抜粋・ブログサイト「醤油日和」XXXX年一月XX日

 この悍ましい心中事件が引き起こされた理由は、この心中事件の犯人である当時の勇者候補である少年・鎖倉劍が国の上層部から命じられた密命、つまりは勇者ではなく『厄災』として大量虐殺を行うように強要された事だろう。

 弟妹を人質に取られた彼はその場ではその密命を引き受けはしたものの、その命令を実行するその日に耐え難くなったのか、おそらく知人、恋人であったとも言われている少女・十塚桜を地獄への道連れに選び、惨殺した。

 わざわざ惨殺した理由は不明だった、腹いせだったのか、八つ当たりだったのか。

 被害者には強姦された痕跡もあったそうなので、それだけは死ぬ前に恋する少女の肉体を味わいたかったのだろうと、下世話な推測を立てる。

 そうして自殺した鎖倉劍の『厄災』としての仕事は別人に引き継がれ、彼らの死からわずか二ヶ月後に、新たな厄災は彼が行うはずだった大量虐殺を遂行した。

 新たな厄災に仕立て上げられた男のたった一人の娘は、復讐のために彼を殺す『勇者』に仕立て上げられた。

 全ては国の上層部の、思うままに。

 しかし、この二つの殺人事件の合間に起こったもう一つの殺人事件、国の最高幹部内部で行われた一つの粛清が、彼らと、我が国の運命を変えることとなった。

 粛清により殺害されたのは最高幹部の末席、大した権力を持たない一人の女性だった。

 その女性は、腐敗した国の最高幹部に反論の声を上げたのだという、こんなふうに国が主体となり『厄災』を作り上げるのは、もうやめにしようと。

 しかし勇気ある彼女はあっさりと粛清され、その命を散らしてしまう。

 何故彼女がその時声を上げたのか、その理由は不明だった。

 権力者が自らの意思に反するものを殺して潰す、それはあらゆる時代のあらゆる国で行われるよくある話。

 しかし、彼女の死はよくある話では済まされなかった。

 表向きは事故死で片付けられた彼女の死を不審に思った男が、その死を追求し始めたのである。

 その男の名は才原、そう、あの『地獄堕とし』の才原である。

 才原は彼女の死を追求した、最初は一人で、しかしそれでは辿り着けず、自分が隊長を務めるかの有名な第十三部隊の部下達も使って、徹底的に。

 彼女の死、その原因が暴かれれば、この国の闇や腐敗、それら全ても共に暴かれかねない。

 だから国の上層部は彼らを妨害し、最終的には冤罪を着せてまで彼らを蔑め、その存在を消そうとした。

 しかしそれでも『地獄堕とし』は止まらなかった、彼は隊ごと国から離反し、反社会組織的な存在になりながらも国と対立、そして最終的に彼女の死を、この国の闇を暴いたのである。

 暴いたこの国の闇、最大の秘密を、彼はジャックした電波を通じて、この国に住むすべての国民に発信した。

 これによりこの国は大混乱に陥り、様々な悲劇が引き起こされたが……それはまた、いつか機会があればその時に。

 ……というかもう深夜の一時を回ってるから眠いんですよね、明日仕事で早いんで、今日はこの辺で。


 P.S. 機会があればとは書きましたが、多分そんな機会はないです、この後のこの国の暗黒時代って色々起こりすぎてる上に、結構悲惨で資料見ただけでキツかったので。

 というわけで次回からのテーマは『猫と踊る人類史』となる予定です、お楽しみに♪

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