第13話:進撃
空母“レキシントン”を撃沈した伊400は再び南下してパナマ運河破壊攻撃に向けて航行していた。
「パナマ運河攻撃日時予定日は十二月二十四日のクリスマスイブに決定した! 米帝に素敵なビッグプレゼントを贈ろうではないか」
毎日の定時朝礼放送で日下艦長は艦内全区画の乗員に向けて喋る。
日下の言葉に艦内各所では笑い声が発生していてお互い顔を見合わせながら頷く。
約十分の朝礼が終了すると日下はマイクを収納すると艦長席に座り橋本先任将校が注いでくれた熱々の玄米茶をゆっくりと味わいながら飲む。
「先日の“レキシントン”撃沈で太平洋上には米空母は一隻もないが日本軍の米本土上陸作戦までもっともっと戦闘力を落とさなくてはいけないが……?」
既に日下の頭の中では色々と考えていたのだが橋本が思っている事も参考にしようと聞いたのであるが橋本は笑みを浮かべながら艦長と一緒の事を考えていると答えると二人同時に喋ることにする。
「サンティエゴ海軍基地を叩く!」
「サンティエゴ海軍基地を潰滅させる!」
二人は大笑いすると一緒の事を考えていたのだなと頷きあう。
日下はサンティエゴ海軍基地沖合で堂々と浮上して日本の攻撃と確認させて壊滅させようと思うのだが? と言うと橋本もそれは大賛成ですと答える。
「日本も私達の活躍を知って士気が爆上げするかと」
「攻撃方法だが……武御雷神の矛(荷電粒子砲)を使用しようと思うのだが?」
日下の言葉に各区画の機器メンテをしていた技術長の吉田が発令所内のメンテをしている時に二人の会話が聞こえたので会話に入ってきて自信満々に答える。
「それはいいですね! ここ数年間、使用していなかったので矛も拗ねているのではありませんか? メンテはバッチリですので今でも使用できますよ?」
吉田の言葉に日下は笑いながら日頃のメンテをしてくれている事にお礼を言う。
橋本もうんうんと頷きながら日下と相槌をうつ。
「サンティエゴは、武御雷神の矛(荷電粒子砲)で攻撃してパナマ運河は“晴嵐”三機で実施するのですね?」
吉田の質問に日下は頷くと岩本大尉とルーデル閣下も早く飛ばせろとウズウズしているだろうからね? というとタイミングよく先の二人が発令所までやって来る。
「艦長、聞きましたよ? サンティエゴは俺達の出番はないのですね? パナマ運河までお預けですか」
「ああ、そういう事になるね? まあしかし、予定は未定だからね? もしかすれば出撃する機会もあるかもしれない」
日下の言葉に二人は仕方ないかという表情をして自分達の用事を済ますと発令所を後にしながら岩本はルーデルに飛行シミュレーションで対戦だと持ち掛けるとルーデルも受けて立とうと言い肩を組合って去って行く。
その姿を見ながら橋本は頼もしい二人ですね、しかし……まさかルーデル閣下と再会するとは夢にも思わなかったですがと言うと日下も頷く。
「まあ縁と言うのは摩訶不思議な物だな、俺達の縁はこの伊400で繋がっているのだろうよ!」
日下はそう言うと橋本に食堂に行って朝食でも食べに行くかと言うと橋本も笑みを浮かべながら頷くと西島航海長に指揮を頼むと言い二人で発令所から出ていく。
♦♦
帝都“東京”皇居内赤坂御殿奥にて今上天皇(裕仁陛下)が菊の御門が刻まれた漆塗りの椅子に座り同じく菊の御門が刻まれた漆塗りの机で書物を読んでいた。
その内容は、伊勢神宮の最高位である祭主より授与された数々の平行世界での日本の行く末を描いた物語形式であった。
特に裕仁陛下は、伊400という想像にも及ばない性能を持つ大型潜水空母の記述について大いに心を震わせていた。
「伊400か、数ある平行世界の一つでは朕はその潜水艦に乗艦して米国との講和条約締結に向かうのか」
伊勢神宮の祭主から聞いた話ではこの日本を守護する高天原の最高神である天照は無数にある平行世界の統治者として君臨しているが全ての世界を見守る事は不可能なので自分の手足となる者を捜し続けていて大日本帝国海軍『日下敏夫』海軍中佐に目を付けたのである。
天照の期待に応えて日下率いる伊400は大活躍を見せて数々の平行世界の日本を助けて来たのである。
その数ある無数の平行世界でも唯一、繋がっている場所があり、そこが伊勢神宮でそこの最高位である祭主が天照の代理人として常駐しているのである。
裕仁陛下は夢中でその書物を読んでいるとトントンとドアを叩く音がして一人の初老の人物が入ってくる。
「おう、木戸侍従長か! こんな夜分にいかがしたかな?」
皇居の中でも一番、忠実に使えてくれている木戸侍従長に顔を向けながら笑みを浮かべると木戸侍従長も頭を下げながら伊勢神宮の祭主様がお目通りを願いたいと来られていますがと言う。
裕仁陛下は少し驚きながらも何か重要な事が起きたのかもしれないと思い直ぐに客室にお通ししてくれと言うと木戸侍従長は頭を下げて退出していく。
「……珍しいな、祭主は常に伊勢神宮にいないといけないのだが……?」
そう思いながらも裕仁陛下は書物を閉じると椅子から立ちあがり部屋を出る。
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