波乱万丈な北方先生の経歴①
北方先生の作家デビューに至るまでの経緯は
色んなエッセイで語られています。
特に『風待ちの港で』というエッセイに、より詳しく書かれています。
これまで順調だった私の進路が突然、閉ざされた。
大学受験直前で肺結核が見つかった。
当時は、肺結核に罹患してると進学を許可されなかった。
自暴自棄になり、付き合っていた彼女のアパートに転がり込み、同棲を始めた。
2泊3日の旅行から帰った後、突然彼女が頭が痛いと苦しみだした。
くも膜下出血であった。
緊急手術のオペ室の扉が閉まり、
私の心の何かも開く事は無かった。
大学に進学するも、結核の治療は続いた。
ちゃんと考え体も動かせ、まともな生活もしているのに
障害者のような扱いを受けた。
ある夜、文芸サークルの友人から電話が来た。
「 あの女に会いに行ってくれ 」
その女とは、私の書いた小説の登場人物で架空の存在だ。
切迫した口調で、話も滅裂である。
「落ち着け、明日話そう」
そう言って電話を切った。
翌日、彼の元を訪れると、既に亡くなっていた。 自殺である。
あの時、電話を切らずに、話し尽くさせるべきではなかったのか。
自責の念に、さい悩まされた。
目の前に突き付けられた、死という事実。
残された者の喪失感。
生きてゆく事の残酷さ、理不尽で不条理な現実。
この苦しさが自己表現となり、小説へと向かわせた。
一方で、捨て鉢な自分もいた。
ヤケクソだった。
学生運動に参加し、いつ死んでも構わないと思いながら
機動隊に襲いかかり、暴れまわった。
その頃に書いた『 明るい街へ 』という小説が
出版社の目に留まり、雑誌に掲載され好評を受けた。
卒業後、作家の道を目指すも、これが苦悩の始まりだった。
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