば俺達は両手を振ってワレワールに入国してお前の仲間を探す事が出来る……しかも
「し、しかし、依頼達成には妾の仲間達をファーガスに突き出さねばならないのじゃぞ」
いまいち俺の言い分が理解出来ないリリアは食ってかかる。
「そんなものは何とでもなる……とにかく今ならまだリリアの仲間達が無事なうちに合流出来る。このチャンスは今しか無い!」
俺は強くリリアの目を見つめると強く呼びかける。
「俺を信じろ……今まで俺がお前の期待を裏切ったか?」
「!?」
リリアが驚いたような目をしたが……深呼吸をしたあとそっと目を閉じる。
しばらくすると、そっと目を開けてこちらを見つめ返す。
「すまん、エイジ……気が動転してしまったのじゃ。妾がこうして今も無事にいられるのは皆エイジのお陰じゃ……そうじゃの、そなたを信じずいったい何を信じると言うのじゃ」
どうやらリリアは納得してくれたようだ……いや、納得はしていないだろうが、きっと俺を信頼していると言う事なのだろう。
大丈夫だ、その信頼……絶対に応えてやるからな!!
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冒頭にプロローグを追加しました。
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