シュール宅急便(2日目)
まぼたん
日本人形の仕返し
私が幼い頃から我が家には1体の日本人形があった。市松人形と呼ばれるもので、その容姿は黒髪でおかっぱ、和服を着た女児。子供の私にとっては気味が悪く、怖くてたまらないものだった。しかも、寝室に置かれていた為、その恐怖は計り知れなかった。
その日本人形は祖母がとても大事にしており、私がどこかにやってくれと何度お願いしても、「この家を守ってくれているのよ」と言われるだけで、何もしてくれなかった。
ある日、我慢の限界に達した私は、祖母に見つからないように日本人形を持ち出し、近くのゴミ捨て場に捨てた。これで安心と鼻歌交じりで家に帰ると、捨てたはずの日本人形が元の場所にあり、祖母が激怒していた。こんな事をするのは私ぐらいだったので、祖母にこっ酷く叱られたのは言うまでもない。
それからというもの、私は叱られるのが嫌で、只々我慢する日々を送っていた。
そんな私にチャンスが訪れたのは、それから2ヶ月程経った時だった。祖母が亡くなったのだ。今思えば、チャンスと言ってはいけないことだと思うが、子供の私にとっては、チャンス以外のなにものでもなかった。
私は早速母に日本人形を捨ててくれと頼み込むと、母は、「おばあちゃんの形見だから捨てるわけにはいかないけど、物置にしまってあげる」と、私の我慢を知っていたので、快く了承してくれた。
月日は流れ、私が二十歳になった時、家を建て直すことになり、年末以上の大掃除が始まった。
家の中は順調に片付き、最後に外の物置の片付けに取り掛かると、奥の方からすっかり忘れていたあの日本人形が出てきた。
子供の頃はこれに毎日苦しめられたなと思いながら日本人形を眺めると、ある事に気付く。
「…髪が伸びてる…」
子供の頃の記憶は曖昧で定かでは無いが、明らかに不揃いな髪はそれを証明していた。
再び恐怖が蘇った。この日本人形は大人になってからも私を苦しめる。
私は呪い等を信じる性質なので、これ以上日本人形に恨みを買っては命に係わるのではないかと思い、家を建て直してからというもの、しっかりと飾るようにした。
しかし、何を今更というように、年々、日本人形の髪は止まることなく伸び続けていった。
そんな日本人形の髪も、私が死を迎えると伸びることは無くなった。
最初は、日本人形が捨てられた仕返しに、私に死ぬまで恐怖を与えようとしていたと思っていたが、今になって思うことがある。
あれは、私がハゲていることへの当て付けだったのではと…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます