初陣 02

 ディスプレイに対戦相手の情報が出てくるが無視……どうせなら行き当たりばったりの遭遇戦の方が楽しいだろう。


 使えるEXT イクストは……アーケードでデフォルト使用できる8機か。さて、どれを使おうか? ちなみにどんな機体か簡単に注釈を付けておこう。


 万能にて器用貧乏:デイウォーカー


 スピード命の紙装甲:ソリッドエッジ


 防御重視鈍足亀:メガフォート


 白兵戦を捨てたミサイルジャンキー:アトミックランチャー


 狙撃以外出来ない:ストライクエイム


 遠隔誘導兵器の方が本体?:フェイタルウィッチ


 脳筋バンザイ:スレイグラップラー


 地面にいると死ぬ:アンダーザムーン


 ちょっと偏見入っている紹介だが、とりあえず『ソリッドエッジ』でいいだろう。どんな攻撃が来てもスピードさえあれば当たらないもんな。よし、決定だ。


 『ソリッドエッジ』は細身の機体で戦闘機をイメージしたフォルムが印象的だ。大昔にAIじゃない『カトメハジキ』本人がメカデザインした対戦ロボットゲームに似たようなのがあったな。このEXT イクストも戦闘機形態に変形をする事が出来るのだが、まぁ、対戦モードで使う事はないだろう。


 兵装は……このシミュレーターでデフォルトしか選べないのか……まぁ問題ないな。


 兵装が選べないのですぐにステージ紹介画面に変わった。ステージは朽ちた都市か……ボロボロの建物だらけで遮蔽物も多く、高層ビルなどもいくつかあるので狙撃系のEXT イクストが強いステージで、逆に白兵戦を得意とするEXT イクストが苦手なステージだ。俺の選んだ『ソリッドエッジ』は中距離機体なので可も無く不可も無くだ。


 ゲームスタートのカウントダウンが始まる。俺はそのカウントが進むのをテンションを高めながら待ち続ける。


『READY GO!!』


 よし、行くぜ!!


 スタート直後に赤いアラートが表示される……ロックされたか。レーダー範囲外からこちらをロック出来る機体はある程度絞られてくるだろう。十中八九射撃機体だな。


 おっと、撃ってきた……弾速からミサイル……って事は『アトミックランチャー』か!! この機体だとあのミサイルに3発も直撃すれば撃墜されるな……だが!!


 俺はミサイルに向かいニードルライフルを連射……ミサイルが全て爆発した。ミサイルはこちらの攻撃で相殺出来る。もっとも、一般的には『ストライクエイム』の様な狙撃機体だけが可能と言われているが、上位のEXT イクストランカーならこのくらいやってのけるだろう。


 ミサイルを迎撃した俺は相手の方向がわかったので一気にブーストダッシュをする。よし、レーダーに捉えた。既に相手は第二射を発射しており、こちらのスピードと相まってミサイルとは思えないスピードで飛んでくる。


「当たらなければどうという事は無い」


 人型機動兵器のパイロットとしてまずトップに上がるほど有名な人物の名台詞を使って俺は更に加速する。

 全くブーストの速度を落とさず高速道路の下を潜り、ビルの合間を抜け、傾いたビルをボムで崩落させるなどの技を駆使して全てミサイルを誘爆させる。もちろん建物に機体がぶつかったらこちらがアウトだった。


 俺はそのまま近くの建物を足場に目標のビルに取り付き、屋根が壊れた天辺に飛び上がった。


 既に敵を目視出来る位置まで接近している。一応、相手は遠距離特化とはいえ白兵戦武器を持たない訳では無く、右手のパイルバンガーを構えて俺を待ち構えていた。腕を振ってフェイントを掛けたり、ローラーダッシュで変則的な動きをしたりと、オート制御では出来ない挙動を見せてくる所を見ると、腐ってもトップスコアの相手という訳か。


「第二射を逃げながら撃つべきだったな」


 相手は高所の有利を捨てるのを惜しんでそのまま第二射を撃ってきた。まさか俺がノンストップで突っ込んでくるとは思わなかったのだろう。普通なら3~4回くらいは攻撃出来たはずで、そのタイミングで初めて移動するのがセオリーだ。


「相手がトップランカーじゃ無ければな!!」


 そのまま俺は既に装備していた両手の逆手ダガーを構えて相手に特攻した。相手がパイルバンガーを発射!! ゴツイ杭がこちらに向かって飛び出してくるが、相手に向かい地面を滑りながら上半身をリンボーダンス……フィギュアスケートだったらイナバウアー? のように寝かせて躱す。


 すれ違いざまダガーを相手の腰に突き立て、そこを支点に身体を回転させて背後に回り込み、もう一本のダガーを延髄の辺りに突き立てる。止めとばかりに刺さっていた腰のダガーを抜いてコックピットの位置に更にダガーを突き立てた……シミュレーションだからやったけど、本当の対人だったら躊躇しそうな攻撃だよな。

 相手EXT イクストのセンサーやモノアイのライティングが消えてガクッと脱力する。



『WINNER YOU』



 相手は完全に沈黙して勝利メッセージが画面に表示される。



「さすがに1分切れなかったか……俺もまだまだだな」


『おいおい、おまえヤバすぎだろう、なんだあの動き!!』


『エイジ本当に変態だ!! アークキャリバーだから強いんじゃなくてエイジだから強いんだね!!』


『まさに水を得た魚ね……こっちの世界で初勝利おめでとう』


「なんだよ、お前達見てたのか? ってか変態とか失礼な!!」


 コクピット内に仲間のメッセージが届く……まぁ、勝利を祝われて悪い気はしないな。お? 初回起動のプレイで1位……1万イクシアが手に入ったようだ。まぁ、まだどういう使い方が出来るかわからないんだけどな。


 評価を見ると全ての項目がSで見事に歴代1位だった。まぁ、俺達と同じ覚醒したばかりのやつのトップだから、実際にもっと強い奴はいるんだろうな……油断大敵だぜ。


「悪いが今日は絶好調らしい……よし、2vs2の相手に一人でアタックしてみるか」


『うわ、またこいつ滅茶苦茶やろうとしてるぜ』


『もっと見ていたいけど、ボクもイクシア稼がないと』


『じゃあ、エイジ……私達も始めるから頑張ってね』


「おう、また後で会おうぜ」


 ……再び俺は操縦桿を握るのだった。




 ふぅ、一気に20戦くらいやってしまったぜ……やっぱりEXT イクストは楽しいな!! 肩慣らしはこんな物で良いかな? と言う事で、少し一休みしようと筐体から外に出た。


「ようやく出てきたのね」


 自動扉が開いた先にある休憩スペースでアイリが休んでいた。どこから買ってきたのかストローの伸びたタンブラーがテーブルに二つ載っかっている。その一つを俺に投げてきた。


「おっと、サンクス……他のみんなは?」


「普通、長くても5回も戦えば集中力が切れるのよ……それに筐体で操作すると妙に疲れるし。二人ともショップの方へ行ったわ」


 どうやら二人は休憩中のようで、さっそく稼いだイクシアを使いに行ったのか。アイリはわざわざ俺を待っていてくれたようだ。俺はタンブラーのストローに口を付けて水分補給をする……スポーツ飲料の冷たく甘塩っぱい味が身にしみるぜ。


「そんなものか? まぁ、でもこれからはフルダイブで戦う訳にはいかないから慣れていかないとな」


「わかっているわ……この訓練施設で頑張らないとね」


 俺はアイリの隣に座り……テーブルに設置された立体モニターから彼女の戦闘記録を見せて貰った。


 元々MMORPGとEXT イクストで戦う対戦型アクションの2展開をしていたSOF。RPGの方は完全にフルダイブで遊ぶタイプで、身体をリラックスさせた姿勢で遊ぶ形になる。


 それに対してEXT イクスト筐体の方は、本物さながらのコックピットに乗り込み、ハーフダイブ状態……いわゆる、身体の制御は残して意識は電脳世界へ……という、方式を使っている。従って、筐体でSOFをプレイすると体力的に疲労するのだ。そのため厳重にボディモニタリングアプリを使って身体の安全をチェックしながらのプレイとなる。


 体力が無いプレイヤーはアプリの方からストップが入って強制終了してしまうので、俺はそれを防ぐべくリアルでの体力作りを欠かさなかった。


 ちなみにフルダイブでも完全再現されたEXT イクストのコックピットで操作出来るのだが、何故か筐体からハーフダイブしているプレイヤーの方が強いのだ。もちろん絶対ではないが、トップランカーはほぼ筐体からのハーフダイブのプレイヤーが占めている。


 そして現実となったSOFの世界では、俺達は学生だった時に比べて体力も力も増しているはずなのだが、何故か現実 (だった)過去世界と同じようにプレイヤースキルの差が出ているようだ。


「どういう理屈かわからないけれど、フルだハーフだとは言っていられないものね」


「ああ、俺に手伝える事は何でもやるからな、頼ってくれて良いぜ」


「ありがと、エイジ……んっっ」


「!? おまっ!」


 不意打ちでキスしてきたアイリ。予想外の行動に心臓の鼓動が早まる。


「こういうのは落ち着いてからだって言ったんじゃ?」


「それはもっと深い繋がりの話しでしょ?」


「いや、でもな……」


「身体で返すっていったじゃない」


「そう言う意味じゃないって……」


 ……む、今のやりとりで油断していたが、誰かが近づいてきている?


「浮かれているようだね、エイジ」




 ……そこにいるのはアーサーだった。あれ? 今の見られたか?




______________________________________


ちなみにこの作品に出てくるEXTとかその他諸々の名称は黒歴史ノートを吐血しながら参考にして付けられています。


学生時代友達とゲームを作ろうとみんなで考えたんですよ……その頃はメッチャ格好いいと思ったんですよ……あ、ちなみにこの作品とは全然違うゲームです。

5年後くらいに見た時は死にたくなりましたが、今見ると二回りくらいしてアリかと錯覚しました。


ちなみに友達は一人以外進路はバラバラになって、ゲームも未完成のまま、そのあと全く会っていませんが、

もしかしたら偶然この作品を見て血を吐きながら「あいつ、やりやがった!!」とか思っているかもしれません。

この(自分達が)DEATH NOTEを持っているのはヒロという事は皆分かっていますからね。


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