第42話:戦闘準備!

 この音の正体は、岩本機が操縦する“晴嵐”で胴下・右翼・左翼の下にMOAB爆弾が吊るされており急降下しながら今まさに投下される寸前であった。


 ちなみにMOAB弾とは“全ての爆弾の母”とも呼ばれる大規模爆風爆弾でTNT火薬12トンの威力がありそれが炸裂した時の破壊力は半径1.6キロ圏内の構造物は根こそぎ破壊されて後は更地にしてしまうほどの強力な爆弾である。


 急降下する“晴嵐”操縦席では岩本が滑走路のど真ん中に照準を合わせると投下スイッチを押すと同時に急上昇する。


 一発のMOAB弾が投下されて地上から僅か1.8メートルの高さで爆発する。


 爆発した起点から生じた爆風は円を描くように広がっていく。

 滑走路に並べられていた航空機は塵が舞うように軽々と吹き飛ばされて粉々になり管制塔も根こそぎ吹き飛ばされてコンクリートで固められた掩体壕をも木っ端微塵になるがそこにいたありとあらゆる人々の身体は無残に千切れ飛んで一瞬のうちに命を狩られていく。


 爆風が収まり視界が良好になった時、広大な更地と化していて生命の欠片は少しもなかったのである。


 “メアリービルズ”空軍基地は地図上から更地となって消滅したのである。


「よし、一段階は終了だな。これで少しは楽になるだろう」

 岩本は操縦席でそう呟くと再び上空で周辺を監視することにする。


♦♦


 その頃、サンフランシスコ沖合60キロ沖に迫った日本軍は、船団を護る為に直掩機を出撃することを決定する。


各空母から発艦したゼロ戦隊は艦隊の上空を護る為、見張りを厳としていてその真下の海上には戦艦“武蔵”“長門”“陸奥”“金剛”“榛名”“伊勢”“日向”の7隻及び、重巡洋艦“高雄”“鳥海”“摩耶”“足柄”“妙高”の5隻と駆逐艦10隻が機動部隊から分離してサンフランシスコ方面へ向かっていく。


「長官自ら出撃とは……思い切ったことをしますね?」


 旗艦“武蔵”艦橋内で双眼鏡を手にして海面を見ていた山本五十六連合艦隊司令長官に変人参謀と言われている『黒島亀人』主席参謀長が声を掛ける。


 山本は双眼鏡を降ろすと思案に老けた表情で黒島に言う。


「私は駐在武官として米国へ赴任したことがあってそこで米国の常識外れた国力を見てこれは絶対に戦ってはいけないと誓ったものだが……予想の斜め上の事が立て続けに起こったからね? 我が国を護る守護神が出現したのだ」


 山本と黒島が話している間、戦艦を始めとする艦砲射撃艦隊は速度25ノットで目標へ向かっていく。


「偵察機の報告によれば上陸地点に当たるオーシャンビーチを周辺とする内陸部には重砲を始めとする強力な戦車部隊と強固な陣地が築かれていると聞いたが?」


 “武蔵”艦橋内で山本は参謀たちとサンフランシスコ周辺の地図を確認しながら最終確認をする。


「ええ、先ずはそこを艦砲射撃で徹底的に叩き潰して上陸地点の確保をしますが艦砲射撃の目標の一つに橋を破壊する任務があります。特に太平洋とゴールデン海峡に掛かる“金門橋”を破壊しなければいけません」


 黒島が指揮棒で金門橋の場所を示す。


「サンフランシスコを代表する橋だな、これは巡洋艦で対処すればいいだろう。陸軍さんを無事に上陸させるためには徹底的に叩き潰さなければいけない」


「しかし……鬼畜米帝といえど一般市民も巻き込むことには抵抗あるが……」


「いや、それは考慮に入れなくてもよかろう? 知っているか? 米国人をはじめとする白人はアジアを含めて黄色い猿の下等人種と蔑んでいるというではないか! その黄色い猿の恐ろしさをヤンキー魂に教え込んだらいいと私は思っている」


 色々な意見が出て紛糾していたが山本がパンと手を打ったら一瞬で静寂になり山本の方を見る。


「私は当初、早期講和を念頭に入れて米国と開戦することを決意したが最終目的は早期講和を目指したいと思っている。これは石原大将も同じ意見だがボタンの掛間違いでもはや、先が見えない戦いに突入すると私は確信している。故に長期戦を見越して行動しなければいけない故、皆もそれを念頭に行動するように」


 山本の言葉に皆が敬礼すると見張り員から伝声管を通じて報告が入る。

「水平線上にサンフランシスコが見えます!」


♦♦


 一方、サンフランシスコを守備する第12軍は司令部をダンビルとして司令官『アーノルド・クロウド』大将が命令を受けて駐留していた。


 そのアーノルド大将の下に急報が届きその内容に??? の状態になる。


「はあ? メアリービルズ空軍基地と通信が出来ない? 通信の途中で中断となってそのままの状態? 意味が分からん!」


「はい、ですので何か異変があったと判断して急遽、救助チームを派遣しているとの事で間もなくわかるかと?」


 それから間髪入れずに真っ青な表情をした参謀が飛び込むように執務室に入ってくるとはあはあと息を整えながら話す。


「……メアリービルズ空軍基地が消滅?」


「は……はい! 正確に言えば更地と化して構造物が一切、見当たらなく粉々に破壊されたようです」


「馬鹿な! あそこには400機以上の戦力があったのだぞ? そこの援護がなければ空からの攻撃には対処できない! 原因は何だ?」


 アーノルドの声に参謀はそれほど心配することはないかと言う。

 彼は、所詮は黄色い猿の下等生物相手だからインディアン狩りみたいに楽勝ですと笑うとアーノルドも確かにそうかもなと思いなおす。


「だが、第七騎兵隊のカスター中佐の二の舞にはなりたくないから気は引き締めないといけない」


 そこまで言うと違う伝令兵が駆け込んできてサンフランシスコ沖合に海を覆いつくすほどの大艦隊を発見したと。


「よし! オーシャンビーチにはこれでもかという兵力を配備しているからそこで黄色い猿を反対に海に叩き落して猿の丸焼きをやる!」

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