セツナ、パーティ加入!
「正しくは、独自の改造を施した鎧型の魔道具を使用し、その性能を十二分に活用しているから、ね。基本能力である腕力と脚力の強化のみならず、武器の生成と属性付与の能力を活用してギガンテスを倒したユーゴを見た時に思ったの。彼なら、私の目的の大きな助けになってくれるって」
アンヘルの言葉を受けたセツナが、それをより自分の思想に近しい形へと訂正する。
そうしながらユーゴへと視線を向けた彼女は、緩く微笑んだ後で再び残りの面々へと顔を向け、口を開いた。
「既存の魔道具であるブラスタを改造し、様々な機能を取り付けた上でその性能をスペック以上に引き出す……その経験や型に囚われない自由な発想を持つユーゴは、私の巫女装束改造計画において欠かせない存在と見た。そして、ブラスタを改造した人間の技術にも興味がある。あなたと会えて良かったわ、アンヘル・アンバー。あなたとも色々と話をしてみたいと思っていたから」
「ははっ、そりゃあ光栄なことで……だが、そのブラスタに基本的な改造を施したのはアタシじゃない。今、入院中のフィーだよ」
「あら、そうだったの? まだあんな子供なのに、将来有望ね……! あの子にも興味が湧いてきたわ」
ブラスタの整備や改造を担当しているアンヘルだけでなく、基礎的な調整を施したフィーにも興味を示したセツナが楽しそうに笑う。
セツナのことをよく知るライハが、ここまで楽し気にしている彼女を見るのはいつぶりだろうかと考える中、セツナは更に話を進めていった。
「ここまで話をすればわかってもらえたと思うけれど、私は巫女装束を改良していくために今後もユーゴとその周囲にいるアンヘルやフィーくんといった技術者の力を借りたい。そのためにも、あなたたちとはいい関係を築いていきたいの。というわけで……私はあなたの一味に入らせてもらうわ。構わないわよね、ユーゴ?」
「あ、ああ……別に断る理由もないし、俺にできることがあるなら協力させてもらうぜ」
「ふふふっ! ありがとう。心配はしていなかったけど、そう言ってもらえて安心したわ。さて……一方的に世話になるっていうのは私の主義に反するの。だから、お近付きの印にこれを受け取ってもらえる?」
ユーゴのパーティ入りを宣言したセツナが、どこからか一冊の本と無色透明の魔法結晶を取り出す。
本をユーゴに押し付け、結晶をアンヘルへと放り投げた彼女は、それぞれがなんであるかを簡単に説明し始めた。
「その本にはヤマトに生息する魔物や魔鎧獣、文化に歴史に魔道具といった色んな情報が記載されているわ。今度、弟くんのお見舞いに行った時に差し入れてあげれば、彼も喜ぶんじゃなくって?」
「おお……! 確かにフィーはこういうのが好きそうだ! サンキューな、セツナ!」
「どういたしまして。そっちの魔法結晶には、この巫女装束と私の魔道具【龍弦弓】に関するデータが入っているわ。パスワードも教えるから、装束の改良と新しい魔道具の開発の参考にしてちょうだい」
「おいおい、いいのか? これ、極秘中の極秘情報だろ?」
「生まれも育ちも違う人間が信用を得るためには、このくらいのことはすべきでしょう? 加えて、私はあなたたちならばその情報を無暗に流出させないっていう信頼を寄せている……っていう意思表示だと思って」
なるほどね、とばかりに頷いたアンヘルが受け取った魔法結晶を胸の谷間にしまう。
ライハとクレアはぎょっとしていたが、そこが彼女にとって大事な物をしまう際に最も安心する場所であることを知っているユーゴたちが苦笑する中、セツナは彼へと視線を向けると少し目を細めて口を開いた。
「ユーゴ、もちろんあなたにもあなたが欲しいと思っているものをあげるわ。まずは、そうね……遠距離攻撃の手段からかしら?」
「!?!?!?」
「何を驚く必要があるの? 私は用意周到なの。あなたの戦闘データも調べてある。その鎧には、気軽に使える遠距離攻撃がない。そして、私は弓使いよ。巫女装束の改良案を出してもらう代わりに、ブラスタに追加できそうな遠距離武装の作成に協力する……お互いに助け合える、いい関係になれそうでしょう?」
「る、ルリ子さ……いや、なんでもない。今の忘れて。まあ確かに、それは助かるな……!!」
一瞬口に出しかけたワードを、これはニチアサじゃないなと思い直して引っ込めたユーゴが大きく頷く。
単純に仲間が増えたことも嬉しいし、魔法少女のコスチュームの制作に参加できるなんて願ってもないし、加えてブラスタの強化案まで出してもらえるだなんて最高じゃないかと考えていた彼であったが、セツナの提案はここからが本番のようで……?
「まだこれは副次的な産物よ。私は、今のあなたが何よりも求めているものを与えることができるわ」
「んぇ? 俺が何よりも求めているもの? なに、それ?」
「そうね。それを説明する前に、一つ提案なのだけれど――」
ユーゴが何よりも求めているもの……意味深なその言葉を聞いたユーゴが、いったい何のことだとばかりに首を傾げながら尋ねる。
その問いに対して一度話を区切ったセツナは、下から彼の顔を覗き込みながら、試すような表情を浮かべると……こう、言ってみせた。
「――私と、恋仲になるつもりはない?」
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