第10話:布哇諸島占領せり! *第一部完*
「何だと!? キンメル艦隊が潰滅してハルゼー中将が戦死!?」
オワフ島司令部では蜂の巣をつついた大騒ぎになっていた。
ヒッカム飛行場を始めとする全布哇諸島に駐留している航空機全機を援軍として送ったにもかかわらず全てが未帰還機となったからである。
「奇襲攻撃で空母から発艦できずにそのまま海の底だと? そして一瞬で二百機以上の大編隊が消滅? 馬鹿な、東洋の黄色い猿にそんな武器があるものか! 恐らくドイツからもたらせた兵器だ」
「それは置いといて今からどうやって防衛するのだ? 海兵隊を始めとする陸軍駐留部隊は僅か二千名程度だぞ?」
正に日本風で言えば小田原評定が続いて時間が経つだけであったが取り敢えず本国には至急、援軍をと伝えてはいるがキンメルを頂点とする主要な幕僚達がいないので指揮系統は混乱の極みであった。
そんな混乱の中、遂に日本軍が出現したのである。
オワフ島全域及び布哇諸島に空襲警報及び避難命令が出される。
それから数分後、南雲機動部隊から飛びだったゼロ戦と九十九式艦爆が爆弾を積んで殺到する。
「いいな! これからはこの基地は俺達が使用するのだ! 滅茶苦茶破壊するなよ? 全機突撃!!」
淵田中佐率いるゼロ戦八十機・艦爆七十八機が急降下していく。
僅かに残っている戦闘機隊が滑走路から離陸しようとしていたがゼロ戦の銃撃の前に蜂の巣になって墜落炎上する。
各陣地から対空砲が激しく発砲する。
「よし、あれを食ってやる!」
村田兵曹長が乗機する九十九式艦爆が急降下していく。
爆弾投下スイッチを押すと胴下にあった八百キロ爆弾が投下されて見事に対空陣地に飛び込んで爆発する。
米兵数人が吹き飛ばされていくのを確認するがそれを喜ぶ暇もなく戦闘空域から離脱していく。
ダイヤモンドヘッド及びワイキチビーチ沖に日本艦艇が出現すると守備隊は悲壮な覚悟をもって対抗する事を誓う。
「己! 黄色い猿の分際で俺達の白人に立ち向かうとは神の恐れを知らぬ蛮族が!」
人種差別こそ神の教えと思っているサントス中佐は守備隊に檄を入れるがその瞬間に戦艦“比叡”の第一斉射になる艦砲射撃によって五体がバラバラに引き裂かれてミンチになってしまう。
それを皮切りに戦艦“比叡”“霧島”重巡“利根”等の主砲を持っている艦船は激しい艦砲射撃を加えて行き諸所の陣地を破壊しまくる。
空母六隻を外してそれ以外の艦船を率いていた南雲中将は、戦艦“比叡”の対空指揮所で双眼鏡を覗きながら見ていた。
「(前世ではこれ以上の艦砲射撃をサイパンで経験した……。しかし戦艦による砲撃は凄まじい物だな、数か月後に竣工する“大和”“武蔵”ならどんな威力になるか? まあそれは米国本土で証明されるな)」
南雲の下に草鹿参謀長と源田航空参謀長がやってきて笑みを浮かべながら南雲に答える。
「南雲司令に報告です! 淵田中佐率いる航空隊は敵の防空防衛を全て破壊したとの事です。間も無く陸軍の輸送船が上陸を展開するとの事です」
南雲は少しだけ首を振ると御苦労さんと言って引き続き双眼鏡でオワフ島を睨むように双眼鏡で見ていた。
報告が終わった草鹿と源田は防空指揮所から出る時に長官は変わったなと言うと源田も頷く。
「今の司令官なら喜んで付いていくな」
二人はそれぞれ頷く。
♦♦
同時刻、輸送船から二等輸送船に乗り換えた兵員たちが寿司詰めで乗船していた。
その中に樋口中将も乗船していた。
「いいな、お前達! 先陣という名誉な任務を石原閣下から与えられたのだ! 俺達第三軍がオワフ島に足を入れる事だ! 気合を入れていくぞ!」
樋口の激励に全員が歓声を上げる。
「もう、船の生活はこりごりだ! 思いきり暴れてやるぜ!!」
「俺の曽祖父は確か布哇に移民した筈だが……おじさん達、いるのかな?」
皆が口々に元気な声で会話している。
そうこうしている内に輸送艦が出発して上陸地点に向かって行く。
だが、浜辺や岸から一発の砲弾も機関砲も撃ってこないので反対に不気味な雰囲気になっていた。
答え合わせをすれば最早、米軍の防衛部隊は壊滅しており反撃も出来ずに市内へ撤退していたのである。
樋口中将率いる第三軍が上陸した後、続いて牛島中将率いる第五軍が上陸してくる。
そして栗林中将の第六軍が上陸した時、上空に日本艦載機の編隊が円を描いて祝福をしてくれていたのである。
皆が上空に手を振っている間にやっと総司令官『石原莞爾』大将が上陸してくる。
「全軍に告ぐ!! 略奪及び婦女子に対する暴行等は厳禁だ! 見つけ次第、即射殺するので気を引き締めていけ! 名誉ある皇軍の名を汚すな!」
石原の気合が入った怒号と怒声に全軍が気を引き締める。
前世では何とか日本は滅亡を免れて反対に発展する事に成功したが日下艦長や有泉一等海佐がいた日本では戦争に大敗して日本国民の気質は徹底的に破壊されて自虐史観を植え付けられたと言う。
その中でも南京大虐殺と言ういわれのない汚名を着せられてそれが日本国民に深く浸透していたという。
「勝てば官軍、負ければ賊軍……か。負ければその国の歴史は破壊されて勝利国の都合のいい世界に塗り替えられるのだ。そんな世界にさせてたまるか!」
石原は改めてこの戦いが敗北にならないように決意したのである。
日本軍の進撃を止める者はいなく各飛行場及び海軍施設、工廠や莫大な重油タンクが無傷で手に入ったのである。
勿論、米軍は破壊しようとしたがそれ以上に日本の艦砲射撃の威力が凄すぎて戦意消失して撤退したのであった。
昭和十六年十二月九日、旧太平洋艦隊司令部の屋上に星条旗が降ろされて代わりに日章旗が翻ったのである。
「\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/万歳!」
オワフ島占領セリ! この出来事が後にどう動くかは神のみぞ知る。
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