第55話:巨星堕ちる。 第4部終了
時を少し巻き戻し……オワフ島“ヒッカム”飛行場改めて“カメハメハ”飛行場から一機の“100式輸送機”と6機の隼が離陸する。
余談であるが布哇を制圧した石原はかつての布哇王国国王であったカメハメハ氏と会談して大東亜共栄圏の一員としていずれは再独立出来るように取り計らう事を約束しますと言っていたのである。
この輸送機は陸軍の中でも主力として輸送等に使用されている優秀な航空機であると共に石原が搭乗するという事で速度は犠牲にしたが防御面を厚くしたのである。
石原の提案でサンフランシスコまで行ければいいとの事で航続距離を最大限まで伸ばす簡単な改造を施して現地まで十分な燃料を積み込む。
当初の立案計画では海軍のゼロ戦全機が護衛として出撃させると南雲が提案したのだが石原は海軍の護衛で来るとは陸軍を舐めているのかと陰口を叩かれると共にこれからの作戦に支障が出るかもしれないから陸軍が誇る隼戦闘機6機に護衛してもらう事を決定する。
「何、心配はいらないさ? サンフランシスコから加藤隼戦闘機隊全機が私を迎えに来てくれるとの事だし付近に機動部隊もいるという事だから心配はいらない」
だが、当のサンフランシスコでは石原が頼んだその命令の内容が中途半端であったのである。
先ず、牟田口中将から陸軍航空隊司令官である富永中将に報告した内容がまさかの平文であったのである。
これは石原が嫌いだからわざとではなくまさか襲われないだろうと言う甘い予測でありそれを受け取った富永だったが石原を護ると言う重大な意味を汲み取らなかった事と芸者遊びに夢中であったため、その命令も忘れてしまったのである。
結局、両名は石原が来るという事を深く考えないでこれから内地へ帰り満州方面に行くことばかりを考えていたのである。
だが、辻政信だけはこの時ばかりは何かやばい予感がすると生まれついての勘が冴えていた。
富永があんな調子だからここは海軍に頼むしかないなと密かに山本五十六を訪ねたが不幸なことに連合艦隊はサンフランシスコ沖合で再編成の為に出払っていて会えなかった。
この時は阿南中将を始めとする各師団長は石原を迎える為に大忙しで色々と行動をしていたのである。
樋口季一郎中将は早くお会いして傘下に入りたいと楽しみにしていた。
だが、直ぐにサンフランシスコで飛び交っている無線の内容におかしいことに気付く。
「何故、暗号文じゃないのだ? 平文ではないか! 敵に傍受されてしまう恐れがあるぞ? しかも護衛機の出発はないのか?」
樋口がそう思った時、既に米軍はその平文を受信して逐一の石原の行動を知る。
「石原莞爾……確か……満州事変の立役者だったな? とても優秀だと聞くが性格が悪いと村八分状態だったと聞くがその石原莞爾が新たな司令官としてこの地にか」
アイゼンハワー元帥は直ぐにその影響をシュミレーションすると共にとても我が軍にとって邪魔な存在になると判断する。
「……暗殺するとしようか! 平文で打っているが謀略等ではなく油断している証拠だな、全く我が軍を舐めている」
早速、ロスアンジェルスを始めとするその周辺の航空基地に連絡して迎撃の命令を下す。
サンフランシスコ周囲の航空基地は正体不明の敵によって壊滅させられていたのでロスアンジェルス方面の空軍基地を選ぶことにする。
ちなみに米軍では“晴嵐”を未確認飛行物体として登録していた。
日下も現時点では、無人戦闘機“晴嵐”もサンフランシスコとロスアンジェルスの距離があまりにも離れているため、重要視していなかったので後回しにしていたのであるが最もその前に加藤隼隊全機が出撃していればアイゼンハワーもこんなことを考えなかったであろうが全ては結果である。
アイゼンハワーの命令は熾烈な内容で弾切れを起こした場合は体当たりしてでも絶対に殺せとの命令を下す。
作戦名“キルキルジャップ”という文字通りの作戦であった。
そして……総勢100機という大編隊で出撃したのである。
♦♦
「おかしいですね? この時間だと加藤隼隊と合流する予定ですが?」
100式輸送機内で参謀が周囲を見渡しながら席上に座っている石原に声を掛けると石原もふむ……と頷くと操縦席に何か連絡が入っているか? と聞くが何にもはいっておりませんと返答が来る。
「(……まさかと思うが牟田口と富永はきちんと己の業務をしたのか? いや、していないな、絶対に……。向こうに着いたら階級剥奪に満州の最前線に飛ばしてやる)」
その時、宗像飛曹長が3時の方角を示しながら大編隊です! 味方に違いありません! と叫ぶ。
石原はその言葉を聞いた時、安堵ではなく戦慄する。
「……まさか敵に知れていた?」
その石原の予想は当たり大編隊が数個に散会していく。
包囲体制を取り一斉に攻撃しようとすることが素人でもわかる事であった。
「何ですか……これは? 米軍機じゃないか!」
宗像は絶叫するがベテランパイロットである故、直ぐに無線で隼に周囲を固めるように通達して決して離れないで敵機を撃墜しろと命令すると同時にSOSを打電する。
石原は敵機がP-38 ライトニングだと認識した時、別世界での並行世界で昭和18年に山本五十六連合艦隊司令長官が戦死したことを思い出す。
その瞬間、石原はこの世界での自分の時はここで終焉するのかと達観する。
外では隼とライトニングの空中戦が行われておりかなりの米軍機を撃墜していたが数の暴力により少しずつ石原機から離されていく。
群がるようにP-38の編隊が100式輸送機を取り囲んで機銃照射を浴びせるが特別に装甲防御を固めた故、中々貫通しなかったが偶然に窓ガラスに命中して割れることを発見した敵は集中して機銃を浴びせる。
そして銃弾が石原の体を貫いていく。
その一発が石原の心臓に命中して貫通する。
意識が薄れる中、石原は走馬灯のごとく色々な事が浮かんでくる。
「……私が死んだとしても樋口を始めとする者達が遺志を継いでくれよう。東條よ、俺は先に逝くが貴様はこの日本を真の平和にする事を頼む……。そして……日下艦長……この世界ではお別れですがいずれ別世界の並行世界でまた、お会いしましょう、その時には……石原莞爾ではなく一介の水兵で伊400乗員の一員となりたいものだ……」
昭和17年も終わりに近づいた日に風雲児『石原莞爾』大将はこの世界から永久に旅立ったのっである……。
100式輸送機はエンジンをやられて体制が崩れて錐もみ状態で海上に落ちていき海面に激突する。
「石原閣下!!」
6機の隼のうち、2機が撃墜されて米軍機も22機が撃墜されたのである。
輸送機がバラバラになったのを確認した敵機は直ぐに機首を翻して去っていく。
残った隼が上空を旋回していて30分後にSOSを受電した第一機動部隊から緊急発艦したゼロ戦110機が現地に到着したが既に遅かったのである。
駆逐艦“島風”が急行して石原の亡骸を回収する。
奇跡的に生き残った宗像がしっかりと護っておいたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます