第99話:突撃!! 駆逐艦隊!

 大混乱に陥っている米国艦隊に日本海軍水雷戦隊が見事な統制を取って突っ込んでいく。


「各艦、私の指示通りに統制雷撃を開始する! 目標は右舷2500メートルのアトランタ級巡洋艦だ!」


 指揮艦“雷”艦橋にて工藤艦長が仁王立ちになってキビキビとした命令を発する。


 61cm3連装魚雷発射管3基9門がゆっくりと回転していく。


 第6駆逐隊の“暁”“響”“電”の僚艦も同じ動きをする。


「各艦1発ずつ発射だ! 訓練通りにやれば外れないぞ? 戦艦“大和”は全弾命中の100%命中させているとの事だ、我が駆逐隊も十分できると確信している」


 工藤の言葉に艦橋にいる全員は元より魚雷発射管から盛大な掛け声が沸き起こる。


 各艦の艦長もキビキビと命令を出している。

「発射準備完了! いつでも発射出来ます」


 その言葉を聞いた工藤は頷くと発射命令を出す。

「放て!!」


 61センチ酸素魚雷が各艦から発射されて4発がアトランタ重巡に肉薄していくがアトランタ巡洋艦には動きがなかった。


「わが日本海軍最高傑作の酸素魚雷の威力、とくと味わってみるがいい。何しろ、航跡が一切、出ないからな」


 重巡“アトランタ”では日本駆逐艦から魚雷が放たれるのを確認したがその航跡が見つからず色々な意見が出ていた。


「へっ! やはりジャップの魚雷は駄目だな」

「欠陥品だとは流石は猿真似だな」


 艦長も少し安堵して速度と針路方向はそのままにとの連絡をした瞬間、突如、艦が地響きのような音がして水柱が4本立ち上がる。


 艦長他、船内にいた乗員達は激しい衝撃で吹き飛んでそこらの障害物に叩きつけられる。


 アトランタに命中した酸素魚雷の内、機関室で爆発した影響により速度がガクンと下げると共に舵が効かなくなり円を描くように右舷に傾きながらヨロヨロと動いていたが遂に転覆してそのまま水中で爆発して船体が折れて轟沈する。


「敵巡洋艦アトランタ級撃沈!!」


 双眼鏡で巡洋艦が沈んでいく様子を見ていた見張り員が叫ぶと歓声が沸き起こる。


 それから第6駆逐隊は統制雷撃によって巡洋艦3隻・駆逐艦3隻撃沈、戦艦2隻を大破させると言う武勲を建てる。


 命中率は実に98%を誇っていたのである。


 第6駆逐隊によって大破させられた戦艦2隻は間もなく“大和”の主砲の餌食となって海の底に沈んでいく。


「工藤艦長! 他の駆逐隊も突っ込んでいきます! あっ、田中提督自ら突っ込んでいきます」


 工藤が双眼鏡で確認すると田中中将率いる水雷戦隊が突入していき雷撃体制を取っているのが分かる。


「……文字通り圧勝になると他の皆は考えているのだろうな……。だが、慢心は駄目だ!」


 今現在の状況は逃走の為、米国艦隊は濃い煙幕を張っていてそれが辺り一面を覆っていくが日本海軍にはそんな騙しは無駄であった。


 想像を絶する徹底的な猛訓練の結果、真っ暗闇等視界0でも脅威的な6感を働かせて次々と魚雷を命中させていく能力を持っているのである。


 最早、米国艦隊の統制は崩壊して各艦は蜘蛛の子散らすようにこの海域を脱出していく。


 各艦の殆どが勝ったぞと思った時、そこに油断が生じてそのツケが第30駆逐隊に襲い掛かる。


 軽巡“ブランカ”と駆逐艦フレッチャー級3隻が突然、日本艦隊の不意を突いて第30駆逐隊に肉薄してきた。


「よし! 目の前のジャップの艦に突っ込め!! 体当たりでも構わない! 一隻でも仕留めるのだ!」


 艦長『グラント』は大声で叫ぶと他の者達も頷く。


 “如月”見張り員が“ブランカ”を確認した時には既に右舷百メートルまで接近していてすかさず衝突してくると判断する。


「取り舵一杯!!」


 艦長の指示で“如月”は急速に針路を変更した直後、“睦月”がそのまま直進した結果、“ブランカ”と衝突する寸前までいったが突如、“ブランカ”が大爆発を起こして真っ二つに折れて轟沈していく。


 それを何とか交わすことに成功した“睦月”であったが爆発の衝撃で魚雷発射管が回転することが出来なくなった。


 “ブランカ”の突如の轟沈は“雪風”が放った魚雷が外れてしまい偶然に命中した結果であった。


 他の3隻の駆逐艦も“ブランカ”が轟沈した事に動揺して舵を取り間違えて次々と味方同士で衝突して炎上する。


 そこに体勢を立て直した第30駆逐隊が12.3センチ連装砲の集中攻撃と雷撃によって全隻が轟沈する。


「う~む……危なかったな、正に油断は大敵だ。気を引き締めていかないとな」


 “如月”艦長が冷や汗を流しながら呟くと副官も頷く。

 結局、人的被害はなく魚雷発射管が故障しただけであったが“雪風”が放った魚雷のお陰で助かったと言える。


「流石は幸運の艦と綽名されるだけあるな。よし、このまま他の駆逐隊と合流だ」


 艦長の指示で第30駆逐隊は他の駆逐隊と合流していく。

 総指揮艦“由良”では田中頼三が続々集結してくる味方艦を確認しながら頷いていてがふと、ある艦がいないことに気付く。


「“雪風”がいないぞ? はぐれたか? 誰か“雪風”を見なかったか?」

 確かに他の駆逐隊が合流したがただ“雪風”の姿が見えなかった。

 

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