起動 02

 機動準備は既に完了している、あとはミッションスタートを待つだけだ。ここは輸送機の格納庫と言う事になっている。


「α1、完了だ」


『α2、いつでも行けるぜ』


『α3、おっけーだよ』


『α4、問題ないわ』


 アタック側の準備は完了している。あとはディフェンス側の準備が出来ればミッションスタートのカウントダウンが始まるだろう。


『READY 5』


 おっと、考えている間にカウントダウンが始まった。格納庫の床が解放され、遙か下にこれから突入する基地が見える。既に敵の射程内に入っていてこちらにむかって攻撃の光が飛んでくる。

 身も蓋もない話だが、当然敵の攻撃は当たったりはしない……この輸送機を出るまでは。



『READY 4』



『READY 3』



『READY 2』



『READY 1』



 この瞬間はいつも心臓の鼓動がうるさくなる……だが、緊張というよりも心地よいプレッシャーだ。



『READY GO!!』



 カウントダウン終了と共にEXT イクストをマウントしているアームが解除され、その途端に体は落下する浮遊感に包まれた……戦闘開始だ!!


 隣を見ると仲間3人の機体も一緒に降下している。全員盾を構えて自由落下に身を任せている。


 3人ともEXT イクスト戦には力を入れていないので、機体はドノーマルの『ヴォルトナイト』だ。名前の通り騎士っぽい鎧を着たような体型で、近接、射撃、防御、機動も高水準でRPGのキャンペーンモードで手に入る最強の機体だ……アーケード版のデフォルト機体よりずっと強く、これを手に入れてからアーケード版に参戦する者も多い……色だけは自分達のボディースーツと同じカラーリングに変更していて個性はしっかりと出ている。


 敵の弾幕が厚くなってくる……そんな中、俺はサブウェポンであるハンドガンを両手に構える。予想通りレーダーに反応があった。どうやら相手は下降中に少しでもこちらの戦力を削ろうと戦闘機を用意したらしい。


 突如、光り輝く2本の線がこちらに向かって飛んできた。α2……ガットの漆黒の機体が盾を構えてそれを防ぐ。その盾はビームの攻撃で半分ほど溶けかかっている。


『α2、大丈夫!?』


『問題ない……しかし戦闘機とは意表を突かれたな』


 戦闘機は下降中のEXT イクストに対して強力な攻撃手段だが、基地内に入ってしまえば全く意味が無い……だいぶ思い切った戦法ではある。


「α1、任せたわよ」


「了解だ」


 敵の戦闘機は『ヴォイド3』か……ステルス性能が高くレーダーに映るマーカーがかなり小さい。逆三角形の「なんでこれで飛べるんだ?」と思わせる両サイドの翼にビーム砲を備えている。

 攻撃力はそれなりに高く初心者では盾を構えて亀のように守るしか手はないだろう……だが、EXT イクストトップランカーでは話が変わってくる。


 俺は集中すると周りの景色は真っ暗になる……存在するのは近くにいる僚機、そして飛んでくる戦闘機の姿だけが見える。そして自分がEXT イクストになったような感覚に包まれた。細かな計算はAIがサポートしてくれる。両手に持ったハンドガンを構えるとからそれを掃射した。


 ロックオンはしていなかった。相手は……AIなのだが……きっと自分が攻撃された事も分からずに爆散しただろう。


『相変わらず無茶苦茶だよな、お前が味方で良かったぜ』


「トップクラスのEXT イクストランカーなら多分みんな出来るとおもうぞ」


『ないない、それ絶対嘘だよ』


『はいはい、油断しないで……もうすぐ地上よ』


『『「了解」』』


 だいぶ地面が近づいてくると、敵の砲台も射程範囲に入ってきた……ハンドガンの射程範囲外ではあるが……再び二丁の銃を掃射すると、砲台は次々に爆発していく。


「フォースゲージの提供感謝する」


『くそ、ナメやがって!!』


 俺はオープンチャンネルで感謝の気持ちを述べると相手も律儀にの返事をしてきた。レーダー補足前にジッとしていれば居場所はバレないのだが、オープンチャンネルで会話すると居場所までオープンになってしまう。


 背後のバーニアを噴射して落下の勢いを殺してから着地するとすぐに味方3体は走り出す。


「敵EXT イクスト補足、アタック開始する」


『『『了解』』』


 俺は敵機目掛けてブーストダッシュする……キャンペーンで手に入る機体ではあり得ないほどの加速性能、異常に長いブースト時間。

 EXT イクスト『アークキャリバー』はオリジナルの機体だ。様々な大会を優勝して手に入れたパーツをカスタマイズして、最適なパーツ同士の組み合わせを見つけて組んだ至高の機体なのだ。

 コアフォームはスレンダーな機体なのだが、拡張フレームによって上半身は若干マッシブになっている。

 白を基調として胸の部分や所々鮮やかな赤が入っている最高にクールなEXT イクストだ。

 背中には可動式の翼が付いたバックパックを持ち、腰の両側にも可動式のバーニアを装備しているので地上戦も空中戦もこなせるようになっている反面、非常にピーキーな操作を要求される。


 ちなみにこのアークキャリバーを構成するパーツの殆をデザインしたメカデザイナーは、あの伝説の『カトメハジキ』の技術を引き継いだAIだ……格好良くない訳がない。大会の賞品として有名デザイナーの強力パーツが貰えたりするのでロボット好きは優勝目指してガチで戦うのだ。

 現在は昔存在した偉大なアーティストのAIが作成している作品は沢山存在する。


 おっと、話が逸れたな、大会によっては能力を制限されてしまうが、今回は無制限なのでフルに力を発揮出来る……もっとも撃墜されるととんでもない量のフォースゲージが消費される……ので絶対に負けられない。


 む、ロックされたか……俺は再び神経を集中すると周りが真っ暗になり、見えるのは遠くにいる敵EXT イクストとこちらにだ。


 ……来た!!


 敵の攻撃を可動する翼、腰バーニアの向きを調整し機体を横にスライドさせ最小限の動きで躱す。そして敵がいるであろう位置をハンドガンで撃つ……攻撃が止まったな。

 レーダーのマーカーが消えていないから隠れただけか。多分ロックされていないのに近くに着弾して驚いたのだろうな。


 俺はその隙を逃さずに速度を上げて距離を詰める。


 ハンドガンを腰の後ろにマウントすると、背中の巨大なシールドを左手に装備した。アークシールドという名称だが、このEXT イクストに使われている超絶堅合金『アーク合金』と『棺』のダブル・ミーニングらしい。ドラキュラが入っていそうな棺の形……俺にはそうは見えない……をしているのだが先端に剣の柄があり、実際に剣が内蔵されている。


 敵の銃撃が再開される……俺は右手で柄を握りながら盾を構える。盾に敵の攻撃が当たるが、耐久値は殆ど減っていない。既に目視出来る位置まで敵に近づいている。

 相手もカスタム機体のようだが、攻撃力からしてそれほどではないだろう……それとも白兵戦メインなのか? まぁ、その答えはあと3秒くらいで分かるだろう。


 敵の機体がランスを装備するとブーストダッシュで飛び出してきた。なるほどね、俺の武装が剣だと分かっていてリーチで優位に立とうというわけか……だが、甘いぜ!!


 アークキャリバーのやや大きめな右の肩アーマーが変形すると腕全体を包み込むよう展開する。剣を持った右腕が一回り太くなった……このお陰で右腕の耐久力が大幅にアップした……が、これは防御のためでは無くあまりにも強力な武器である『ブラストソード』を使うためだ。


 ランスの攻撃を最小限の動きで躱すと俺のアークシールドが真ん中からスライドして割れて開く。剣を取り出すとそのまま地面を滑りながら体を回転させて攻撃する……すると剣が振り回す方向へ急激に加速し敵の腰から上下真っ二つに切り裂いた。

 実は現状実装されているEXT イクストでブラストソードを使用すると1~2回ほどでアームの耐久値がゼロになるという諸刃の剣なのだ……開発者もきっとネタ武器として実装したのだと思う。敵を1、2体ほど倒したら腕ごと無くなり、その後は不利になるようにデザインしたのだろう。

 だが俺は何とかこの武器を常用出来ないかと色々なパーツを組み合わせ、とうとうこの武器を使いこなせるEXT イクストをカスタマイズしたのだった。

 俺がこの武器を最初から最後まで振り回して戦った時はSOFを震撼させたものだ。今の所下方修正ナーフされてはいないが元々フォースゲージの消費は恐ろしく高く設定されている。


 もちろん肩が変形する手前、相手にこちらの攻撃がバレバレなので十分対策は取れるのだが……あっさり相手を倒せてしまった事に俺は歯ごたえの無さを感じてしまった。うーん、大会常連と言ってもランク入りしてなければこんな物か。


 敵のEXT イクストから火花が散ったあとに大爆発を起こした。レーダーから消えた事だけ確認したら、すぐに味方機の方へ向かう……3人とも足止めされている? 動いていないな。


『すまん、捕まった』


『まさか外にこんな戦力を割くなんてねぇ』


 敵EXT イクストはなんと両手にそれぞれミニガンを装備していた……ミニという名前とは裏腹に凶悪なガトリンク砲だ。α2は盾の耐久値が限界に達したのか建物の陰に隠れている。これは急いだ方が良さそうだな。


 俺はブーストダッシュで敵を挟んで味方の対面に回り込む。敵はそれに気づき片方のミニガンを向けてきたが、銃の重さか俺の早さが原因なのか全く補足出来ていない。銃撃が半減したのを見計らい、すかさず味方機は動き出す……α3とα4が盾を構えたまま二手に分かれて敵に突撃する。


 敵がどちらを攻撃するか躊躇した……俺はアークキャリバーの翼を展開して空へ飛ぶ。敵はその動きに反応してミニガンでこちらを撃とうとするが上空へ撃つのは地上より難易度が高い。


 俺は既に装備していたハンドガンで敵を撃つと頭を撃ち抜いた。頭を破壊されるとカメラとレーダー性能が落ちるので周囲の状況を把握しにくくなる。


 α3とα4はハンドガンを装備して射程範囲から適確に攻撃した。二体のEXT イクストに攻撃されて敵は崩れ落ち爆散した。ミニガンを二丁も装備した敵EXT イクストのコストは高かったようで、敵のフォースゲージは既に半分を切っている。


『助かったよ~さすがα1』


『お喋りは後よ、早く基地に侵入してポート設置するわ』


『了解!!』


 敵はリスポーンまで10秒はかかる……防御側は自由な場所に復帰出来るが、相手のポート付近には復帰出来ないからしばらくゆとりはあるだろう。


 基地の入り口を爆破するとα4がEXT イクストから降りてポートを設置する。これが起動すればやられてもこの場所からリスポーン出来る。


「ここから先はEXT イクストは入れない、あとは俺が死守するからもう行ってくれ」


『頼んだわα1』


『よろしくな……じゃあなグレートカーキZ』


『まだその名前なの? ネーミングセンスわる~』


 膝を着いていた3体のEXT イクストはモザイクが掛かったように消えていった。EXT イクストを帰還させたのだ……これで敵にやられてもフォースゲージの消費を抑える事が出来る。

 ただ、再びEXT イクストを使用する場合はかなりのフォースゲージを支払わなければならないので、もしもポートが破壊された場合ここまで来るために身の危険かフォースゲージかの選択を迫られる。


「外にあれだけ戦力を割いているんだ、3人なら基地内は楽勝だろう?」


『そうね、そんなに時間は掛けないわ……それじゃ行ってくる』


『そうなるとポートも必要なかったかもな』


『α1、よろしくね~』





 ……俺は三人を見送ると、リスポーンした敵に備えるのだった。




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ゲームイメージとしてファンタシースターオンラインとバーチャロンが混ざったっぽいやつです、ルールとか即興なので穴だらけですよ。


アークキャリバーのイメージとしては大雑把に、EX-Sガンダム上半身、ガンダムWゼロEWの下半身、背中にガンダムW ver.Kaのウィング、GP-03ステイメンの腰バーニア、テムジンMZV-747(何故かここだけバーチャロン)のソード、V2アサルトバスターのシールドを大きくした風の物を装備……という雰囲気だと思っていただければ。

ギミック満載の圧倒的な情報量の上半身に、スレンダーな下半身みたいなロボットが好きです。ダブルオーライザーとかも好きでした。


あとヴォルトナイトはファイブスターのレッドミラージュ辺りをイメージしています……あくまでイメージですよ。


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