第58話:新編成及び体制
「何? 貴官はこの俺が必要ではないと言うのか?」
サンフランシスコ司令部大会議室内にて新たに米国方面最高司令官になった『樋口季一郎』大将の言葉に阿南中将がギロリと睨むが樋口は落ち着きながら穏やかに理由を述べる。
「こちらにおられるお歴々の方々は元は中国や満州での戦いを主にしていたのですがこの米国の地はアジア大陸とは全く性質の違う土地柄であり戦法等も違いますので体に染みついているアジアでの戦いを経験している重鎮の方々にはこの地での戦いは正直言って不利になると断言できます。それに現在、満州国境では残存ソ連極東軍と関東軍が激突している時ですが将がいない状態で常に本土に援軍を要請している途中です」
そこまで言うと山下中将が阿南中将に樋口大将がそこまで言うのなら従おうではないか、それに陛下直々のお言葉であるからな? 全権を委任すると決まったことだし陛下の意向に逆らう事は出来ないと言うと阿南は渋々と頷くが樋口にそこまで大口をたたくのなら結果を出す事だと言うと樋口は頷く。
それから数日後、樋口は新たな編成人事を作成して本土に送ると共に新旧交代の引継ぎが行われてそれが終わり次第、順次に本土に帰還する事となる。
新たに名将が変更された各師団及び師団長が発表される。
第110師団:『宮崎繁三郎』中将
第111師団:『百武晴吉』中将
第112師団:『一木清道』中将
第113師団:『川口清健』中将
第114師団:『佐藤幸徳』中将
第115師団:『今村 均』中将
第116師団:『牛島 満』中将
第117師団:『栗林忠道』中将
この人事を見た阿南以下の将たちは??? 状態であったが何も言わず順次、本土へ戻っていく。
ちなみに牟田口と冨永は大幅な階級降格の上、強制的に満洲最前線に放り込まれることになった。
東條英機に切り捨てられたことを知った両名は狂乱に陥るがこれは陛下の御意向であると言われると流石に何も言わず満州へ旅立つ。
「普通ならあそこまで屈辱を味わえば潔く腹を切るのが普通だがな? 威勢だけ言い弱虫野郎さ」
陰口を散々言われていたが本人には届いていたか今は分からない。
そして新たに任命された将官たちによる顔合わせが行われることになり一同が大会議室に集合する。
「皆、集まったかな? 牛島・栗林両中将は現在、布哇に駐留しているのでこの席にはいない。私は亡き『石原莞爾』大将閣下の遺言を通じて陛下から直々に大命を賜った『樋口季一郎』です。皆さんは突然、師団長と言う地位に任命されたことについて混乱していると思われますが私の見立てでは勇将とみていますのでこの樋口に命を預けて頂きたい」
堂々たる毅然としている樋口の雰囲気に皆が吞み込まれている。
樋口は壁に貼っている米国西海岸付近の地図の方へ行き説明を始める。
「現在、米軍はコロラド州デンバー市郊外に兵力を集中している。現時点で50個師団が集合しているとの情報があるが未だ続々と集結しているとの事だ。何しろ、米国にとって彼らの本土決戦なのだからな?」
樋口が一旦、言葉を切った時に今村中将が立ち上がり敵の総大将の名はアイゼンハワーという将軍だが有能ですか? と質問してくる。
「アイゼンハワー将軍は人格者でマッカーサーとは全然タイプが違うと言われていて部下にも相当、慕われていると聞く。それに米国陸軍最強と言われている『ジョージ・パットン』中将を始めとする勇将・智将が綺羅星のごとく従えている。例えていうと人材国力では日本が三国志の蜀で米国は魏にあたるな」
「ほう……そこまでの人物ですか! さしずめ樋口閣下は諸葛孔明というわけですね?」
百武中将が世辞でもなく思った通りの言葉を言ったが樋口は首を横に振り諸葛孔明となれば『石原莞爾』閣下と言う。
「まあその話は置いといて大切な事は、今から戦う米国という存在は日本よりも遥かに物量・弾薬・燃料・兵器の生産が早いという事を覚えておくように! 恐らく来年、即ち昭和18年初頭にこのサンフランシスコへ進撃すると確信している。故に貴官たちはサンフランシスコ周辺の都市に重防御陣地を構築して備えてほしい。持ち場の都市は後で発表する」
「閣下、確認ですがこちらからは出撃しないのですね?」
「そうだ、海軍の戦艦等の砲撃圏内及び戦闘機の行動範囲外には出ないことが重要であり厳命である」
樋口は亀のように防御に集中すると共に敵に顔面蒼白になるほどの出血を促して講和をするという事を話す。
「それと……数日後に布哇方面から牛島・栗林両中将の師団と海軍が出撃するとの事で目標はサンティエゴだ」
樋口の言葉に皆が驚愕した表情をしながらもこうもうまくいくのか? という気持ちがある為、佐藤中将が皆の代表で質問する。
「今までの事を聞いていましたがあまりにもうまく事が運び過ぎだと思うのですが? 敵も馬鹿ではないかと?」
樋口もやはりそういう質問も来たかと思いそれに対する答えもきちんと持っていてそれについて答える。
「私もよく知らないが海軍にはとんでもない新造艦があり、常識を外れる程の性能を持つということだ。その証拠に本土からここまで敵の潜水艦による攻撃は一切、受けなかったと思うがそれが答えだ」
樋口は伊400の事を言うわけにはいかなかったので言葉を濁すが皆は確かにと言う表情をしたので解決かなと樋口は思ったのである。
「これより持ち場を発表するので心して聞いてほしい!」
樋口は布哇方面の方を向くと健闘を祈りますと心の中で呟く。
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