第71話:防衛戦前夜
昭和17年12月クリスマスが過ぎて後、二日後に新年を迎えようとしている師走に、無事にサンティエゴ基地に到着した『樋口季一郎』大将を迎えた牛島・栗林両中将と南雲中将は無事な再会を喜び固い握手をする。
「樋口司令官、吃驚しましたよ? 五航戦から全機護衛に出そうと準備していたら山本長官経由で陸海合わせて140機が護衛していると聞いてたまげました。勿論、石原閣下と同じ事にならないようにとの事ですね」
「ええ、最早……この身は私だけの一存で好きにできるわけではありませんからね? 石原閣下から後を頼むと言われたからにはどんな事をしてでも自分の身を大切にしないと決意しましたからね」
樋口の言葉に牛島たちも頷くと早速、この海軍基地一帯の防衛状況を説明する。
「石原閣下が密かに最優先でこちらに軍需物資を送るように手配して頂いたお陰で短期間で防御陣地を築くことが出来ました」
牛島・栗林そして南雲中将を先頭にして防御陣地を案内して一つ一つ丁寧に説明していく。
樋口も実際に防御陣地を見て目を見張る。
「流石は硫黄島・沖縄で鬼神の如く暴れまわった両閣下の賜物ですね? 確かにこれなら十分に対処できるでしょう。まさかこれが防衛用として設置できたことはとても大きい!」
「記録で読んだ硫黄島や沖縄での戦いは物資が欠乏している最悪な状況下での防衛戦でしたので潤沢な物資があるなら理想通り出来るものです。本当に『石原莞爾』元帥様様です」
栗林の言葉に牛島と南雲も頷く。
それから南雲が率いている機動部隊での運用方法を説明する。
「戦艦“大和”の活躍がまだまだ見れるのか! それはそうと明日は大晦日で明後日は正月だな。本当なら大々的に正月を祝いたいが石原閣下がお亡くなりになったので自粛しようと思っている。まあ、海軍の方は指揮系統が違うのでそちらの判断に任せるが」
樋口の言葉に南雲は山本長官から指示が来ると思いますのでそれに従うまでですと言うと“瑞鶴”に戻るために迎えの車に乗り込む。
「基地防衛には我が艦隊も全面的に協力しますので頼りにしてください」
そういうと南雲を乗せた車は樋口たちから遠ざかっていく。
車が見えなくなったのを見計らって樋口は牛島達に司令部へ戻って近いうちに攻めてくる米軍に対する会議をしようと言い迎えに来ていた車に乗り込む。
♦♦
その頃、メキシコ領“ティファナ”とカリフォルニア州との国境付近に密かに米国陸軍3個師団が集結していた。
シャーマンを始めとする最新鋭戦車のみで編成された戦車大隊と砲兵部隊・機械化師団が作戦開始の合図を待っていた。
ティファナに司令部を置いている『ケルマン・バイエン』陸軍大将がサンティエゴ方面の地図を開けて最終チェックを幕僚たちとしていた。
「何をとち狂ったか極東のちっぽけな黄色い猿の国の猿達がどんな猿知恵を使って米国第二の規模を誇る海軍基地を占領したかは分らんがこの俺様が出て来たからにはイエローモンキー如きに負けんわ! 猿共の皮をはいで剝製にしてやるわ!」
勇ましいバイエンの言葉に皆がワッと歓声を上げる。
バイエン率いる師団の殆どは楽観していてサンフランシスコ等が陥落したと言っても腑抜けた我が軍が獰猛な猿に恐怖を覚えて逃げたと信じているのである。
「閣下、アイゼンハワー元帥からの指示ですがあくまでも強硬偵察攻撃である故、奥深く進撃しないようにとの事です」
アイゼンハワーの命令書を受け取ったバイエンはその命令書で鼻をかんでクシャクシャにして捨てる。
「アイクは何を恐れているのだ? 野蛮な黄色い猿の軍団に? まあいい、出撃は明朝0500時だ! 一日で奪回するぞ」
翌朝の現地時間12月31日午前7時、バイエン率いる3個師団が出撃する。
1000両は超える各戦闘車両がエンジンを轟々と鳴らしながら動いていく。
♦♦
このバイエン率いる師団の動きは伊400がきっちりと把握していて無人戦闘機“晴嵐”によって監視されていたのである。
「よりによって北極に行く前に米帝が動くとはね……? だけど、栗林・牛島両中将が築いた重防御陣地なら突破することは不可能だな」
“晴嵐”から送られてくる鮮明な上空からの写真を分析しながら日下は感心した表情をしながら映像と写真を見ていた。
「艦長、山本長官から入電しました!」
日下は電文を受け取ると目を通して全て読み終わるとそれを橋本に渡す。
橋本もそれを読んで頷く。
「東シナ海を始めとする哨戒任務に当たっている護衛艦“いせ”“しらね”が持つ凄まじい性能の対潜能力に加えて新造空母“雲龍”“葛城”で編成された第7航戦と艦上攻撃機“天山”“彗星”“流星”を使用して対潜攻撃にも使用する……いいですね、この作戦は。上空から見るとはっきりと潜水艦が丸わかりですからね?」
「ああ、しかも99式艦爆・97式艦攻の後継機だからな。後、本土に残っている軽巡と駆逐艦を総動員してUボート対策を取ると」
日下は山本長官にこの内容について日の打ち所がなく素晴らしいと返電を送る。
そして伊400は行動に移る。
「では、北極海に針路を取れ! 速攻で奴を葬る」
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