第4話 リーヤ
リーヤの部屋には皇帝は毎週のように訪れた。
皇妃の侍女だった時は、皇帝はほとんど皇妃の元へ訪れなかったので、リーヤも驚いた。
長年憧れていた皇帝がくる度に嬉しくて嬉しくてリーヤは幸せだった。
しばらくしてリーヤは妊娠した。
皇帝に出産するまで、絶対に発表しないようにお願いする。
愛おしい彼の方の子供。だけど、妊娠したという事は、皇妃が暗殺者を送ってくるはずだ。
今まで、皇帝の子供を殺す役目を担っていたリーヤはよく分かっていた。
妊娠中に夜うなされるようになる。
何度も、毒をいれ、子供を殺してきた。
それなのに今、私が妊娠している。
こんな私が産んでいいのか?
暗闇の中、目を凝らすと沢山の赤子が暗い目でこちらを見ている。
「助けて、生きたい、助けて、殺さないで、助けて、、」
(ごめんなさい。ごめんなさい。)
リーヤは飛び起きた。
はあ、はあ、はあ
隣で休んでいた皇帝がリーヤに声をかける。
「リーヤ。どうしたのだ。」
ああ、この人はこんなにも優しい。傲慢で、愚かな私にこの子を与えてくれた。資格が無い私を側に置いてくれる。
「何もないです。少し不安で。」
第一王子のお披露目が無事に終わり、黄金眼と、その能力が公開された。
喜びに湧く皇城で、リーヤも安堵していた。
皇妃からの刺客がやってくる気配がない。毒も入れられておらず、息子が無事育った事で、皇妃の気が晴れたのかもしれないと思っていた。
第一王子のお披露目の一ヶ月後、リーヤは皇女を産んだ。
リーヤによく似た赤髪で茶眼の可愛い娘だった。
久しぶりに産まれた子供に皇帝も喜び祝福を与えてるくれた。
リーヤは複雑な気持ちだった。
何人も殺してきた私が、子供を産むなんて思ってもいなかった。
だけど、愛おしそうに娘を見る皇帝を見て、この人の娘は必ず守ろうと決意をした。
娘はイリアと名付けられた。
イリアが産まれて一ヶ月後、皇帝は遠征に旅立っていった。
皇帝が旅立った次の日、突然皇妃が訪ねてきた。
配備されていた護衛や侍女は皇妃の手のものに制圧されている。
リーヤは娘を抱きかかえ、皇妃を見上げる。
「リーヤ、久しぶりね。」
皇妃は、娘を忌々しそうに睨み言う。
「貴方にそっくりね。黄金眼になる可能性がある子を見逃すわけには行かないわ。」
「待ってください。もう王子はお披露目されたでは無いですか。この子は女です。貴方様の息子の脅威にはなりません。」
「そんな事どうでもいいのよ。
本来なら私が黄金眼になるはずだったのよ。なのに、私が得る事ができなかった黄金眼を私の息子以外が得るなんて認められないわ。私以外の女の子供が黄金眼になるなんて耐えれないのよ。」
皇妃は、祖母が元々皇女だった。血筋としては、黄金眼を引き継ぐ可能性は確かに高かったかもしれない。
(そんな事で、、、)
「そうね。でも貴方には何度も世話になったわ。特別に一度は見逃してあげましょう。
すぐに帝国からその娘と共に離れなさい。その娘が大事なら必死で逃げることね。」
そう言うと皇妃は去っていった。
部屋には殺された護衛達と侍女が残る。
(ダメだ。ここにいたら絶対に殺される。
私が幸せになれるはずが無い。何を期待したの。
でも、この子がいる。愛しい彼の方の子供。何があっても逃げきってみせる。)
リーヤは荷物をまとめ、急いで娘を連れて帝都から逃げた。
リーヤが皇城から出るのを見下ろしながら皇女は雇った暗殺者と話をしていた。
「よろしいのですか?リーヤは出発しましたよ。」
「仕方が無いわ。あの人、私に直接釘を刺しにきたの。あの赤子には生存把握の魔法をかけているそうよ。娘が死ねば、今度こそ容赦しないと言われたわ。
でも、相変わらず甘いわ。私がやってきた事なんて知っているでしょうに。よりによってリーヤを孕ますなんて。
実行犯に子供ができたら、もう子供は殺されないとでも思ったのかしら。
生存把握の魔法は帝国内しか分からないはずよ。
リーヤの後をつけて帝国外へ出たところで親子共々殺しなさい。」
「分かりました。」
「ふふふ。リーヤが自分から逃げたならあの人も手の施しようが無いわね。」
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