第90話:伊400の休息⑥

 日下が要塞を十分に満喫して伊400に帰ってきた時、在塚機関長がやってきて機関部分の修理が終わったと共に出力が50%アップした事を報告してくる。


「ほう、それは凄いな。どれぐらいパワーアップしたのかな?」


「核融合炉点火して1分後には全ての全区域に通電して機関を作動させることが出来ます。速度ですが海上では60ノット・水中で80ノットですが出力120%まで増幅すれば100ノットまで出ます」


 在塚の説明に日下は大いに驚くと共に喜んで彼の労を褒めたが外に出て楽しめたのか? と聞くと在塚は笑いながら大いに楽しみましたと言ってくる。


「機関関係の者達専用のラウンジがあるのですがそこで色々な時代の船の機関関係の方達と知り合いになりお互い技術について語り会いました。勿論、この要塞内のあちこちを観光して充分、楽しみましたのでいつでも出撃できる気持ちです」


 在塚の言葉に日下は笑みを浮かべて頷くとそれではと在塚は再び機関室へ向かっていく。


 それと同時に情報分析科の『杉本哲』少尉がやってきて例のUSBメモリーの解析をしたのですが想像を絶するやばい物が次々と出てきてこれは判断に困って日下の帰還を待っていたのである。


「……そんなにか? よし、橋本君が未だ戻っていないがそこまでの重要な事だったら早く知らなければな」


 そう言うと日下は艦長室に杉本を招き入れて解析内容を報告してくれと言う。


「とんでもない脅威になる物が二つありますが先ずは身の毛がよだつ事から」


 杉本が先ず一つ目の内容を話すと日下は嫌悪感丸出しの表情になり怒る。


「ゾンビ兵隊だと? 死体を掘り起こしてそこに特殊装置をつけると自由自在に操ることが出来て新鮮な程、長持ちする……」


「はい、既に三十万のゾンビ兵がいると記されています。腐乱死体でも使用できるという事です。ちなみにそのゾンビ兵隊を作っているのがSSゲシュタポ所属の『エルヴィン・ローハス』博士でしかも昭和・平成時代に知ったあの悪名高い我が国の731部隊と匹敵する残虐非道な実験をしているとの事です。尚、その博士は731部隊の石井四郎とも交流があるようです」


 杉本の説明に日下はこの事を東條英機に連絡して、しかるべき措置を取ってもらった方がいいなと思うと共にもし、東條が難色を示せばこちらから長距離巡航ミサイルか晴嵐で731部隊全てを抹殺してもいいなと心の中で思う。


 勿論、エルヴィン・ローハスも含めて。


「……やれやれだな。しかしそのゾンビ兵は科学的に作っているのか? それとも黒魔術等の儀式をも含めてか? それについては記されているか?」


 日下の質問に杉本は何か黒魔術の儀式を導入していると記されていますと答える。


 杉本の回答に日下は少し思案していたが何か思いついたように手で柏をうつ。


「伊勢神宮の祭主様にお願いして熊野権現、いわゆる熊野大社に伝わる秘蔵中の秘蔵である破邪の清水を授与してもらえるよう働きかけてみるかな? 遥か太古から、邪悪な物には神聖な物と決まっているからね?」


 日下の言葉に杉本は笑みを浮かべて同意すると次の案件に移る。

 その内容を聞いた日下はこれが一番、大変な事だなと断言する。


「1000ギガトン水爆爆弾だと!? しかも大きさが広島原爆に使用されたリトル・ボーイと同じだと?」


 日下も杉本も暫く絶句するがやっと杉本が口を開く。


「仮にですが……高度1000メートルで東京上空で爆発すれば沖縄を除く日本本土全てが更地になり関東圏内は巨大なクレーターが出来るかと……」


「元の世界軸に戻ったら極東方面に向かうドイツの航空機を随時監視して日本本土に近づく機があれば問答無用に撃ち落とすしかないな。長距離レールガンを使えば突然の事故と出来るな」


 日下の言葉に杉本も頷くと他に解析した全てのデータを艦長専用のフォルダーに転送しましたので閲覧をお願いしますと言い、艦長室を出ていく。


 暫くの間、日下はじっと先程の二項目の事を考えていて絶対に阻止しなければいけないと改めて誓うと改めて解析されたデータを見る。


 人通り見終わった時に艦長室の扉がノックされたのでどうぞと言うと橋本先任将校が入ってくると只今、帰艦しましたと報告する。


 日下が楽しめたか? と聞くと橋本も大きく返事をして頷く。


「本当にここが日本本土ではないかと勘違いする日々でしたよ。ちなみにこの要塞に存在する神社を全て拝観する旅に出て大いに色々な事を吸収できました」


 橋本の行動に日下は吃驚して流石だなと言うと彼も引き寄せられるようにあちこちと拝観しましたとの事。


「……さて、現在70名の乗員が帰ってきたのだが未だ5名の乗員が戻ってこない。まあ、時間の概念がないからいつまでも待つがここに残ると言う連絡がないからまあ戻ってくると思うが」


 日下の言葉に橋本もきっと誰も離脱しないで再び元の世界に戻ると信じていますと言うと日下も無言で頷く。


「さて、司令塔に行こうか」


 二人揃って艦長室を出て司令塔へ向かっていく。


 それから残りの乗員も戻ってきて再び全員が揃ったのを機に乗員達を甲板に集めて答える。


「これより休息は終わって我々は再び戦場に戻る!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る