第70話:新たな展開へ!

 米独軍事同盟の方は伊400にも伝わり急遽、日下艦長の主催で食堂にて幹部会議が開かれることになり橋本先任将校・在塚機関長・西島航海長等6人が集まる。


「さて、皆も聞いた通りだが米独が軍事同盟になったがこの展開は初めてだが何か意見があるか?」


 日下の質問に早速、橋本が手を上げてこの同盟で一番得をするのがヒトラーでユダヤ資本がナチスに流れこむのではという意見が出る。


 他にも原子爆弾の完成が早くなりやばいのでは? 等色々と意見が出るが日下は全ての意見に同意する。


「この米独の同盟で日本は非常に苦境に立たされることになるかもしれない。ドイツのUボートが全隻、インド洋や東シナ海・南シナ海に進出して通商破壊行動に出るだろうが残念なことに日本海軍・陸軍とも海上輸送の事を軽視していると思う」


「艦長、“いせ”“しらね”に対潜行動を厳密として対策するように言ってみては? 勿論、彼らは優秀なので心配はしていませんが何しろ、物量作戦でくれば持っている対潜兵器も直ぐに底をつくでしょうから?」


 橋本の言葉に日下も頷いて一度、山本長官を通じて補給線の確保と日本本土内にいる全艦艇でUボートによる通商破壊に備えるように進言しようと決まった時に血相を変えた通信員が飛び込んでくる。


「何事だ!? 余程の事か?」


 西島の怒声に通信員が頷くと紙を日下に渡すと日下はそれを読むと表情が険しくなって黙り込む。


「いかがしましたか? 何か米本土か日本国内で問題が?」


 橋本の問いに日下は首を横に振ると電文を橋本に渡す。

 橋本たちがそれを見ると息を呑む。


「これは……果たし状……ですね? たった一行ですが奴で間違いないですね?」

 その文面には一行でこう書かれている。


“” 伊400艦長に告ぐ! 北極海にて待つ! ライプチヒより“”


「……いかがしますか? 無視することも出来ますが? 恐らく罠を張っているかと?」


「いや、奴とは決着をつけなければいけない! これ以上、ちょろちょろしていれば戦局にも響くからな? 海中にての潜水艦同士の戦いだな、何十年ぶりになるか」


 日下の決断にて伊400は北極海に向かう事に決定するがその前に特殊通信で無事にサンティエゴに到着した樋口季一郎や南雲忠一と山本五十六に暫くの間、援助は出来ないが“晴嵐”の援護で情報は逐一供与できるのでそれに対処してほしいと一方的に送る。


 この特殊無線は無事に三方に届くと共に樋口には別の通信を送ったのである。


「この内容って……日本列島改造論……についてですか?」

 橋本の言葉に日下は頷く。


「東條閣下にこれを進展して日本のこれからの道を模索してほしいと思ってね? 私がいた世界でもそれを実行したカリスマの人物がいたのだが彼を用いれば東條閣下とのコラボで凄い日本になると思う」


「……田中角栄……今太閤と呼ばれた人ですね? 成程、確かにあの人たらしとカミソリの異名を持つ独特の人物が組めば想像もつかないですが強くて立派な国が出来るかもしれませんね?」


 こうして日下は色々と対策をうって一路、北極海に針路を取ることになったが果たしてどう戦局が動くかは誰にもわからない。


♦♦


 サンフランシスコ湾に停泊している連合艦隊旗艦戦艦“武蔵”司令官室内にて山本五十六聯合艦隊司令長官は日下から持たされた通信文を見ながら物思いに老けながらも一人で将棋を指していた。


「……補給線の確保か、確かにそれは重大だな。別世界では私は昭和18年に戦死したがそれ以降、日本は資源を国内に送り込むことが出来なくなりじり貧になったと聞いているがその対象が米国からドイツに変わる事か、しかもUボートを千隻以上保有していると聞く。対策が必要だがどうする?」


 山本は将棋の盤面を見ながら飛車と角を見ると一つの案が浮かんできた。


「先ずは……あの海上自衛隊の“いせ”“しらね”が持つ対潜能力を利用してあらかじめ遠方にいるUボートを発見してもらって駆逐艦による爆雷攻撃で沈めるのが一番だな、位置を特定していれば遥かに楽になるし後、航空機による攻撃も有効だったと聞いている。しかし……海軍軍令部や海軍省が賛成してくれるかどうかだな? 米内さん達は確かに優秀だが全体的な事は見えていないと思う」


 山本は一晩、対策を考えて翌日、軽巡洋艦5隻と駆逐艦10隻を本土に帰還させると決定してその他に自分が考えた案を海軍軍令部に送ることにする。


「まあ、この案は恐らく通るだろう。日本国内での私の人気を無視できないであろうからな?」


 事実、この時点で山本五十六の人気は日本国内で絶大な人気を誇っており、彼がすることに間違いはないと市井が一致している。


 海軍軍令部内や海軍省もこれらの人気に無視できない有様で米本土から色々と注文を付けている山本に難色を示しながらも仕方なくそれを実行しているのである。


 数日かけて山本が考えた案が実行された時、サンティエゴ方面にて米国陸軍による反攻作戦が開始されて樋口大将の指揮の下、栗林・牛島師団による防衛戦が開始されたのである。

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