第18話:パナマ運河破壊作戦
サンティエゴ海軍基地を潰滅させた伊400は水深三百メートルを航行していて太平洋側パナマ運河口付近に達するが何かおかしいことに日下は気付いた。
「……船舶の姿が遥かに少ないな?」
ドローンから送られてくる映像を見ながら日下が呟くと橋本も頷いて今しがたもう一度大西洋方面まで向かわせて運河や中継点になる湖の様子も確認した方がいいと言うと日下も頷く。
早速、ドローンを展開しようと思った時に西島航海長が困った顔をしてやってきてそろそろドローンのメンテが必要な時期だと言ってくる。
「……そうか、もうそんな年月が経っているのか、確か前のメンテから五十年経っていたのだな」
日下の言葉に西島も頷くとそこに岩本とルーデルがやってきて俺達の出番では? と言ってきたので日下はそれもそうだなと頷くと直ちに浮上して晴嵐を射出することにする。
二人は口笛を吹きながら格納庫へ向かって行く。
「よし、ベント弁開放! 浮上開始」
伊400はゆっくり浮上しながら周囲に航空機や船舶が無い事を確認する。
完全に浮上した時に格納庫扉がゆっくりと自動的に開かれると直ぐに主翼を畳んだ晴嵐が射出機レールに乗せられて出て来る。
主翼が完全に開くと岩本大尉がはりきって操縦席に座り込む。
「いつでもOK!」
親指を立てて射出要員に知らせると彼も親指を立てて了解する。
射出要員が発射ボタンを押すとカタパルトから轟音を上げて打ち出される。
それから十秒後、ルーデルの愛機である晴嵐が出てきて彼もそれに乗ると直ぐにカタパルトから射出される。
その後、無線誘導の無人“晴嵐”が打ち出される。
それから伊400は再びゆっくりと潜航していく。
晴嵐三機は胴下にMOAB弾を積んでいて一発で関門の周辺を木っ端微塵に更地にする爆弾である。
晴嵐三機の内、無線誘導機はパナマ運河周辺を偵察しに行く。
パナマ運河全域は岩本とルーデル二機が行動に出る。
「閣下、確かに船舶の存在は皆無状態ですね? 閑古鳥でよくよくみれば運河で働く作業員の姿も殆どいませんね?」
「……確かにそうだな、放棄したと言ってもいいな」
「艦に問い合わせてみるか」
岩本の報告に伊400では日下が成程と呟く。
橋本がどうしたのですか? と聞くと日下は俺達が先日のサンティエゴ攻撃で米国大統領かその側近がパナマ運河攻撃があるのでは? と考えたに違いないというと他の乗員達も成程と頷く。
「艦長、無人“晴嵐”からの映像ですがやはり付近の航空基地には飛行機が駐機していないばかりか人の気配も無しという事です」
「う~ん……解せんな! いくら先程のサンティエゴ攻撃が派手だったかもしれないがここまで徹底的に放棄する事はないのだが……?」
橋本はとにかくパナマ運河を破壊するのですか? と聞くと日下は頷く。
「例え、無人だろうとこのまま放っておけば戻ってくるだろう。それよりも破壊できる時に破壊するのが正解だ」
日下の言葉に橋本は岩本と閣下に攻撃命令を出すと晴嵐から威勢のいい返事が返ってくる。
「奴さん達、やる気満々だな! ま、それでいい」
パナマ運河は三つの関門から構成されていて“ミラフローレス関門”“ペドロ・ミゲル関門”“ガトゥン関門”である。
晴嵐三機はそれぞれ分散して岩本は“ミラフローレス関門”へ向かう。
ルーデル閣下は“ペドロ・ミゲル関門”無線誘導の晴嵐は“ガトゥン関門”である。
三機はあっという間に各関門の上空に到達するとMOAB投下の解除システムを操作する。
「こちら岩本、準備完了!」
「こちらルーデル、準備完了!」
日下はその言葉を聞くと頷いてカウント五秒後に投下だと命令すると二人から了解と返事が来る。
五秒後、三機の晴嵐からMOAB弾が投下される。
関門から僅か一メートルの高さで爆発する。
炸裂と同時に巨大な圧力が関門に直撃して木端微塵になると共に運河の底を抉るように破壊する。
三つの関門は見事、粉々に粉砕されるとともに周囲数百メートルは完全に更地になり水路が無くなったため、行き場を失った大量の水が洪水を引き起こす。
晴嵐から送られてくる映像を見た日下達はパナマ運河は文字通り木端微塵になり再建となると一から設計し直さなければいけない程、破壊し尽くされる。
「まさか撤退命令を出した米国もここまで破壊されるとは予想もしていないでしょう! 数年間は、パナマ運河を使用できないと思います」
「……どうかな? 米国の力は呆れるほど無茶苦茶だから数年もかからないかもしれないが最低、一年から二年は大丈夫だと思う。大西洋艦隊も南米のマゼラン海峡を通過するかグリーンランドを大回りして北太平洋に出るか二つに一つだがかなりの時間がかかるだろうから日本にとって最高のプレゼントだと思う」
この報告は直ちに布哇駐留総司令官『石原莞爾』大将の下に送られると共に米国太平洋岸二番目に大きいサンティエゴ海軍基地とパナマ運河を破壊した事を伝えると石原は何度も頷いて礼を言う。
この情報は早速、本国と山本長官に伝えると言う。
「これでかなりの準備時間が我らに与えられたぞ! 来年六月には海を覆いつくす程の大船団でサンティエゴ及びロスアンジェルスを制圧する」
石原は広大な西海岸全ての都市に上陸する事は一切、考えていなくそれは山本も一緒であるがそううまくいかないのが世の常である。
問題は日本本土で発生する。
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