第98話:号砲!
米艦隊旗艦戦艦“モンタナ”艦橋にてキング大将以下上層部幹部が勢揃いした時、突如轟音が水平線の彼方から聞こえる。
「うん? ハリケーンの影響だな、さて……」
その瞬間、キング大将の意識は途切れるがそれは他の上層部も一緒であった。
“大和”の初弾が見事に“モンタナ”艦橋上部に命中して上半分の艦橋を吹き飛ばしたのである。
一番砲塔から放たれた三発は上部艦橋と第二番砲塔天蓋及び煙突の中に命中したのである。
第二番砲塔の天蓋をぶち抜いた徹甲弾は弾火薬庫で爆発する。
閃光と共に大音響を上げて前部船体を吹き飛ばしてしまう。
三発目は煙突の中に入りその真下で爆発したので一瞬にて艦内は火の海になり何が何だか分からないまま巨大な火柱を上げて爆沈したのである。
命中して僅か数十秒の事である。
乗艦していた乗員も又、何が起きたか分からず爆発及び誘爆によって肉片となって飛び散っていったのである。
二番砲塔から放たれた徹甲弾は戦艦“ミズーリー”に全弾、直撃する。
“ミズーリー”二番砲塔横の甲板をぶち抜いてこれも同じく弾火薬庫で爆発する。
二発目は艦橋と煙突の真ん中に命中して兵員室にて爆発する。
三発目は後部甲板を突き破って機関室にて爆発したので航行不能になったがそれよりも弾火薬庫の誘爆により別世界では歴史に残る武勲艦であったがこの世界では一発も撃つことなく真っ二つに折れて轟沈したのである。
三番砲塔から放たれた徹甲弾の内、二発は海面に落ちて巨大な水柱を上げたが水中徹甲弾の一面を持つ性能で戦艦“オクラホマⅡ”の左舷側に魚雷と同じ運動で命中して爆発する。
戦艦の中でも一番厚い装甲だったが46センチ徹甲弾の前では何の役にも立たなかったのである。
二代目として建造された“オクラホマⅡ”も命中して数十秒後に横転して赤い艦底を晒したかと思うとそのままゆっくりと沈んでいった。
“大和”の初撃は一気に三隻の戦艦及び乗員約八千名を天に召したのである。
戦艦“大和”防空指揮所で双眼鏡で観測していた見張り員が興奮した様子で全弾命中して三隻の戦艦が一瞬で轟沈したことを伝えると艦内全域で歓声が沸き起こる。
「遠方からだと詳細は分からないが凄まじい威力だな、46センチ砲は……」
木村司令の言葉に有賀艦長も満足そうな表情で頷くと引き続き撃って撃って撃ちまくりましょうといい山南砲術長に頷く。
山南も頷いて戦艦のみを狙えと伝達する。
♦♦
一方、米国艦隊は突如、司令官が乗艦する“モンタナ”が一瞬で轟沈したので指揮系統が作動しなくて大混乱の極みになる。
「何が起きたのだ!? 敵の攻撃か!?」
この声が至る所から聞こえるがそんな最中、戦艦“テキサスⅡ”の防空指揮所の見張り員が水平線の彼方から巨大な戦艦がこちらに来ていると報告する。
艦長『シーガルド』大佐が取りあえず、全艦にその旨を無線で流そうとして命令を発する寸前に凄まじい衝撃が彼らを襲い艦橋の窓ガラスが木っ端微塵に破壊されて凄まじい暴風が舞い込んできたのである。
爆風で吹き飛ばされたシーガルド艦長は腰をしこたま打って骨折してその痛みに気を失ってしまう。
戦艦“テキサスⅡ”を襲ったのは勿論、“大和”の主砲で艦橋の根元に直撃して爆発する。
甲板上で作業等をしていた水兵達も一瞬で肉片が散らばり跡形もなく吹き飛んでしまう。
命中弾が機関室で爆発した結果、後部船体が吹き飛んでしまうがかろうじて轟沈を免れるがいつ沈んでもおかしくなかった。
この時点になれば次々と米国艦隊が錨を上げて動き始めたが戦闘配置につくまで“大和”の良い的となっていてやっと迎撃態勢が整った時には戦艦八隻が撃沈されていたのである。
巡洋艦を始めとする駆逐艦隊も“大和”を迎撃する為に隊列を取ろうとしていた。
巡洋艦“ナッシュビル”艦長が怒気を含めて怒鳴っている。
「ジャップはたった一隻で殴り込みに来たクレイージーだ! 全艦で包囲して叩き潰してやる!」
こう息巻いていたが指揮系統が消滅しているため、空回りであったがとにかく各艦の判断で迎撃準備を始めたその時、突如、“ナッシュビル”の右舷に3本の魚雷が命中して巨大な水柱を上げてそれが収まった時には残骸や水死体が浮かんでいるだけであった。
「な……!?」
その他にも次々と巡洋艦や駆逐艦が水柱を上げて数隻がそのまま轟沈していった。
大混乱に陥った米国艦隊の後方から『田中頼三』中将率いる第一水雷戦隊が殴り込みをかけてきたのである。
この水柱の正体は、日本海軍が誇る秘密兵器“酸素魚雷”である。
「流石は世界最強と言われる“大和”だな、だが俺達も負けてはいられないぞ? 各駆逐隊は突撃して駆逐隊事で敵に当たる事!」
田中中将の言葉に他の艦の乗員達から気合が入った大声での返事が各艦内で発せられる。
満足そうに頷いた田中は大声で各艦に聞こえるように無線にて砲雷撃戦の準備を命令する。
かくしてパナマ沖海戦第二幕が開始される。
第6駆逐隊が先ず、先陣を切って殴り込みをかけたのである。
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