第101話:伊400、攻撃せよ!
駆逐艦“雪風”の一連の行動を見ていた伊400司令塔では日下艦長以下が素晴らしいとの絶賛の嵐であった。
「寺内艦長、神懸かっていたな」
「艦長、もしかしてあの映画を彼に見せたのですか?」
昭和17年、布哇にて今は亡き『石原莞爾』元帥の導きで初めて邂逅した時、話が弾んで別世界になるが未来の映画を鑑賞した時、大いに喜んでいた事を思い出す。
「米国映画だったが純粋に楽しんでくれたな、そこで例の戦艦ドリフトに驚嘆してやってみようかなと思ったのでは?」
日下の言葉に横にいた橋本も頷いて流石は幸運の駆逐艦の名に相応しい艦長ですねと言う。
「これは後に教科書に載るかもね? 東郷ターンと寺内ターン? いずれは“大和”でもみたいと思うが?」
橋本の言葉に同意した日下は引き続いてこちらの戦力でパナマ運河を徹底的に破壊し尽くすと宣言する。
「米国が再建を諦めるぐらいに徹底的に破壊し尽くす! 巡航ミサイル“天照”を一番から8番まで装填! 弾頭は“GRT2”式だ」
魚雷格納庫から巡航ミサイル“天照”が引き出されてレールに乗って自動的に装填される。
「巡航ミサイルに情報を入力します!」
管制室にてオペレーターが航路及び着弾地点を手慣れた作業で入力する。
間もなく入力完了の報告が司令塔に入ると日下は頷く。
「カウント5秒後に全弾発射!」
日下の命令と同時に吊るされているモニターに発射カウントが表示される。
そしてカウントが0になった時、魚雷発射管8門から巡航ミサイル“天照”が一斉に発射される。
「海面まで10秒! その後、点火してマッハ15まで増速して目標へ向かいます」
司令塔にいる者達が頷いてモニターを凝視する。
正確に10秒後、天照は海面に出ると同時に後部噴射システムが作動して咆哮を上げながら空に向かって加速していき、その後、巨大な音が空を切り裂き、遠くに消えていった。
「艦長、命中まで7分23秒ですが……GRT2弾頭ならパナマ運河周辺の山や丘等の地形が激変しますがよろしいのでしたか?」
「ああ、どうあがいても再建できないまで破壊する。まあ、米国なら第二パナマ運河を作るかもしれないがね? その時には俺達はいないかもしれないが」
日下と橋本が色々と話をしている内に着弾時間が迫ってくるのを聞いた日下はモニターを見る。
8個の光点がパナマ運河に吸い込まれるように消えていくと同時に着弾を意味する花火のマークが8個出て直ぐに消える。
「無人戦闘機“晴嵐”に映像を送るように信号を送ってくれ」
「はい、5分後に目標に到達しますので」
五分後、パナマ運河上空に到達した“晴嵐”から送られてきた映像を見て皆が息を呑む。
「……ううむ、見事に跡形もなく粉々に破壊されているな」
「まあ、そうでしょうね! GRT2弾頭は地下深くで爆発する代物ですから。それにしても凄まじい破壊力ですね」
パナマ運河は文字通り、地図上から存在を消したに等しい程、破壊されつくしたのである。
「さて……と、いよいよ南雲さん率いる機動部隊と米国機動部隊との戦いが始まるのだが戦力差はやはり南雲さんに不利だな。米国機動部隊の9割以上が訓練をほとんど受けていない初心者の集まりだが全ての総合力におけば戦力不足が甚だしい……」
現在、南雲機動部隊の戦力は新たに山本五十六が裏から派遣してくれた最新鋭装甲空母“大鳳”・正規空母“瑞鶴”“翔鶴”・改造空母“隼鷹”“飛鷹”・戦艦“山城”“扶桑”・重巡洋艦“最上”“三隈”“熊野”“鈴谷”・軽巡洋艦“長良”“神通”“大井”・駆逐艦“若葉”“潮”“高波”“秋月”“冬月”“霜月”“涼月”“浦風”“谷風”“不知火”の戦艦2隻・空母5隻・重巡4隻・軽巡3隻・駆逐艦10隻であった。
一方、米国海軍の機動部隊の戦力は正規空母15隻・護衛空母15隻・巡洋艦25隻・駆逐艦46隻という相変わらず物量に任せたものだった。
「南雲さんには彼らの詳細な位置を克明に教えているが戦力差には頭を抱えているだろうな……」
「艦長、このままでは負けないかもしれませんが日本機動部隊もかなりの被害を受けるのでは? 何処まで手をお貸すつもりですか?」
橋本の言葉に日下は既に答えを出していて日米同じ状況になるまで手を貸すつもりで後は提督の手腕に期待しようと言う。
「では、超極音速魚雷を使用するのですね?」
「ああ、既に管制室には調整命令を出していて後、10分後に完了するとの事だ。全く、素晴らしい仕事をしてくれる部下を持って俺は幸せな艦長だよ。勿論、橋本君を含めて全乗員だぞ?」
日下の意地悪そうな笑みに橋本も同じ笑みを返すと準備完了の報告が来るまで艦長席に座る。
そして20分後に全ての準備が整いましたとの報告が入る。
「了解だ、一番から八番に魚雷装填! 発射後、直ちに次弾装填して一分後に再び発射する。これを9回繰り返す」
「72本ですか、彼らにとって正に地獄の蓋の窯が開いた状態でしょうね?」
「まあね、真の敵になるナチスドイツとの戦いまでは戦力を温存しておかないといけないからね? 本土では超重爆撃機“富嶽”の試作機が間もなく出来るとの事だ。まあ、その詳細な技術はこちらで提供したのだがね?」
そして……艦首から次々と魚雷が発射されて合計72本の魚雷がマッハ1.5の超音速で目標に驀進していく。
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