もっと強くなりたい!~Take Me Higher!~
好敵手と相棒
「ま、マルコス様、これ以上は……!」
「寝ぼけたことを言うな! この程度では足りん! もっと全力でぶつかってこい!!」
訓練場に大きな声が響く。
自分の部下たちと特訓を行っているマルコスは、繰り出される攻撃をギガシザースで防ぎ続け、へばった彼らへと発破をかけていた。
「この程度では足りん……! より苛烈な特訓を重ねなければ、私は――!!」
しかし、今のマルコスと彼の部下との間には、マルコス自身が想像しているよりも大きな実力の差がある。
彼らを相手に多対一の戦闘訓練を行ったとしても、マルコスの成長に繋がる気配はない。
もっと厳しい特訓を行わなければならないと、マルコスが実力を付けるための算段を考えていると……?
「今日も訓練か。精が出るね、マルコス」
「むっ……! リュウガに……フィーか。珍しい組み合わせだな」
「女子たちが揃って買い物に行っちゃってね。ユーゴも依頼で出掛けたから、フィーと一緒に食事でもって話をしてたんだ。それで、君も誘いに来たんだよ」
「残念だが、見ての通り私は今、訓練の真っ最中だ。その誘いは受けられん。だが……ちょうどいいところに来た」
訓練場に顔を出したリュウガとフィーへと、そう答えたマルコスが目を細める。
リュウガを指差したマルコスは、そのまま彼に大声で叫ぶようにして言った。
「以前から、貴様とは手合わせをしなければと思っていたところだ。私と立ち合え、リュウガ!」
「えっ!? ま、マルコスさん、そんないきなりじゃ、リュウガさんも驚くんじゃ……!?」
「心配しないでくれ、フィー。実を言うと、こうなるんじゃないかって思ってたんだ」
「えっ……?」
突然の決闘の申し出に驚くフィーを尻目に、緩く笑みを浮かべながらマルコスへと歩み寄るリュウガ。
どこか嬉しそうな彼に対して、戦意を燃え上がらせるマルコスが言う。
「貴様の実力は認めている。ユーゴが相棒と呼ぶのも理解できる。だが、奴の好敵手として、実際に戦わずして敗北を認めるわけにはいかん!」
「君らしいな。だが、僕も君とは戦いたいと思っていた」
空気を読んだマルコスの部下たちが、フィーを連れてその場から離れる。
闘気を漲らせるマルコスは、悠々と構えているリュウガを見つめながら口を開いた。
「……正直に言おう。リュウガ、私は貴様に嫉妬している。私はこれまで、ユーゴの友として奴と並び立つことを目標にしてきた。だが、奴の傍で戦えば戦うほど、底知れぬユーゴの強さに圧倒されるばかりだ」
一撃で決着がついたあの決闘から、随分と長い時間が過ぎた。
あの日からユーゴに勝つことを目標とし、関係を変えつつも共に戦う友としてユーゴの活躍を傍で見続けてきたマルコスは、自分と彼との実力差をひしひしと感じている。
骨董品レベルの魔道具であるブラスタを使っていた頃と比べ、ユーゴは圧倒的に強くなった。
それはアンヘルやフィーにブラスタを改造してもらったからという理由もあるのだが……それ以上に、改造したブラスタを使いこなす彼自身の技量があるとマルコスは思っている。
奇跡を経て発現した紫の鎧と、炎属性の魔力結晶を使用して開発された炎の鎧。更にはその二種類の形態を融合して作り出した紫炎の鎧の力を、ユーゴは十二分に引き出している。
他にも四肢変形や重量級の武装である斬魔紅蓮刃などを使いこなすのはもちろん、基本である魔力の扱い方も完璧と言って差し支えないレベルだ。
人間が変身した強力な魔鎧獣たちとの激戦が、ユーゴを成長させ続けているのだろう。
しかし、そんなユーゴと共に戦っている自分は、彼と比肩し得る強さを持っているといえるのだろうか?
「ユーゴは強い。運動能力、発想力、咄嗟の判断力……全てが超人的だ。そんなふうに、奴と私との間にある実力差を痛感しているところに……貴様が現れた。ユーゴと同等の力量を持つ、貴様がな。これを嫉妬せずして、何が好敵手か! 本来ならば、私がそこに立っていなければならなかったはずだ!」
「………」
日々開いていくユーゴとの実力差に悩んでいたところに現れた、ヤマトからの留学生。
最強の剣士と呼ばれるリュウガは、あろうことかあのユーゴにも勝るとも劣らない強さを持っていた。
悔しい……ユーゴの最大の友として、好敵手として、これを簡単に受け入れられていいはずがない。
先日、自分たちが束になってもどうしようもなかった結界に守られた管制室の扉をあっさりと叩き斬ったリュウガの姿を見た時、マルコスが感じていた自分への不甲斐なさは最大級に膨れ上がり、爆発した。
「私は勝ちたい! 貴様にも、ユーゴにも! 奴と並び立つに相応しい存在になる! それが、ユーゴ・クレイの最大の友であり、好敵手である私の使命だ!!」
「……なるほど。君の気持ちはよくわかった。君の気高さもだ。誇り高き精神を胸に弛まぬ研鑽を続ける君に、最大級の敬意を示そう」
マルコスの胸の内を聞いたリュウガは、息を吐いてから龍王牙を抜いた。
静かにそれを構え、切っ先をマルコスへと向けながら、彼へと言う。
「……僕は、君に恩がある。その借りを返すためにも、本気でぶつかろう。それが、今の僕にできる最大級の恩返しだ」
「当たり前だ。手を抜いたりしてみろ、絶対に許さんぞ!」
刀を構えるリュウガと、盾を構えるマルコス。攻めと守り、両極端なスタイルを見せる二人の立ち合いを、フィーは緊張しながら見守っている。
「行くぞ、リュウガっ!!」
吼えたマルコスがギガシザースを構え、一直線にリュウガへと突っ込む。
正眼の構えを取るリュウガは、そんな彼の姿を瞳に捉え、そして――!!
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