第5話
あの舞踏会から5日。
あちこち痛かった身体もようやく落ち着いた。
明日から学園にも行こうと思っている。
舞踏会の翌日にアーサシュベルト殿下からお見舞いの花束と転落に巻き込んでしまった謝罪の手紙が届いた。
これまで花一輪すら贈って頂いたことはなかったので大変驚いたけど、それほどにひどい事故で責任を感じておられるのだろう。
ありがたく頂戴した。
そして、わたしも花束のお礼と気になさらないでくださいと事務的な返事を書いた。
そして、今日。
とんでもない手紙が殿下からきた。
アーサシュベルト殿下はあの転落事故で手の骨を折り、足を捻挫をしていたらしい。
そうだったんだ。
毎日、仕事で登城している父でさえもその事実は知らなかったらしい。
気を失ったわたしをフラフラしながらも運んでくれたのは殿下でしたよね?
痛みを堪えて運んでくださったのでしょうか。少し申し訳ない気持ちになった。
学園の生徒会長でもある殿下は、長期欠席もできず、殿下も明日から学園に行くとのこと。手足が治るまで、執行部の仕事や学園生活を少し手伝って欲しい旨が手紙には書かれていた。
ありえない。
言葉を交わせば、会話が続くこともなく、ひと言ふた言の必要最低限で終わる。
わたしにはニコリともせずいつも仏頂面。「春の殿下」なんて見たことない。
学園ですれ違っても、会釈ぐらいはしても会話をしたことがない。
そんな状態なのにアーサシュベルト殿下の側で手伝うことなんて、出来る訳がない。
なにをお考えなんでしょう。
断る理由を一生懸命に考えるけど、悲しいことに断る理由が全く見当たらない。
これからしばらく、無駄にキラキラ眩しく目立つ嫌味な男の世話をしないといけないかと思うと胃がキリキリするが、よく考えれば、わたしはいまはまだ殿下の婚約者。
「諾」とだけ、返事をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます