悪魔

「こい…こい!四萬!頼むからきてくれ!頼む!」

 麻雀で負けっ放しの村井は心の中で叫び、牌を掴んだ。

「…南。ちきしょう…何なんだこの引きの弱さは…運無さすぎだろ…こんなもんいらんわ!」

 村井は怒りながら南を切った。

「ロン」

 麻雀相手の寺田はニヤニヤしながら言った。

「字一色。役満だ」

「…ぁあ…」

 村井のショックは計り知れない。

「…俺、ちょっとトイレ…」

 村井は涙が出そうになるのを堪え、トイレに向かった。背中には寺田の無遠慮な高笑いが聞こえていた。


「…何でこんなに勝てないんだ…もう明日からの生活費もねぇよ…お願いだ…誰か俺にとてつもない運を与えてくれよ…」

『俺様が運を与えてやろう』

「だ…誰だ!?」

「キャッキャッキャッキャ!」

 村井がビクビクしながら叫ぶと、耳をつんざくような笑い声とともに、目の前に小さな悪魔が現れた。

「俺様が運を与えてやるって言ってるんだよ」

「そ…それは本当なのか?」

「嘘はつかない。…まあこっちにも条件があるがな」

「条件なんていつでも聞いてやる!早く運をくれ!」

 条件が何なのか多少気にはなったが、こんなにおいしい話はまたと無い。村井は悪魔の話に飛びついた。

「そんなに慌てるなって。ほらよ!」

 悪魔は村井に奇妙な粉を振りかけた。

「お…おぉ!す…すごい!体の奥からどんどん力がみなぎってくる!」

「これでお前はギャンブルでは無敵だ。満足するまで楽しんできな」

 村井は悪魔に軽く礼を言うと、そそくさと麻雀相手の元へと向かった。


 夜が明けた頃、村井は満面の笑みを浮かべ悪魔の元にやってきた。

「いや~、お前のおかげでガッポリ稼ぐことができたよ。ありがとな!」

「そうかそうか、それはよかった。じゃあその金を俺様に全部よこしな!それが条件だ!」

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