初陣 01
目覚めた次の日、俺達は訓練施設に移動する事になった。そこで能力の再確認、適切な戦場へ振り分けられるそうだ。
仲間同士がバラバラになってしまうのか心配したがどうやらそれは杞憂で、チームで行動していた構成は下手に変更してしまうと戦力が損なわれる事が多いようで、そのまま固定らしい……周りのみんなも安心していた。
しかし、その説明から仮想現実で覚醒した人間が既に何度も戦場に送られる事に気付いた奴は何人いるのだろう?
ちなみにそれらの説明をしたのは白衣を着た無表情のエルフ男性、しかも本人が直接目の前に現れた訳では無く立体映像の淡々としたものだった。
……目が覚めてから未だに俺達以外の人間を見ていない。まるでこの世界に俺達以外の人間が存在しないのでは無いのかとすら思えてくる。
建物から出ると初めて外の世界を見る事が出来た。
「うん、心なしか空気が美味い気がするな」
俺は伸びをしながら前に進む。
「おお、ちゃんとした青い空だな……てっきりドームに包まれたメカメカしい世界かと思ったぜ」
「あれ? でも空にうっすら線路みたいなものが見えるよ? 空の映像だったりして~?」
「そのうち知る機会もあるんじゃ無い? ほら、あれに乗るみたいよ」
アイリが指を指した先には無機質な深緑のカラーリングがされた窓の無い軍用っぽいバスだった。そしてタイヤが見えないのが未来っぽかった。視界に出てきているマップのマーカーはちょうどその中を指している。
周りにもいくつかの集団が建物から出てきている。SOFユーザーが連れてこられているのだろうから、全国、北から南までゲームでしか会った事がない奴らが近い地区のグループで集められていたんだろうな。
それにしても周りは静かだな……未だにこの状況を受け止め切れていないのかもしれないな。それにくらべて俺達18人は楽しげに雑談していて、まるでこれからバスツアーに参加すると言われても違和感が無い雰囲気だ。
それから1時間ほどバスに揺られる事になるのだが……いや、正確にはバスはちっとも揺れなかった。きっとタイヤが無いから振動とか騒音も無いのだろう。
バスに乗っている間にバスガイドさんが楽しいトークをしてくれたり、カラオケなどのレクリエーションなどはあるはずも無く、退屈な時間を過ごす事になった。
いや、一応メニューの一部がオープンになって用語解説などのヘルプが解禁されていて、それにアイリがしっかりと目を通していた……あとで大事な部分だけ教えてね。
「もう……貸しひとつよ」
「むむ、サービスしてくれ、身体で返すから」
「言ったわね、あとで後悔しても知らないわよ」
「お前らナチュラルにイチャつくなよ」
「本当だよ~、シングルは辛いな~」
訓練施設に到着すると、広い講堂? の様な場所に集められて、この施設で座学、実践訓練などにつかう施設案内やスケジュールなどの説明があった。相変わらず説明したのは立体映像で、映っていたのは軍服を着て腹の出た偉そうなおじさんだった。
その後はグループごとに座学を2時間ほど受けてから自由時間だ。
座学の内容は、わりとSOFの予備知識があればある程度答え合わせが出来るようなものだった。とはいえ、そこまで熱心に設定資料を読み込んだりしたわけではないので、あとでアイリに色々教えて貰う事になるだろう。
「貸しふたつ目よ」
「えー」
どちらかというと、この手の事はエンジョイ勢……設定とか
「たまに凝ったRPしている強い人もいるよね~」
「ああいうのって相手の
とりあえずSOFで特徴だったもののひとつが『イクシア』だろう。名の由来は発見者の名前らしいが、この世界を動かすのに無くてはならない万能エネルギーというものだ。
この万能エネルギー『イクシア』を様々なものに変換、利用して都市を動かすエネルギーとしたり。あるいは食料を生産したり。そして戦う力として、兵器や魔法に利用。身体の強化に利用したりと。そのエネルギーを
「全部が『イクシア』で賄えるから楽だったよ。ここが用途別に違うポイントを必要とするような仕様だったら面倒すぎて俺はアーケード版しかやってなかっただろうな」
「一度、お金や、燃料に変換すると戻せないのに、ガットはいつも考え無しに使うから私が使い方を決めさせられていたのよね」
「いや~アイリ様には頭が上がりませんな、ガッハッハッ……」
この『イクシア』は目に見えずとも世界のあらゆる所に存在するようで、エネルギーの発見者によって、それを抽出する技術も生み出されている。
そして皮肉な事に、侵略者である『ヴァルシアン』からも多くの『イクシア』を得る事が出来る。もっともこれは戦って倒した時……倒した本人だけが得る事が出来るようで、捕獲した『ヴァルシアン』からは、戦って倒す以外のいかなる手段でも『イクシア』を抽出する事が出来なかったようだ。
「『ヴァルシアン』以外でも闘争する力によって手には入るらしいぜ。辺境のファンタジーな惑星のモンスターを倒したり、量は少ないけれどここのシミュレーターでも手に入るんだってさ」
「『ヴァルシアン』と戦う最前線に配属されるか、新規惑星の発見、開拓に配属されるか……これは研修の結果次第ね」
「惑星開拓先で『ヴァルシアン』と遭遇する
「うへー、現実で起こったら堪らんな」
「ガット、それはフラグと言うんだぜ」
何れにせよどこに配属されようと、配属先にある『イクシアシステム』を利用してキャッシュにするか。ファクトリーで自分の必要な武器、防具、
ゲームでは序盤はともかくファクトリーの
「エイジのファクトリーは異常にTECが高かったから、みんな世話になっていたもんな」
「ちなみに全部ボッシュートされているみたいで使えないぜ……この世界には神がいないようだ」
「oh、No~」
ちなみにTECを高く上げる方法はあまり知られていなかったようだ。こちらでも同じかはわからないが……。
「う~ん、さすがにゲームじゃないし、個人でファクトリーとかもてないよね?」
座学の最後で講師が質問を受けていたので確認した所、個人でファクトリーを持つ事が出来るらしい。ラノベでよくあるアイテムボックス的な
……とは言えゲームでもそうだったのだが、そこまで準備をするのにとんでもない量の『イクシア』が必要となるので、マイファクトリーを持つのはあまり推奨されないようだ。
座学が終わると自由時間になった。席を立った皆はその場で雑談したり、すぐに出て行ったりと様々だった……さて、俺も早速行かなくては。
「エイジ、これからどこへ……って、言うまでも無いわね」
「もちろん、シミュレータールームに行ってくる」
「じゃあ、ボクも行く~ 少しだけどイクシアも稼げるみたいだし」
「そうだな、俺も行ってみるか」
「それなら反対の扉から出て、少し遠い場所にあるルームが良いわね。近くのシミュレータールームはかなり混みそうよ」
「ナイスだアイリ……早速行こう」
俺はシミュレータールーム一直線に歩き出す。久々の
「わ~ エイジ、早いって~」
「こりゃもう、
「ふふ、それこそエイジじゃない」
3人も遅れないように着いてきているようだ。アイリに教えて貰ったシミュレータールームにはまだ誰も来ていなかった。
デザインそのままだったのか……でも、スライドする扉が手動から自動になっていた。
「じゃ、俺、行ってくるから」
二本指を敬礼のように立ててから俺は筐体の中に入る。もう俺の頭の中にはこいつを動かす事しかない。
シートに座ると自動でシートベルトが身体に装着され、筐体内のランプが光る。フィーーンと低い機械音が鳴り響き、嫌でも俺のテンションが上がってくる。
AIが初回起動なのでプラクティクスモードを勧めてくるがスルー。シミュレーションで対戦モードを選び、とりあえず一番難易度の高い項目を選んでみる。
どうやら、このシミュレーターを使ったスコアが一番高かったパイロットのデータを元にコンピューター対戦ができるようだ。
……いいね、どの位強いかわからないが俺は負けないぜ!!
俺のテンションは高まり、心臓の鼓動が大きくなってくる。このプレッシャーは良い……プレッシャーは最高だな!!
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ここでちょいちょい出てきたDSに付いて語られました。
まぁ、何となく分かっていたと思いますけれどアイテムボックスです。
この作品はラノベあるあるな技能の名前を独自の物に変えているので分かりにくいですが、中二病的格好良さを出したいのでお付き合い下さい。
面白かったら★★★、フォロー、応援、レビューなどなどお願いします……物語を紡ぐ原動力となります。
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