恐怖のチリンチリン・トイレ
こぼねサワー
第1話(完結)
昔の職場の同僚Mちゃんから聞いた話
--------------------------
小学5年生くらいのときの話なんだけどさぁ。
校内で「恐怖のチリンチリン・トイレ」のウワサがハヤったことがあったんだよね。
……いや、そこであんまり笑われちゃうと、話が進まないんだよな。
っていうのが、旧校舎の1階の女子トイレの、入り口のほうから数えて3番目の和式トイレの水を流すと、まわりに誰もいないのに、「チリン、チリン、チリーン」って、うらめしげな鈴の音が耳元で急に聞こえてくるっていう、そういうウワサで。
だから、「恐怖のチリンチリン・トイレ」。
で、あたしも入れてクラスの仲のいい女子4人組で、放課後、その調査をしようってことになって。
旧校舎の1階の女子トイレに行って、自分たち4人のほかに誰もトイレにいないのを確認してから、ウワサの3番目の個室に入ったわけですよ。
まあ、トイレの個室なんてせまいから、ちゃんと中に入れたのは、あたしともう1人だけで、ほかの2人は個室の入り口から頭だけ突っ込んでたんだけど。
そんな感じで、小学女児4人が和式トイレの便器の中をじっと見守って息をひそめる中、いざ、あたしが、和式トイレの水洗レバーを上履きでグイッと踏み付けました、と。
そしたら、マジで、「チリリリーンッ!」って。
いや、ガチでリアルに。個室の中に鈴の音が鳴り響いたんよ。
めっちゃハッキリ。
鈴っていうよか、
そうそう、ホテルとかカラオケ屋のフロントとかにあるような。
そりゃもう、パニック。大パニック。
ウチら、大騒ぎで。ギャーギャーわめきながらトイレを飛び出して、廊下を走りまわった。
そしたら、ちょうど、校務員のオジサンにバッタリ出くわしたんだよね。
無口だけどアイソがいいっていう、奇跡のスペックの。いっつもニコニコしてる
ウチら、オジサンに泣きついて、
「チリンチリン・トイレがーっ!」
「幽霊が鈴をー!」
「トイレの花子さんがーっ!」
「タタリだ、タタリだーっ!」
って、もう、全員で校務員さんの腕をホールドして、女子トイレに引っぱったんよ。
校務員さん、ウチらに言われるままに水洗レバーをグイッて。
そしたら、また「チリリリリーンッ!」って。鳴ったのよ。
ウチら、また、「ギャーッ!」ってなるじゃん?
けど、校務員さん、ニコニコしたまま、「あー、これ、配管になんかツマってんねー」って。
んで、ゴム手袋はめて。
持ってたツールボックスの中から、ちっちゃいミニチュアのバール?みたいな工具を出して、便器の中に突っ込んで、
「んー、届かないかなー?」
とかツブヤキながら、カチャカチャやり出したんよ。
そしたら、ものの2、3分で、工具を便器の外に戻して。
それから、すぐにもう1回、便器の奥に手を突っ込んでから引っこ抜いたら、今度は、その手に、別の、細長い金具を持ってたんだよね。
「これが、なんかの加減で配管に引っかかって、水が流れるたんびに『チリチリチリーン』って音を出してたんだな」
って、おじさん言いながら、ウチらにそれを見せてくれたんだ。
「だいぶサビてるから、ずいぶん昔に便器に落っこちたんだろうけども」
ウチら、心底ホーッとして、テレ隠しみたいな感じでケタケタ笑いながら、みんなでそれをのぞき込んだ。
たしかに、めっちゃ表面がサビついてたから、パッと見、なにか分からなかったけど。
よーく見たら、それ、『メス』だったんだよね。
そう、メス。うちの学校だと、理科の準備室のカギ付きの棚にしまってあったはずなんだけど。
女子生徒用のトイレの便器の中に、いつ、誰が、どうしてメスなんか落っことしたんだろうって考えたら、なんか、またゾーッとしちゃった。
オワリ
.
恐怖のチリンチリン・トイレ こぼねサワー @kobone_sonar
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
契約不履行/こぼねサワー
★15 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます