第91話:休息の終わり、そして……。第7部終了

 全乗員が揃ったところで日下は改めて休息は終わりこれから再び果てしない並行世界への旅に出るのだが本当にこの地に留まりたいと思う者はいないのか? と質問するが日下の問いに全員が我らの安住の地は伊400にありますというのを聞いて大きく頷くと感謝の意を示す。


「有難う、君たちの命……この日下に預けてもらうが心配いらない! 我らは誰一人も死なずにこれからも旅が続くのだ」


 そして、訓令が終わり解散と言う号令がかかると皆がおお!! と掛け声を上げて小走りでハッチから艦内に入り各配置場所に散っていく。


 それを見ながら日下と橋本は顔を合わせると笑みを浮かべて頷く。


「さあ、出発の時間だ!」


 日下と橋本が司令塔の中に入ると各区域から報告が入る。


「核融合炉点火準備よし! 起動開始」


 機関管制室内にて在塚機関長が起動ボタンを押すと核融合炉の出力が上がると共に全艦内区域に電気が送られる。


 今まで非常灯のみで薄暗かったが一気に真昼のような明るさになりそれが艦内全区域にいきわたると共に各部署から連絡が入る。


「こちらCIC、火器管制及び全システム異状なく起動完了! オールグリーン」

「こちら魚雷管制室です! システム関係異状なく起動完了です」

「こちら武御雷神の矛管制室、異状なく起動完了! その気になればいつでも」

「こちら飛行科、晴嵐異状なし!」


 こうして各区域全部から異状なしとの連絡が入ると日下はドックに注水を命じる。


 ドックの外にいる係員に合図を送るとドックに水が濁流となって流れ込んでくる。

「満水まで5分です!」


 日下はもう一度、外部カメラモニターでドックを見るとこの要塞に入った時に案内してくれた人が笑みを浮かべて見送ってくれている。


「有難うございます、お世話になりました」


 モニターに向かって日下が敬礼すると橋本以下の手が空いている乗員も敬礼する。


 そして……ドック内が満水になり完全に伊400の船体が見えなくなるとガントリーロックが自動的に解除される。


 その拍子に船体が横にゆらゆらと揺れると日下は橋本にこの揺れこそが醍醐味だなというと本当にと返答が返ってくる。


「よし、出航だ! 微速前進」


 伊400はゆっくりと前進して速度5ノットでドックから出ていく。


 そしてドックから完全に出ると要塞外壁に出るトンネルに侵入する。


「要塞外まで10分です」


 そして伊400は要塞の外壁から外に出ると一旦、浮上して要塞を見納めする為に日下達は艦橋甲板に出る。


「相変わらず……でかいですね? まあ、命の洗濯は出来たので満足です」

「うん? そうだな、私も満足だよ」


 二人は笑うと元の世界に戻る為の海底トンネルをくぐるために艦内に入ろうとしたときに一隻の大日本帝国海軍陽炎型の駆逐艦が出現する。


 その船体には“ユキカゼ”と書かれていた。


「富嶽艦長だな? そうか、彼も再び戻るのだな。次に会う時まで壮健なれ」


 日下は“雪風“の方を向きながらそう言うと司令塔の中に入っていきハッチを締める。

 数十秒後、伊400は潜航開始して巨大な船体を海中に隠す。

 巡洋駆逐艦“雪風”艦橋で富嶽艦長は敬礼しながら伊400が潜行していくのを見送りながら次に会うときは共に行動したいですねと心の中で呟く。


♦♦


 そして、伊400は海底トンネルを進み続けると前方に光が見えてくる。

「出口まで3分です」


 そして……きっちり3分後、遂に伊400はトンネルから出たがその瞬間、今まで止まっていた各種時計が一気に秒針を刻み始める。


「戻ってきたのか」


 日下がそう呟いた時に橋本が次元トンネルが消えていきますと言うと日下が後部を映しているモニターを見るとゆっくりと入り口が閉じていき完全に消滅する。


「……又、行けたらいいが見納めかもしれないな」


 そう呟いた時に橋本から“晴嵐”出撃を魔王閣下たちにせかされていますので発艦させましょうか? と聞いてきたので日下は苦笑いしながら了承する。


 浮上して僅か10分で二機の晴嵐が射出されて一気に上昇していき肉眼では見えなくなった。


 艦橋甲板で橋本と見送っていた日下は橋本に現在の日本と米国の状況を説明する。


「現在、仮修復されたパナマ運河を再建された米国海軍艦隊が通過しているとの事だ。無人戦闘機が送ってきた映像を分析すると戦艦10隻・重巡洋艦20隻・軽巡洋艦30隻・駆逐艦50隻の大規模だ」


 日下の言葉に橋本が何かに気付いたようで逆に質問してくるがその内容に日下は頷くと続きを喋る。


「空母が一隻もいない事だが空母を含む機動部隊はサンフランシスコ方面へ向かっているようだ。その機動部隊は陽動で本命はサンティエゴだろうね? 恐らく陸から進軍しているアイゼンハワーと同時に攻撃をする腹だな」


「……大丈夫ですかね? 兵力の差が歴然としていますが?」


 日下は大丈夫だよと太鼓判を押す。

 自信満々の表情を見た橋本も艦長の確信たる勝利を信じることにする。


「まあ、万が一のこともあるから危ない事になりそうならこちらも何か援護すると決めているがね?」

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