第9話
「──……で?そちらの方は?」
私の目の前には優雅にお茶を飲むエリザが座っている。
話し相手ぐらいにはなってくれると言ってくれたので、その
エリザは親衛隊のリーダー。もしかしたらこの間の事件の事で何か知っている事があるんじゃないかと踏んだのだが、話を進める前に私の後ろに立っているリュディガーが気になって仕方ない様子だったので、断片的だがリュディガーが私の護衛に付いた経緯を話した。
「まあ、ヴェルナー様の……どうりでお美しいはずですわ……」
エリザは頬を赤く染めうっとりした表情でリュディガーを見つめていた。
うん。分かる分かる。誰しもがその反応するから。
「……あの……リュディガー様は、その……婚約者などは……?」
エリザは躊躇いながらもリュディガーに訊ねた。
「残念ながら、まだ……──ですが、私には心に決めた方がいるので、その方と一緒になれないのでしたら一生独り身を貫く所存です。まあ、相手にはこれっぽっちも相手にされていないのですけどね」
少し困った様に微笑みながら言い切ったリュディガーを「素敵……」と恍惚とした顔で見ていた。
──あっ、なんか嫌な予感……
「素晴らしいですわ!!リュディガー様!!その一途な恋心!!わたくし感動致しました!!いいでしょう、その恋、わたくし達親衛隊が見守りますわ!!」
ガタンッと勢い立ち上がり、両手を胸の前でギュと握りしめ声高々に宣言した。
……誰も見守って欲しいとは言ってないのだが……
リュディガーは苦笑いしながらも「ありがとう」と一言言っただけだか、エリザはこの一言が大層嬉しかったようで「わたくし達にお任せ下さい!!必ず、その恋を成立させましょう!!」と鼻息荒く詰め寄るもんだから、リュディガーはタジタジになっていた。
「……あの、私もいるんですけど……?」
「あら、そうでしたわね。……で?なんのお話でしたっけ?」
エリザとリュディガーの間にいる私がボソッと呟くと、私の顔を見たエリザはスンと一瞬で真顔に戻り椅子に座り直した。
──この温度差……
まあ、いちいち突っ込むのも疲れるので、改めて
エリザは少し考えた後、口を開いた。
「結論から申しますと、今の段階でわたくしが知っている情報はありませんわ」
エリザでも駄目か……犯人は余程身を隠すのが上手いらしい。
おじ様達も苦戦しているみたいだし、これは長期戦だな……
そんなことを思いつつお茶を口にした。
「それはそうと、貴方、ヴェルナー様の件はどうなりましたの?上手くいきましたの?」
「──ッん゛ぐ!?」
思いもよらない言葉に思わずお茶を吹き出すところだった。
「ゴホッゴホッ……!!えっ!?あっ、あの事ですか!?」
エリザが言っているのは婚約破棄の事。
しかし、聞くタイミングが悪い。今この場には弟であるリュディガーが一緒にいる。リュディガーに私の計画を知られる訳にはいかない。
──空気読んでくれよ……
心の中で舌打ちをしつつ、どう答えようか考えていると私の肩に手が置かれた。
見上げると、それはそれは満面の笑みでこちらを見ているリュディガーがいた。
「アリア、その話、私にも教えてくれます?」
怖い怖い怖い!!!これ、まずいぞ!!
「あら?もしかして、リュディガー様には内緒でしたか?護衛と聞いたので、てっきり話しているものだと……」
「ごめんなさい」テヘッ。なんて可愛こぶっても駄目だから!!
どうしてくれんのよ!!これ!!
──こうなったら適当なこと言って誤魔化すか!?
いや、
幼い頃に一度だけ、リュディガーに小さな嘘をついたことがあった。
あまりにも小さな事だったから内容は覚えていないけど、あの時のリュディガーは背筋が凍るほどの笑みを私に向け、事実を話すまで執拗に追い詰め、追い込まれた。
──精神的に追い込んでくるからタチが悪いんだよ!!
それ以来、私はリュディガーには嘘偽りなく話をする。という事を心がけた。
……何が言いたいかと言うと、今の私は絶体絶命って事。
「……えっと……、あの……」
今の私は挙動不審で、明らかに何かやましい事を隠しているのが丸分かりの状態。
そんな私をリュディガーは逃がすはずがない。
「……アリア……?」
ダラダラ冷や汗が止まらない。
エリザに助けを求めようかとしたが、どうやらエリザはリュディガーの様子に「あっ、言っちゃダメなやつだわ」と察した様で顔を背け、私と目を合わせないようにしていた。
──元はと言えば貴方のせいなんですけど!?
「……そう……話さない気なんですね……?」
纏っていた雰囲気が変わり、ヒユッと息を飲んだ。
その目はまさに蛇。狙った獲物は毒牙にかけてでも離さない。
「わ、わわわわわ分かった!!全て話します!!だから、ちょっと離れて!!」
こうなったら腹を括るしかない。
いや、
仕方なく私はヴェルナーと婚約破棄したい事、円満に破棄する為に動いている事を話した。
全てを正直に話すと、リュディガーが「ふむ……」と何やら考えていたが、ニヤッと不敵な笑みを浮かべたのを見た時首筋に悪寒が走った。
──な、なに……?
「
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