発見
佐藤少年は中学生だ。
よくつるんでいる四人の友人達と不良ぶっているが実際は誰かに喧嘩を売るとか抗争を行うとかなどはせず、「不良ってかっこよくね?」とそれっぽくふるまっているだけの割と善良な少年だった。
今日もいつも通り授業を受けて、金がないので学校付近にある公園で仲間達とともにだべっていた。
最近は少し発売された対戦ゲームに全員で夢中になっていて、今日もゲーム機の通信機能を使い、五人で楽しくわいわいとゲームを楽しんでいた。
そうして気が付いたらかなり遅い時間になっていたので、慌てて帰ることになった。
思っていたよりも遅い時間になっていたことに焦っていた彼がそれに気付いたのは偶然だった。
ふと鉄臭さと、彼の妹が収集している呪物に似た気配を感じ取ったのである。
佐藤少年は妹がちょっとした変人だったので、そういった妙なものの気配には少しだけ敏感だった。
何かとてつもない嫌な予感を感じた彼は立ち止まって、その気配を感じた方向を見る。
そこにあるのは暗い路地裏だ。
「どうした、ちぃくん……ちょ、顔真っ青じゃん!?」
立ち止まった彼を不審に思った友人が彼の顔を見て驚愕する。
彼はゆっくりと路地裏を指さして、小さく呟いた。
「あっち……あっちに、なんかヤバいのがある気がする……」
そういって、佐藤少年はふらりと路地裏に向かって歩き出す。
「おい!! ヤバいのがあるなら行かないほうが……」
「放置するほうが……こわい」
譫言のように呟いた佐藤少年の様子を見て、少年達は互いに顔を見合わせ、覚悟を決めた顔で彼の後を追う事にした。
そうして路地裏を進んで少ししたところで、佐藤少年とその友人達はソレを発見した。
そこに人が倒れていた、最初は一人かと思ったが、二人いる。
「は……人? おい、大丈夫か!!?」
少年のうちの一人が駆け寄ろうとするが、一人がその腕を掴んで止める。
「ちょ、つっちー!!」
つっちーと呼ばれた少年は無言で首を横に振って、二人が倒れている地面を指さした。
「……は?」
暗くて気付かなかったが、そこにはおびただしい量の赤黒い液体が。
「血? え、これ……血……??」
「おい……なあ、こいつって公園でよく菓子食ってるバカップルの、男のほうじゃ……」
「じゃあ、抱えられてるのって……」
少年達はつい先ほどのことを思い出す。
この二人は今日もいつものように公園のベンチで菓子を食っていた、特におかしなところはなかったはずだ。
「おい!! 大丈夫か!!? しっかりしろよ!!」
「救急車、救急車呼ぶ!!」
「むだだ。しんでる」
小さく首を横に振って呟いたつっちーに少年達は絶句する。
「は? マジで? マジでいってんのつっちー」
無言で首を縦に振ったつっちーに少年達は互いに顔を見合わせる。
彼らが衝撃で何もできない間、かろうじて冷静さを保ち続けていたつっちーが震える手でポケットから携帯端末を取り出し、耳に当てる。
「もしもし……あの、ひとが……ろじうらでひとが……こうえんでよくみるばかっぷるが……しんで……」
そこまで言ったつっちーはその場に蹲り、嘔吐した。
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