第14話:大魔王ルーズベルト大統領の憤怒

 昭和十六年十二月二十日、広島湾呉軍港から山本五十六連合艦隊司令長官率いる連合艦隊が抜錨する。


 戦艦“長門”“陸奥”“金剛”“榛名”が先頭に立ちゆっくりと桟橋から離れていく。


 引き続き重巡洋艦“最上”“三隈”“鈴谷”“熊野”“足柄”“妙高”“羽黒”“那智”が続き軽巡洋艦“球磨”“天龍”“多摩”“鹿島”・軽空母の“鳳翔”“龍驤”も順次、出港していき駆逐艦二十隻が殿を兼ねる。


 輸送船六隻も一緒であった。

 既に伊号潜水艦と呂号潜水艦十八隻が前もって出撃していたのである。

 戦艦を始めとする全ての艦船には陸軍用の戦車等の兵器を搭載していたのである。


「前代未聞だな、陸軍さんの兵器を海軍で運ぶとは」

 空母“鳳翔”艦橋で『小沢治三郎』少将が艦長である『梅谷薫』大佐に言うと梅谷も苦笑しながら確かにという。


「山本長官も数か月前を切掛けに何か変わられたな? 真珠湾攻撃の計画を一からやり直して布哇諸島を同時に占領するときたものだ」


「ええ、予定していた潜水艦隊を連れて行かずに極秘に就役したという大型潜水艦一隻のみを出撃させましたからね?」


「それにだ、あの石原莞爾という予備役に左遷された将官が急に現役に復帰、しかも陸軍大将ときたものだ。それを聞いた時、唖然としたものだが」


「何でも陛下直々の勅命だそうですが? しかしあの御仁は満州事変を皮切りに鳴かず飛ばずであったはずでしたが? 内閣の東條英機と犬猿の仲だったと聞いていましたが和解したようですね?」


「まあ、陸軍上層部の事は分からないよ、それよりも布哇に到着してからの事を考えないといけないな」


 小沢はそう言うと部屋を出て甲板に昇っていく。

 連合艦隊の主力が突き進むのを見て新たに祖国の為に戦う事を決意する。


♦♦


 ここはアメリカ合衆国首都ワシントンD・C、ホワイトハウス内大統領執務室にて第三十二代大統領『フランクリン・ルーズベルト』が車椅子に座りながら執務机に置かれた分厚い報告書を眺めながら激怒していた。


「何という体たらくだ!! 薄汚れた黄色い猿のジャップにハワイ諸島を奪われたばかりか空母を全て撃沈されて戦艦も撃沈されて事実上、太平洋艦隊が潰滅! しかも無能のキンメルが大した動きも無く重傷ときた! 本国に帰還したら即、予備役に叩き込んで二度と表舞台に立たせない!」


 大統領の怒りに『スチムソン』陸軍総参謀長も頷く。


 彼も日本人を人間として見ておらず黄色い猿という物真似しか出来ない下等動物としか見ていなかったのである。


「本当に嘆かわしいですね? 確認した事ですが英国海軍も黄色い猿の飛行機に最新鋭戦艦と巡洋戦艦が撃沈されたそうです。既にシンガポールも陥落してマッカーサーが立て籠もるコレヒドール要塞も陥落寸前だとですが? フィリピンも落とされそうですね?」

 スチムソンの言葉に増々不機嫌になったルーズベルトだがこれから何をしないといけないかは分かっていて閣僚が揃うのを待っていたのである。


 五分後、続々と入室してきた閣僚を出迎えたルーズベルトは席に着くように言うと全員が着席する。


 副大統領『ハリー・S・トルーマン』・国務長官『コーデル・ハル』・陸軍総参謀長『ヘンリー・スティムソン』・海軍長官『フランク・ノックス』・そしてユダヤ人である『アルベルト・アインシュタイン』博士である。


「早速だが、黄色い猿のジャップの進撃の対策についてだがノックス海軍長官に尋ねるが太平洋艦隊が潰滅してしまい太平洋方面が手薄になったがどんな対策をとるのか聞かせて欲しい」


 大統領の言葉にノックスは立ち上がり計画について述べる。


「先ず、大西洋艦隊に属している空母“ホーネット”“ヨークタウン”“ワスプ”を年内迄にパナマ運河を通過させてサンティエゴ海軍基地に急行させます。クリスマスを過ぎた二十六日にパナマ運河通過予定です。その他に最新鋭戦艦四隻も来年初旬に太平洋に回航予定です」




 ノックスの言葉にルーズベルトは頷くと既に経済界に戦時体制用の生産体制を整えるように命令した事を話す。


「後、一年もすれば三万トン級空母を月に一隻・護衛空母を週に一隻建造できるとの事! しかも新鋭戦闘機も来年の夏ごろにはゼロ戦と言う黄色い猿の飛行機よりも遥かに性能が良い戦闘機が開発されると言う。なのでここ一年は防備を固めると共にオーストラリアや北方海域に艦隊を展開させてジャップの海軍を翻弄させるのだ! 黄色い猿共はもしかすれば西海岸をも狙うかもしれないから哨戒は厳密に実施せよ!」


 それから陸軍長官兼総参謀長のスチムソンが立ちあがり陥落確実のコレヒドール要塞に立て籠もるマッカーサーにはオーストラリアに脱出して戦力を整えるように命令しますと言うとルーズベルトは頷く。


 それから各諸事項について話を終えると最後にアイシュタイン博士に原子爆弾について質問する。


「既にオッペンハイマー博士と共同してマンハッタン計画を始動させておりロスアラモスにて研究を続けています。完成までには後、三年から四年かかりますがナチスよりも早く開発生産するようにします」


 アインシュタインの言葉にルーズベルトは頷くとスチムソンに米国全土の日系人を強制収容所に叩き込むように命令する。


 そして会議は終了して閣僚達が執務室を出ていく。

 一人になったルーズベルトは悪魔の表情で邪悪な笑みを浮かべる。


「この地球上から黄色い猿と言うジャップの存在自体を根絶やしにして滅ぼしてくれるわ! フフフ、ハハハ」


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