第二部:風雲、米国太平洋艦隊の殲滅戦!

第11話:新たなる潮流

「大本営発表! 大本営発表! 臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます。大本営陸海軍部、十二月十日午前六時発表。帝国陸海軍は今週未明、西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり! アメリカ陸海軍を撃破して帝国陸海軍はオワフ島を占領セリ!」


 この放送で日本全土は大歓声と共に各地で盛大なお祭りが実施されたのである。


 しかも放送では帝国海軍の英雄となった『南雲忠一』中将や帝国陸軍『石原莞爾』大将の名が大規模に発表される。


 特に『石原莞爾』の名は満洲事変を鮮やかに実施した功績が再び表に出て日本国民の殆どが英雄と呼び讃えたのである。


 勿論、石原を嫌悪している将は沢山いて、その中でも陸軍省のお偉いさん達には全く面白くない状況でありその中でも『杉山元』陸軍総参謀長は眉を潜めて会議参加者に愚痴をこぼす。


「あの陸軍の異端児が英雄だという事だが世も末だな」


「しかし……予備役に放り込んでいた奴が急に電撃的に現場復帰すると同時に大将の階級になるとは……」


「裕仁陛下自らが聖断してお決めになられたという事だから到底、私達には手も足も出ない」


「しかし……オワフ島占領か! 奴はこのまま米国本土まで行くという事だが? 気が触れているとしか言えない!」


「解せんのが東條陸軍大臣の行動だ。奴とは犬猿の仲だった筈だが今回の作戦立案を全て石原に任せたという事だ。勿論、人事もだが? しかも師団長に選んだのが後方を主にしている者達だ。山下や牟田口等といった一線級の将官を選ばなかった事だ」


「一番訳が分からないのが海軍の行動だよ。信じられない事だが布哇に駐留している石原の元へ重火器を始めとする戦車等を海軍が直々に運ぶとの事だ。しかも戦艦や空母と言った大型艦に続々と搭載しているとの事」


「海軍省にも問い合わせたが嶋田大臣は、視線を遠くに見ながら山本の迫力には逆らえなかったと言っていた」


「米豪分断作戦は延期となり北方攻略も延期になり南方の積極的攻勢も頓挫だ」


「米本土上陸か、夢物語ではないか! まあいい、失敗するのは確実だからその時こそ、二度と表舞台に出てこれないようにしてやるだけさ」


 所謂、嫉妬と妬みの嵐であるが彼らは石原や山本の背後にいる伊400の事は全く知らないのである。


♦♦


 呉軍港に停泊している連合艦隊旗艦“長門”では『山本五十六』大将が呉軍港に停泊している艦船に戦車や重火器等の積み込みしている作業を眺めていたのである。


「幸先がいいな、インド洋ではイギリス東洋艦隊を撃破したとの事! “レパルス”“プリンス・オブ・ウェールズ”を撃沈とはな、やはりこれからは航空機の時代だ」


 新たに布哇方面へ駐留する為に開戦時と同時にウェーク島を攻略してミッドウェイ島をも占領する事に成功したのである。


 これもハルゼー機動部隊の二隻の空母がウェーク島方面の輸送を取りやめたためであった。


「先ずは布哇諸島を完全に要塞化して永久的な統治をしなければならない。大西洋から出て来るであろう大西洋艦隊も叩き潰さなければいけない。まあ、それに関してはあの潜水空母に任せておけばいいだろう」


 山本は、数か月前に石原と共に伊400に招待されてあまりにもの見たこともない新技術の塊に驚愕したのである。


 それと自分がこのまま行けばどんな最期を遂げるのかも。

 山本はそれを思い出しながら短期決戦で講和に持ち込むことを新たに決意する。

「宣戦布告もきちんと出来たし騙し討ちの汚名が着せられない事は素晴らしい」


 そう山本が色々と考えている時に従兵がやってきて『近藤信竹』中将と『小沢治三郎』中将、それと陸軍の『板垣征四郎』大将がお越しになったと伝えて来たので山本は長官室に通しておいてくれと伝える。


 従兵は敬礼をすると防空指揮所から出ていく。

「さて、石原大将の親友と言われている板垣大将と邂逅するか! それと新たに布哇に駐留する艦隊の編成もしないとな」


♦♦


一方、布哇諸島を占領した日本軍はホノルル市を始めとする各重要施設を占拠して布哇諸島全域に米国本土へ帰還したいものは輸送船を出すから希望してくれと石原の名のもとに公布する。


 しかし、流石の石原も希望人数が凄まじいのを知ると頭を抱えてしまう。


 何しろ訳が分からないのは日系人の大部分が米国本土へ帰還したいと言う。


「だが、彼らの気持ちも分からないものではない。祖国を捨てて新天地で新たな人生を送ると決意して来たのだろうからな」

 結局、石原は順次に輸送船を出して米国に送ることを決定する。


 彼の頭の中では米国本土へ上陸する日時は来年の六月上旬と決めていてそれまで太平洋の米軍を徹底的に叩きつぶす事を考えていた。


「恐らく大本営を始めとする陸軍省も俺の事を頭が狂った者としか映っていないのだろうな、この俺も伊400の存在が無ければこんな無謀な事を考えもしないが」


 石原が一人で苦笑していると樋口・牛島・栗林の三名がやってくる。


「ご報告します、海軍と協力してオワフ島以外の島の制圧を完了いたしました! 抵抗する残存兵力もあり難航しましたが奇跡的に死者は無し! 負傷者百四十二名です」

 三名の報告に石原は満足そうに頷くと二週間後には戦車や重火器が届くので本格的な訓練を実施する事を伝えると三名は頷く。


 報告が終わった三名が退出すると石原は湾内を見る。

 南雲機動部隊の艦船が規律正しく停泊しているのを見て頷く。

「さあ、歴史は変わり大東亜共栄圏の樹立を目指す! 東條もそれを望んでいる


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