第6部:風雲! 米国本土内主力決戦の幕開け

第68話:米国の思惑

 昭和18年1月1日に全世界に向けられた米国による米独軍事同盟の締結が発表されたとき、米国内では想像を絶する驚愕な出来事と捉えたと同時に米国全土で抗議のデモが吹き荒れる。


 共和党支持基盤である各州ではルーズベルトは直ちに退陣しろ! と半暴動状態になり味方であるはずの民主党内でも反発の声が上がる。


 特に議会を通さずに決定したことについて共和・民主から責められたがルーズベルトのある説明に再び驚愕する。


 それはナチスに全ユダヤ人迫害を取りやめて解放させることを条件としたことやユダヤ人にパレスチナと呼ばれるユダヤ民族にとって聖地の聖地となる土地をナチスと共同として援助することを確約させたことを力強く言う。


反対勢力の攻撃を巧妙にかわしながらルーズベルトは米国内及び世界中のユダヤ組織から色々な援助を受けて国内の兵器産業の振興や原子爆弾開発のスピードがあげられる。


「すると……原子爆弾の初実験は月日を早めて1943年、つまり今年の冬頃に出来るという事だな?」


 ホワイトハウス内にてルーズベルトは原爆の父オッペンハイマー博士を含む人物たちに確認すると一人の老齢の博士が頷く。


「はい、これも大統領があの悪魔であるヒトラーを説得して全ユダヤ人を解放していただけるだけでもなく我らユダヤ人の故郷である地も用意してくれるとは大変、ありがたいです」


彼の言葉にルーズベルトは満足そうに頷く。


「貴方は確かアインシュタイン博士でしたか?」


「はい、大統領! この老いぼれ、非常に感激しました! これからアメリカの為に私が持てる全ての知識を差し上げます」


「頼みますよ、博士? ヒトラーとの同盟も永久ではない、あの悪魔は世界平和のためにも抹殺しなければいけない存在でそれに追従している極東の国も同じだ」


 ルーズベルトの言葉にオッペンハイマー達も頷いてその例の爆弾はジャップに使用するのですか? と聞くとルーズベルトは頷く。


「そうですか、我ら科学者はその爆弾をどこに使用するかは関係ありません。開発して実戦に使用できるという事のみにしか興味ありませんので」


 それから数十分後、執務室を出たアインシュタイン博士達はホワイトハウスを出て後ろを振り向く。


「あの原爆が正義の為に使われるのは良い事だ! ヒトラーではなく、世界の警察たるアメリカ合衆国こそがナチスとジャップに鉄槌を下す存在だ」


それからアインシュタイン博士たちは用意された車で再びロスアラモスへ向かっていくのである。


一方、デンバーに戻ってきたアイゼンハワーが戻ってきたと同時にパットン達を始めとする将軍達がやってきて激しく詰め寄る。


「元帥!! ルーズベルトは正気か? あのクソ野郎と同盟を結んでジャップと戦う? この俺は反対だ! ジャップと戦うのは勿論、賛成だがそれ以上にあの髭伍長を抹殺しなければこの世界は地獄になるぞ?」


 パットンの言葉に他の将軍達も頷くがアイアゼンハワーは穏やかな表情をして彼らに話す。


「大統領も永久的に同盟を続けないと断言できる。先ずは極東の端にある日本の軍隊を太平洋に叩き出さなければいけない。そしてハワイを奪還して反対に日本本土へ侵攻して白人にたてついた黄色人種を根絶やしにせねばならない。それまでの間だけだ」


 アイゼンハワーの言葉に未だ納得できない将軍たちもいたが共通していることは米国本土を占領している黄色い猿達を叩き出すという事である為、一時的にヒトラーとの同盟は仕方がないと言う雰囲気になっていったのである。


 それからアイゼンハワーは皆にこれからの作戦の展開を話すと一同、吃驚するがとてもいい作戦だと言う。


その作戦は、これから主力を率いてサンティエゴへ向かい全面決戦を挑むがサンフランシスコを制圧している日本軍は恐らく西海岸防衛のため、内陸に侵攻することはないとの統合作戦本部の見識である。それと海軍も再建された主力艦隊を日本艦隊の倍以上でぶつけるが全てではなく、マゼラン海峡経由で飛び石みたいに太平洋上の日本統治の島々を制圧して最終的に、日本本土へ侵攻するいわゆる二方向侵攻作戦である。


「ちなみにこの作戦は米独共同作業で行う事になり既に欧州からUボート1000隻が派遣されて日本近海で通商破壊にでるという事だ。ドイツ海軍主力戦艦“ビスマルク”を筆頭に太平洋へ出動する予定になっている」


 意気揚々と演説するアイゼンハワーだったが、心の中は良く分からないが得体が知れない不安が沸き起こっていてそれが何かわからないのである。


「……この不安は何だろうか?」

 だが、彼は強引に忘れることにして軍団の移動を命令するのであった。


♦♦


 永世中立国“スイス”の都市のひとつ「ジュネーブ」のホテルの一室にて6人規模の人物たちがテーブルを囲んで座っていた。


「ヒトラーと米国が同盟して日本を叩くと言う事を聞いたが私はそれに関して反対の意見だが君たちはどんな意見なのだ?」


 その6人組の中で最年長とみられる人物の問いに初老の人物が答える。


「確かに米国はヒトラーと手を結んで我らユダヤ民族を解放してくれたがそれは全て目的があってのことだが日本はそれと違って人道的な理由で我らユダヤ民族を救ってくれたのだ」


「その通りだ、私はあわやアウシュビッツに連れて行かれる寸前に杉原千畝氏に命を救われた。私だけではない。本国である外務省から怒られながらも一心不乱にビザを発行してくれた杉原氏には一生、かけても返しきれない恩がある」


「彼だけではない! 時の首相『東條英機』を説得して数百人の我が同胞を救ってくれた『樋口季一郎』大将も忘れてはいけない。日本と言う国はとても優しい気持ちを持つ純情な国民だと私は思っている」


「その日本を叩き潰そうとしているのが米国とナチスだが私は納得できない! それ故、世界中の同胞たちに日本が我ら民族を無償で保護してくれた大恩を忘れてはいけないと叫ぼうではないか」


「それはいい事だ! では早速、これにて解散して日本に助けられた数千人以上の同胞たちの力を借りて日本を救う」

 こうして6人のユダヤ人たちは大恩ある日本に恩を返すために中心となって動き始める。

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