初陣 08
今日からは実地訓練だ。戦闘用の
ちなみに昨日の買い物は一通りの素材を購入し、直ぐファクトリーで生産に入る……まぁ、あとは特にやる事は無いので放置になる。ファクトリーのレベルが上がれば生産完了までの時が早まり、生産数も一気に上がるのだがそれは今後に期待だ。
俺達のチームで
訓練場では指定された場所で規則正しく
本来は名前にちなんだ蝙蝠の翼を彷彿させるバックパックを持っているのだが、練習用だからなのか外されていた。
『全員機乗したな? 今日は白兵戦訓練に行った隊長に代わって副隊長のあたし……ソニアが担当する。ダラダラやってたらビシバシ指導を入れるから覚悟しておけ』
オート制御時はこのまま操縦可能だが複雑な操作を可能とするマニュアル制御になるとシートが稼働して身体が直立しているような状態となり、身体の細かい動きを
『戦場でオート制御なんてちんたらした動きをしていたら殺して下さいって言っているようなもんだからな。全員マニュアル操作に切り替えろ!!』
その途端に殆どの
『おいおい、立っちも出来ないベイビーかお前ら!! さっさと立て!!』
『ふ、副隊長、レバーの動きがおかしいです!!』『うわ!! 止まれ!! 止まれ!!』『マニュアル操作なんてした事ありません!!』『だれか!! 止めてぇ!!』『おかしいぞ、俺はマニュアル出来るのに……レバーが!!』
阿鼻叫喚だった。そこら中で
『ちっ、これじゃ今日はベイビー達の立っち練習で終わるな……おい、お前らは大丈夫なようだな』
「はい、ここに来る前にアルバイトで作業用
『良い心構えだ……お前らは訓練メニューを送っておくからそっちで勝手にやれ』
『「了解」』
視界に『PRACTICE 1』と表示が出てくると、練習場内にマーカーが出てくる……ここに行けという事か。
『行きましょう、エイジ』
「了解」
俺達は移動を開始する……まだアイリは少しだけ不安定な挙動をするが、倒れずにちゃんと付いてくる。まぁ戦闘用は作業用よりマニュアル操作は難しいからな。
指定した場所に到着すると、
『エイジは直ぐに出来ると思うけれど私は少し時間が掛かると思う。こちらに構わずどんどん進んで』
「わかった、困った事があれば直ぐにアドバイスでも何でもするから遠慮するなよ」
『ありがとう』
俺は直ぐにダッシュ……この練習ではブーストは禁止されている……で遮蔽物に隠れると、視界に表示された項目の1個が『○』になった。これを繰り返して行けと……退屈なのはしかたがないので俺は無心になってゴールした。
『PRACTICE 1』が終了すると『PRACTICE 2』が出てきた。ここから場所も移動しないといけないらしい。
「アイリ、俺は次の訓練に向かうから何かあったらメッセージな」
『ええ、頑張ってね』
訓練をクリアしていくと似たような繰り返しが9回続いた。『PRACTICE 10』が終わると『PRACTICE COMPLETE』と表示されて次は何も出てこなくなった。
アイリはまだかかりそうだし、他のメンツなど集合した場所から未だに動いてすらいない。仕方ないので俺は自主練をすることにした。
次の日、俺とアイリはこれまた巨大な体育館とも言うべき場所にいた。今日は白兵戦の訓練だ。昨日
「よく来たな! 説明の必要は無いだろうが隊長のイェーガーだ! 訓練と言ってもわざわざ全員集めてトレーニングなんぞしても無駄だ。
昨日
「昨日の鬱憤を晴らせ!! 組み合わせは表示されるから指定されたバトルサークルに入って戦え!! 手抜くと
練習用の武器は既に装備している。俺はハンドガンとダガーだ……ハンドガンはともかく俺の力だとダガーくらいになる。これもイクシアを身体機能に回していないツケだな。
この対人戦に使う武器はイクシアを利用した練習用装備となっており、ビームサーベル、ライフル的なエネルギーの刃や弾丸で戦う。このエネルギー同士は干渉し合い、互いにぶつかると反発するようになっていて、攻撃を弾いたり出来るようになっている。そして身体に当たると肉体的損傷はしないが、本物に近い痛みを再現させるありがた迷惑なものとなっている。
ボディモニタリングアプリと連携して、本人の能力から死亡したと判断されると対戦終了となる。そのお陰で訓練とは言え痛いのはみんな嫌だから真剣になれるらしい。
『BATTLECIRCLE 9 エイジ VS マルタ』
おっと、視界にメッセージが表示された。9番に行けと……あとマルタか……知らん。たぶん『C03』クレイシュの奴だと思う。この情報量の無さは白兵戦をちっともやってこなかったツケだ。
そんな事を考えながら9番のサークルに向かうと、相手のマルタは既にサークル内に入っていた。剣と盾を装備した正統派ファイターといった所か?
「エイジだ、よろしくな」
「ああ、マルタだ……
そう言いながら構えるマルタ……割と感じの良い奴だ。知らんなんて言ってゴメンな、もう覚えたから。
『GET READY ?』
おっと、もう始まるな……俺も相手に習ってダガーを構えると。
『FIGHT』
それを確認したように戦闘が開始された。マルタは直ぐに距離を詰めてくる。俺が銃を使うことを知っているのだろう。
マルタが剣を振り上げ袈裟切りを仕掛けてくる。それに合わせて逆手持ったダガーで力負けしないよう滑らすように受け、軌道をずらす。
左手で持った銃を相手の腹目掛けて撃つが、それを読んでいたように盾で防がれる。それだけではなくその盾をこちらに向けて押し込んでくる。
身体を相手の盾の外側に回転させてギリギリで躱すと、盾を伸ばしきった腕にダガーで切りつける。
「!!」
鋭い痛みを腕に感じてマルタはバックダッシュする。
「ビックリだ、白兵戦も得意なのか?」
仮想現実世界で学生をやっていたら味わうことは無い痛みを感じて驚き半分のマルタ。でも俺の攻撃力では本当に表面を切りつけたくらいの痛みだろう……直ぐに押さえていた手を戻している。
「避けるのだけは得意だからな……でも威力はお察しなのは今ので分かっただろう?」
「あぁ、多少の痛みは覚悟してどんどん行くことにするよ」
「お手柔らかに頼むぜ」
再びこちらに突っ込んでくるマルタ。俺は牽制のつもりでハンドガンを撃つ。頭の方へ飛んでいった光の弾丸は盾を構えたマルタによって簡単に防がれる。が、次の弾丸はマルタの太ももを撃ち抜いた。
勢いの止まったマルタの側面に回り込んだ俺はダガーを構えて死角から切り込んだ……
結果は俺の負け……かなりの回数を攻撃したのだが、俺の武器の威力では戦闘不能に追い込むことは出来ず、スタミナが切れた頃に良いのを貰って3~4発で死亡判定になった。痛いのはもちろん身体が冷たくなり意識が消えていく感覚は心底恐ろしかった……これは今後も真剣にやらざるを得ない。
「なぁ、エイジ、お前はちゃんと白兵戦の能力を上げれば凄く強いと思うぞ」
「そう思うだろう? でもどんなに身体能力を上げてもヒューテクトの基本値以上には全く振っていないんだ」
SOFのゲーム上ではレベルアップで貰えるポイントを好きな能力値に振り分けられたのだが、
ゲーム上で強いと判断された能力だからこっちに連れてこられたのだから、それを変更することは出来ない理屈は分かる。
「それって変なステ振りしていた奴は詰むって事か?」
「まぁ、変なステ振りした奴はここに来れていないと思うけれどな……まぁなんだ、俺は全てを
「……凄いな、エイジは。なぁ、アドレス交換しようぜ」
「ああ、いいぜ」
……戦いを通じて友情が生まれる? こうして訓練の日々が続いていくのだった。
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SOFのゲームルールもある程度現実と共通していて、物語の進行と共に徐々に明らかになっていく予定です。
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