第四十四話 悠里澪③
「う……っ」
一体何が起きたのか。
また陸は死んだのか。
(たしか背中に痛みを感じて、それで痺れたと思ったら意識を失ったんだ……とりあえず、状況を確認しないと)
などなど。
陸はそんなことを考えたのち、周囲を見回す。
すると見えてくるのは。
見知らぬ部屋。
ただし、普通の部屋ではない。
薄暗く、壁には拷問に使うような怪しげな器具が大量に吊り下げられている。
というか。
(なん、だ……これ!?)
陸の身体は現在、椅子に縛り付けられていた。
いったいどういう状況なのか。
(どう考えてもこれ、死に戻りによるタイムリープじゃない!!)
だって、陸は過去にこんな状況に陥ったことがない。
であるならば、陸はまだ死んでない。
(ってことは、あの『澪による289回告白爆死無限ループ』からは抜け出せた、のか?)
しかし。
どう考えても、楽観視していい状況ではない。
(これ、状況的に俺……気絶させられて、ここまで連れてこられたんだよな?)
要するに拉致監禁だ。
しかも壁につる下がっている拷問器具を見るに、そこに調教も加わる可能性が高い。
(いや、やばい……これ相当やばくないか!?)
誰がこれをやったか知らないが、碌な展開にならないのだけはわかる。
とりあえず今するべきこと一つ。
ガタ。
ガタガタ!
と、陸は全力で暴れまくる。
無論、自らの体を椅子に縛り付けている縄を解くためだ。
けれど当然、そんなことで縄が解けるわけもない。
故に次の行動は——。
「誰か……誰か助けてくれ!」
と、陸は全力で叫ぶ。
犯人がやってくるリスクとか、パニックでそんなもん考えてもいない。
とにかく助かりたい一心で。
「俺はここだ! 誰かいないのか!? 助けて、助けてくれぇえええええええええ!!」
ガタガタ。
ガタガタガタ!
と、陸は椅子の上で大暴れしながら叫びまくる。
すると。
ガタンッ!
勢い余って椅子が倒れてしまう。
となると当然。
「痛ぅ」
縛られている影響で、陸は受け身も取れず椅子ごと横倒しになってしまう。
そこで陸は改めて思う。
(なんで、なんでこうなった? いったい誰が犯人なんだ? 俺はこのあとどうなる——)
バタンッ!
と、陸の思考を断ち切るように聞こえてくるのは、上の方から聞こえてくる扉の音。
次いで聞こえてくるのは。
カツカツ。
カツカツカツン。
階段を降りるような足音だ。
その足音はどんどん陸の方へと近づいてくる。
「……っ」
陸はここでようやく思い至る。
足音の正体は犯人なのではないか。
先ほどの助けを呼ぶ声で、犯人を呼び寄せてしまっのではないか。
カツカツ。
カツカツカツン。
足音はさらに近づいてくる。
もうすぐそこだ。
「……」
陸は無言でこの部屋にある唯一の出入り口——鉄製の扉を見つめる。
はたしてそこから入ってくるのは、犯人なのか助けなのか。
カツカツ。
カツカツカツン。
そんな足音はついに止まる。
間違いない、謎の人物は今扉のすぐ向こうにいる。
などなど。
陸がそんなことを考えたまさにその時。
ガチャ。
と、開かれる扉。
その扉から入ってきたのは。
「っ……澪!?」
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