若さ故の 暗い翳り

北方先生がエッセイで述べていた事です。



「 私の作品の主人公は、傷を持つ中年男が多い。

それは、主人公のキャラクター造形に

物語に至るまでの経緯や経歴、傷を負う出来事などが

必要となるからだ。


ところが若者は、人生の経歴そのものが少ない。

そして若さには、傷を回復させる力がある。

若者だからこその、キャラクター造形の難しさがある。



友人である、田原俊彦と初めて会った時の印象は

礼儀正しい好青年で、かつ

ほとばしるスターの輝きに満ちていた。

そして時折差す、一瞬の暗い翳りが彼の魅力となっている。


若さの輝きがまぶしい程、色濃く刺す一瞬の翳り。

そのようなテーマの作品を、今後は書いていきたいと思っている 」


という内容でした。




あのトシちゃんに暗い翳り、

というのが意外でもあり

実際に会った人でしか分からない、

ニュアンスなのだろうと思いました。

そして「若さ故の暗い翳り」というフレーズが

ずっと引っかかっていました。



これを読んだ時の、私自身が18、9歳で

それこそ ”若さ” の真っ只中にいるはずなのに

私には自分に、若さの輝きがあるとは

到底、思えなかった事も、このエピソードが

心に引っかかっていた理由でした。




尾崎豊の『 太陽の破片 』のシングルジャケット。

太陽の破片 と検索すれば、すぐ見れます。


暗闇の上空から差し込む光に手を伸ばす尾崎。

それは、何かの希望に手を伸ばしているのか

暗闇の底に差す光は、何かの償いと許しなのか

絶望の彼方に差す、遠く届かない希望なのか

自分に訪れる事のない、ささやかな願いなのか 




それが何を表しているのか

見る度に、違う思いが沸き上がり、

そしてそれが、尾崎豊という人を

象徴する写真である事は、確かだと思います。


私にとっては

「若さ故の暗い翳り」の象徴とも言える写真です。

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