起動 05
「やっほー、アイリ達だよね? フレーナだよ~!! 実はこんなナイスバディでおどろいた~?」
「「「!!??」」」
そこには緑のボブカット、ムッチとした身体をピンクのボディーアーマーが包み込む、フレーナの幼かった顔がそのまま大人になった容姿、アイリとそれほど変わらない身長の女性が立っていた。大人なボディに可愛らしい顔が混在したその姿はフレーナの性格をよく表しているといえるかもしれない。
「フレーナか? 俺達の暗く沈んだ心を……どうしてくれる!!」
「え~!? そんなの知らないよ~!! いたいいたいいた~い!!」
ガットがフレーナ? の頭の両サイドをげんこつでグリグリする。ゲームでもよく見た光景だ。
「それにしてもその身体はどういう事なの? 自分本来の体格から逸脱出来なかったはずよ?」
本当だよ、なんでロリロリしていたフレーナがこんなけしからんボディになっているんだ?
「えーとね、ボクは12歳の頃に交通事故でいわゆる植物状態になっちゃった設定だったんだ。深層の意識だけはあったからずっと電脳世界だけで生きていたんだけど、ゲームでの姿は元気だった頃の見た目になっていたんだって」
「設定言うな!!」
「身体と意識を調整? するのに時間掛かっちゃったみたいなんだ~」
そうだったのか……視線を奥に向けると未だに開いていないカプセルの数は2個になっていた。
「いや、でも、本当に良かった。フレーナが現実に耐えきれなくて……なんて考えてな……」
「ええ、本当に良かったわ……」
「心配掛けてごめんね~ ボクにとって事故で動けない現実世界? とこっちの差なんて違いがあるように思えなかったんだ。それなら……もしかしたら死んじゃうかもしれなくても自分の足で立って生きていきたいって思ったんだよ」
「フレーナ……」
「くっ、フレーナのくせに……くそ……ぐすっ」
やべ、俺もガットにつられてちょっとウルッと来た。アイリも似たようなもんで、ちょっと喉が詰まって声が出しづらい様だ。しんみりしそうな雰囲気を変えようとしたのか、フレーナは俺の顔を見上げると……
「えへへ、それにしてもエイジなかなかイケメンじゃん。アイリよりボクに乗り換えたらどう?」
フレーナが俺にしなだれかかってくる……俺は咳払いすると一言……
「ガット」
「おうっ」
再びフレーナの頭をガットがグリグリする。
「いたいいたい、冗談、冗談だから~ ゲームの時と違って本当にいたーい」
少し前まで悲壮感漂う雰囲気があったけれど、なんだかこのメンバーとなら楽しくやって行けそうな気がしてきた。周りを見ると見知った雰囲気のやつもいる……学校で見た事ある奴……ゲーム内で似たような格好をしていた奴。
「みんな、聞いてくれ!! 色々厳しい現実を聞かされて混乱しているだろうが、僕等はそれを乗り越えてまとまっていかなくてはならない!!」
何だ、急に声を上げて……あれは、最後に戦った相手……アーサーじゃないか。優勝した奴だけではなくてある程度実力がある奴はこっちへ来たって事か。
!?
しかもあの顔は……クラスメイトの……副会長の
周りから見るとあいつは親切な男に見えたかもしれないが、義務感というか何というか『クラスに馴染めない奴を気遣う僕は良い奴だ』みたいな自分に酔った所が俺には感じられた……しつこくされたから悪く言っているのじゃないぞ。
「ちょうど良い機会だ、みんなでゲームでの名前とリアルでの名前や立場を自己紹介しないか?」
好き勝手話していたみんなはアーサーの話を聞くと、なんとなくそれに同意しそうな雰囲気になる。
「それは反対よ……今更リアルの話しなんて必要ないわ」
いつの間に隣にいたアイリがアーサーの近くで反対意見を上げていた。あれ? 会長と副会長って仲悪かったのか?
「
まわりから「おおーーっっっ!!」「西園寺と高御堂ってまさか!?」と歓声が上がる……アイリの本名ってそんな名前だったか……リアルネームそのままだったか。ん、西園寺とか高御堂って結構有名な企業グループじゃなかたっけ?
「止めて、もうリアル……あんな幻の肩書きなんて何の意味はないわ、それに引っ張られるのは危険よ。意味があるのはSOFでの実績、それ以外は雑音になるわ!!」
「それは違うよ藍梨、僕等は生徒会を……学校の生徒達を導く立場だったんだ、この世界でもそれは変わらない。君と僕でみんなの安全を守っていかないと……これは人々を導くべく教育を受けてきた僕等の義務だよ!!」
「現実から意識を誘導するのは止めなさい、あなたはいつもそう。SOFの予選大会ではあなたは優勝を逃した。SOFの実績を優先させると優勝者有利の状況になるから、それが嫌でリアルの立場を強調して目を逸らしている……でもよく考えなさい。
「僕を見くびらないでくれ、そんな小さい事を気にしてはいない。優勝出来なかったのは残念だけれどそれを隠すつもりなんかない……いや、もしも僕のチームメイトが僕と同じ実力を持っていれば勝者は逆になっていただろう。
彼等も十分に頑張ってくれたしそれは僕も認める所だけれど、事実この場所には彼等ではなく僕だけがいるわけだよ。
ただ、決勝戦で彼等の作戦を受け入れた僕の決断が間違っていた事だけは認めるよ」
アイリの指摘を微妙に逸らしているな……話しの運び方が旨いのか。さすが副会長、なんというかカリスマっぽいのがあるのか、周りのみんなはアーサーの言い分に揺れている感じか?
アイリにカリスマがない訳ではないけれど、彼女はリアリストというか物事の核心を正確に捉える。正確無比に皆を誘導するタイプだから演説で心を動かす感じでは無いのだよな。いつもアイリに比べると副会長の演説は長かった。
「私が言いたいのはリアルの立場を持ち込むのは……「うん、分かったよ藍梨、君の言うとおり自己紹介はSOFの方だけにしよう」」
アーサーの方は自分が副生徒会長だという事、SOFでの実力はあって予選優勝出来なかったのは仲間のせい……と言いたい事は言えた、そしてアイリの言い分を聞いた柔軟性のある男だと証明した訳だな。
アイリはポーカーフェイスのままこっちに向かって来ると、ぺっしっと俺の腕を軽く叩く。
「もう、フォローしてくれても良いでしょ」
無茶振りが来た。おいおい何言ってるんだよ……あの口の上手いアーサーと面倒くさい事になるのはゴメンだ。
「いやいや、無茶言うなよ、あそこに俺が飛び込んでも場が混乱するだけだよ……でもちゃんとアイリの言いたい事を分かってくれる奴もいるって……な?」
「うーん、でもボクはSOFのエイジって立場なら強引に話題を持って行けたともうよ?」
「おう、俺と一緒でリアルがパッとしなくても
剣道部主将は自分を卑下しているようだ。そしてリアルがパッとしないのは分かっているからほっとけ。
「お前らまで……俺は別に目立ちたくて
「それでもあなたは私の……私達のヒーローなの。しっかりと格好良い所を見せてよ」
ヒューっと二人が口笛を吹く。やめれ。ん、なんかアーサーがこっち見ている? 睨んでいる程ではないが目つきが鋭いのは気のせいか? おいおい、俺じゃないよな?
「わかったよ、機会があったらな……この話題終わり」
どうやら自己紹介が始まるようだ。アーサーもう自己紹介を終えた扱いと本人が言っていいるので、端から順番に前に出てすることになった……羞恥プレイだな。
何人か自己紹介を進めて俺達のチームの番になる。
「チーム:ディープストライカーのアイリよ。種族はエルフでメイン武器はダガー。イクシアの系統は風、水、光よ」
上位チームであり、実力も総合20位以内、そして容姿の美しさ。そしてアーサーに暴露されたリアルのお陰で周りがザワついている。
「彼女と僕は幼馴染みだ……困った事があったら僕等に相談してくれ」
「その情報は全く関係ないし必要ないけれど、困った事があれば相談には乗るわ」
今まで口出ししてこなかったのにアーサーが自己主張してきた。もしかしてアーサーの奴はアイリに気があるのか? だとしたらますます面倒な事になりそうだな。
「チーム:ディープストライカーのガットだ。種族はヒューマンで大剣使い。でもタンクに集中する時は大盾も使うぜ。イクシアの系統は火だ」
ガットもファイター系列では有名だ。リアルの剣道はパッとしないが、ゲーム中の大剣の威力はドノーマルの
「チーム:ディープストライカーのフレーナだよ~。種族はヒューマンでメインウェポンは杖。イクシアは4属性と闇だよ~」
フレーナの容姿を知っている奴は、ロリっ子からナイスバディに変わった事でザワついている。彼女もイクシア……いわゆる魔法的な特殊能力……使いで火、風、土、水の4系統以外に闇という5つの属性を使う事が出来る凄腕だ。ランクも今回の大会に優勝出来ればウィザードで10位以内に入れたのではと言われている。
フレーナの自己紹介が終わり、彼女がこちらに向かって来ると、目で俺の番を訴えてきた。さてさて……とりあえず無難に済まそうかな。
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ちょいちょい関係を匂わせる主人公とヒロイン、そしてわかりやすくヘイトを集めるキャラ……鉄板です。
ランクに関して順位が色々バラバラでわかりにくくて済みません。とりあえずランキングは全国ランキングで総合順位、職業(暫定)順位、武器順位、種族順位、EXT順位などがあり、主人公はEXT順位で3位となっております。
敵の撃破、ゲームに勝利した時のポイントの増減で順位が決まっているので「順位=強さ」というわけでも無いですがある程度の指標とはなります。
そのうち時間があれば何か設定資料でも作ってアップしようかと思います。
面白かったら★★★、フォロー、応援、レビューなどなどお願いします……物語を紡ぐ原動力となります。
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