開始 04

 次の日から俺達は慌ただしく動き出した。


 まずは学園組の俺達と非戦闘員は商人ギルドへ登録する。まだ働けない子供達は見習い扱いにできるので、これで全員期間限定ではない身分証明を得る事が出来た。


 中央セントラルで商売をするためには商人ギルドに加入する必要があり、その売り上げの1割を納めなければならない。

 そして納めた売り上げ額が功績となり、その功績に応じてランクの☆が上がるのは冒険者ギルドに似ている。


 もともと身分証の為にギルド加入したのだが、どうせなら一石二鳥を狙っていこうと言う事で、冒険者ギルドで稼いだお金を元手に店を手に入れる。

 そしてこの星では手に入らないような珍しいアイテムをファクトリーで作り、金を稼いで資金を作ろうという計画だ。


 とりあえず、それまで商人ギルド組には子供の面倒を見つつ勉強に励んでもらう事にしよう。




 ……と言う事で俺達は再び冒険者ギルドへやって来た。


「よう、来たか……依頼を受けるのか?」


 俺達を見かけたマークスさんがやって来る……暇なのか? と思ったが、どうやら彼は冒険者ギルドの幹部クラスらしく、特別な冒険者の対応は彼が行うようだ。

 そういえば、ワレワール王国の件はギルドの上位の者しか分からない……って事を教えてくれたのはマークスさんだったな。


「基本的に依頼自体は超遺物 アーティファクトで出来た依頼板を使って受けられる」


 昨日の訓練所にあった石碑に似たような板が壁際に立っており、その中心にディスプレイのように依頼内容が画面表示されるようだ。最初にギルドカードをタッチすると、そのランクで受けられる依頼が表示されるようだ。


 俺は何となくで操作出来るが他のメンバーは分からなそうなのでマークスさんから詳しく教えてもらっている。


「何じゃ、そなたはギルドの依頼を受けた事があるのか?」


「いや、この手の物は故郷であったから何となくでも操作出来るぜ」


あるじはなんでも出来るから凄いのだ」


 リリアは感心しながら、マリチャパはドヤ顔で同じ俺と依頼板を囲んでいた。依頼内容を見てみると……お? これはもしかして……


「マーカスさん、モンスター素材の収集以来って、手持ちにある物からだしてもいいのか?」


「あぁ、もちろんだ、それを見越して目的以外のモンスターの素材でも丁寧に解体する冒険者も多いぜ」


「おお、それなら結構手持ちの素材でいきなり依頼完了出来るぜ」


「本当か……素材受付カウンターはあっちだ。今の時間は依頼に出ている奴が多いから、カウンターは空いているぜ」


「それじゃあ取りに行ってくるぜ」


 俺は手持ちの素材を対象とした依頼を全て受ける。皆にも同じように素材の依頼を受けさせると、そのまま全員でギルドを出る……そして人目の無い場所まで移動すると、DSから依頼の素材を取り出して皆に渡した。


「とりあえず依頼の限界数ギリギリで渡すとしよう」


「そういえばここへ来る時も結構モンスターを狩ったからのう……無駄にならんで良かったのじゃ」




 再びギルドに戻ると素材受付カウンターへ向かった。カウンターには薄汚れたエプロンを着けた強面のおっちゃんが立っている。


「おう、さっきマーカスさんが言っていた期待の新人か。何を持ってきたんだ?」


「うちのメンバー全員、持てるだけ持ってきているから結構な量だけど大丈夫か?」


「あぁ、もちろん依頼されている物ならどんどん持ってきてもらって良いぜ」


「そう言う事なら遠慮はしないぜ」


 とりあえず第一陣としてカウンターに載せるだけ載せた。


「これはメドウウルフの毛皮……おいおい、これ全部か……こっちはフォレストボアの毛皮に牙……しかもなんでこんなに良い状態で!?」


「まだまだあるから下げてくれないか?」


「なんだと、まだあるのか!? これはカウンターじゃ無くて直接中で受け取る方が良いな……こっちに来てくれ」


 俺達はおっちゃん連れられて解体所の方へ案内されると、指定された場所にどんどん素材を置いていった。


「これは、フォレストベアの毛皮に爪、こっちはホーンリザードの皮か!? 傷が無いぞ、一体どうやって倒したんだ!? こ、これはエレファントタートルの素材か!? ☆4素材じゃ無いか!! お前達はいったい何処まで行ったんだ……まさか、マルヴァースの大森林に入っただと!? ……命知らずな奴らだ。だが、そんな奴だからこそいきなり☆3なわけだな」


 何やら俺達の素材に一喜一憂しながらおっちゃん……ゲイルさんって名前らしい……はモンスターの種類や遭遇した場所などを確認してきた。


「解体済みだから手数料無しで買い取りとなる……合計で243万7800プラナだ」


 プラナと言うのがこの惑星通貨の名前だ。元々アンドから50万プラナを贈られていたわけだが、今回の素材買い取りで大分潤ったな。


 ちなみに通貨は白金貨、白銀貨 、金貨 、銀貨、銅貨とあるのだが、中央セントラルや建国した国では電子マネー……もとい、中央通貨 セントラルマネーが使用可能でギルド証を使った決済が可能だ……ファンタジーのくせに変な所が近代的だぜ。


 とりあえず程よく両替された10万プラナ分の通貨以外は全て中央通貨 セントラルマネーでギルド証にチャージしてもらった。




「お前達……☆4に昇格だ」


 解体所から戻ると、突然マークスさんに声をかけられた……昇格?


「おお、あるじ、なんだか凄そう、やったー!!」


 とりあえず喜ぶマリチャパ……今日も元気だ。


「おお? 早すぎないか? こんなに簡単に昇格して良いのか?」


「これだけ大量の☆4素材を落とすモンスターを倒すのは簡単じゃ無いんだよ。本当にお前達は何者なんだよ」


「そうは言われても大志を抱いて田舎から出てきた将来有望な冒険者としか言えないな」


「そうかいそうかい、だが、☆5への昇格はただ単に素材の大量持ち込みだけじゃ駄目だ……条件は詳しく言えない規則だが、強いて言えばバランス良くクエストをこなすんだ」


「それって条件言っちゃってないか?」


「うるさい、とにかく色々クエストをこなせって事だよ……まったく、ギルド登録1日で☆4へ昇格した奴らも初だっての」


 順調にいき過ぎている気もするが、気を抜かずに着実にやる事をこなしていこう。


 さて、俺達の仲間は全て中央 セントラルでの立場を得る事が出来た……次に向かうべき場所は中央騎士団 セントラルナイツだ。

 大陸各国から中央セントラルの治安を守るために選抜された先鋭の騎士達が詰められている騎士団……それが中央騎士団 セントラルナイツだ。

 もっとも直接用事があるのは騎士団ではない。騎士団には犯罪者を収監する施設もあり、逃亡防止、または拘束するために犯罪奴隷に落とす事があるわけだ。


 そしてアンドの話ではここに奴隷を解放するためのマスターキーがあるらしい。色々後回しになってしまったが、ようやくマリチャパを奴隷から解放する事が出来るのだ。


あるじ、マリチャパは別に解放されなくてもいいぞ」


「確かに酷い扱いを受けるわけでは無いだろうが、奴隷だと言うだけでペナルティを受ける場合があるからな。マリチャパに嫌な思いをさせるわけにはいかない」


 ギルドでもマリチャパの首輪を見て蔑んだ視線を向けてきた奴らもいた。それに中央学院 セントラルアカデミーに入学するのにも支障が出てしまうだろう。

 リリアの世話も身分が低い物にさせるのは駄目らしく、たとえ二人の仲が良くてもマリチャパに頼る事は出来ぬと、事ある毎に俺がするはめになるなど色々な意味でよろしくない。


 考え事をしている間に騎士団の駐屯所のひとつに到着した。中央セントラルは広いので駐屯所はエリア毎に作られており、ここは第9駐屯所という事だ。


 門番に事情を説明し通行を許可され駐屯所の建物に入っていくと、受付にその場で待つよう言われた。


 中央騎士団 セントラルナイツは各国から能力の高い者が選抜されるという事だが、門番も受付も特に高圧的な態度などは見せずに対応してくれている……鼻持ちならないエリート気取りがいるかもと警戒してしまったぜ。


「おい、お前が奴隷解放を陳情してきた民間人か」


 ……などと考えていたのがフラグだったのか、高圧的な態度の奴が来ちゃった。


 いや、第一印象で決めつけるのは良くないな。この騎士も見た目が……腹が出て頭部は薄毛、40代くらいのおっさん、両サイドにぴょんと跳ねた髭を生やしたいかにも貴族っぽいイヤミーな奴かもしれないが、その実態は良い奴かもしれない。


「まったく、私は忙しいのに面倒だな……それでその奴隷は連れてきたのか?」


 実は良い奴かもしれない……かもしれない。


「お忙しいところすみません、彼女が手違いで奴隷の首輪を付けられてしまったもので、取り急ぎ奴隷の権利を引き継いで連れてきました。出来れば早めに奴隷から解放してやりたいのですが……」


「ほぅ……」




 興味の無さそうな顔をしていた髭チャビンがマリチャパを確認すると、ねぶるような視線を向ける……なんだかもう嫌な予感しかしないな。




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