災厄の伏魔殿

序章

 くるりと手を捻れば血肉が弾け飛び、断末魔の叫びが空気を裂く。

 命の簒奪さんだつも、赤子の手を捻ることと大差はない。

 なればこそ、殺戮さつりくにも飽きが来るというもの。死体のお手玉に興じようともただただ心は凪ぐばかり。

 力ある者は何をしても許される。気が赴くまま、くるりくるりと遊びを変えても物申す者はいない。

 世界はとても単純だった。興味が惹かれるか、惹かれないか。

 力に意味はない。殆どの他者がすべからく塵芥。

 悪辣あくらつなる者、災厄、禍の獣。己を示す言の葉は数あれど、指すところは全て同じ。

 すなわち、不幸を振り撒く根源。

 それは変わらない、変えられない本質。

 故に、巡った因果が己に降りかかろうとも、責を余所に求むるは筋違い。

 当然のことが起こった。

 ――ただ、それだけの話である。

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