第5話 ガラクのガラス玉
大使の話が終わった。
小学生たちが熱烈な拍手をする。
このままここにいると、また先生に「今日のお話すばらしかったです」とか言わされるかも知れない。
そこで、そっと僧院から出ようとすると、あの尼さんがいた。
最初にここに来たときに入った裏口に案内してくれるのかと思った。
でも、それとは直角の向きに向かう。
そちらではないのでは、と思ったが、その案内に従わずに迷子になると困るので、ついて行く。
そこは、狭くて急な階段だった。
僧院の二階、さっきの歩廊の外側に出られるらしい。
その狭い階段の先にはベランダのようなところがあるのだろう。
いままで暗いところにいたので、外の明かりがまぶしい。狭い階段の上に大きな窓がついていて、明るい灰色の曇り空がその向こうに見えた。
私が階段を上がると、さらに上に行く階段があって、尼さんはその上に上がって行く。その階段も狭い。
私は、尼さんに追いつく前に、その窓のところにガラスの球がいくつも置いてあるのに気がついた。
子どものころに遊んだビー玉のようでもあるが、私が持っていたいちばん大きいビー玉よりも大きい。二倍ぐらいの大きさがある。
しかも、それは二重構造になっているようで、ごくかすかに青い色のついた透明ガラスが外側を覆い、内側にはそれの半分くらいの大きさの、色のもっと濃い球が入っている。仕込んである、と言ってもいい。
その内側の球には、青い色や黄色い色と、いろいろな色がついていた。
どれもきれいな色だった。
明るい曇り空にすかして見ると、その内側に封じ込められているのは液体で、それがガラスのなかで揺れているように見えた。
「ガラクの特産品は、そのガラス玉なんですのよ」
と、先に階段を上っていた尼さんの声が聞こえた。
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