第三十四話 変態になってみる
そうして現在。
陸は澪を伴って、とある店の前へとやってきていた——その店とは。
「ここが陸の行きたい場所なのか?」
と、ひょこりと首を傾げてくる澪。
陸はそんな彼女へと言う。
「そう。ここは可愛い女の子のフィギュアが、たくさん売ってるんだよ!」
「可愛い女の子の……なに?」
「フィギュアだよ、フィギュア! 中でもこの店は、おっぱいとお尻がムチムチのスケベボディのフィギュアを専門に扱ってるんだよ!」
「……」
「どうしたんだ澪? なんだか元気ないけど」
「べ、別に大丈夫だ! なんでもない! う、うちは平気だ!」
と、露骨に挙動不審といった様子になっている澪。
陸はそんな彼女を見て思う。
(かなりキモい感じで説明してみたけど、予想以上に動じてないな)
真冬の話だと、澪はエロを毛嫌いしている。
それから考えるに、先の言動だけでビンタでも飛んてくるのを覚悟していた。
(だけどまだまだ作戦は始まったばっかりだ)
陸はそんなことを考えたのち、澪へと手を差し出す。
そして彼は彼女へと言う。
「さぁ、行こう澪! ムチムチスケベボディのフィギュア、澪にも好きになって欲しいな!」
「う、うん……うち、頑張る、ぞ」
言って、戸惑った様子で陸の手を掴んでくる澪。
陸はそんな彼女の手を掴んで、フィギュアショップの中へと入っていく。
するとすぐに見えてくるのは、たくさんの女の子のフィギュア。
その全てが際どいポーズや服装をしており、耐性のない人ならば——。
「……」
と、ゴミでも見るような目で店内を見回している澪。
まぁ、こういう反応になるだろう。
(理解がないと恥ずかしがるか、気持ち悪がだよな……だいたい)
思い出す。
陸がフィギュアを買ったその帰り道、いじめっ子に見つかってバカにされながらフィギュアを破壊されたことを。
(まぁ、澪はそんなことするような性格じゃないけど。やっぱり嫌いなものは嫌いなんだろうな)
やはりここに来たのは間違いではなかった。
澪はきっと今、こう思っているに違いない。
『陸、こんなのが好きなのか? 気持ち悪い……うち、陸のこと嫌いかもしれない』
澪に嫌われるのは、ぶっちゃけ胸が痛い。
けれど、胸が爆発して生きていけなくなるよりマシだ。
(それに澪にとっても、俺みたいなやつとはそうそうに縁を切った方が良いに決まってる)
告白したら胸が爆発する男と一緒になって、澪が幸せになれるわけがない。
さぁ、そうこうしている間にも目的地についた。
陸はこと一手をもって澪に嫌われて見せる。
チェックメイトだ。
陸は立ち止まり、目の前のショーケース——その中にあるムチムチドスケベボディのフィギュアへと目をやるのだった。
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