第三十三話 嫌われるために……

 時は休日の昼少し前。

 場所は陸の街から少し離れた別の街。

 ここにやってきた理由は簡単だ。


(ここはオタク街って言われるほどに、オタク系グッズがたくさん売られている)


 そして、陸は念入りにリサーチしてきたのだ。

 オタクグッズの中でも、かなり際どい——というか、エロ寄りな商品が売っている店を。


(今日、俺は澪を連れてその店に入る!)


 そして、変態的なリアクションをして澪に嫌われる。

 これが本日のプラン。


(念のため第二の作戦も用意してあるけど、できたらそこにいくまでに決めたいな)


 などなど。

 陸がそんなことを考えていると。


「わぁ〜! アニメの看板がいろんなところにある……すごい!」


 と、聞こえてくるのは澪の声だ。

 彼女は瞳をキラキラさせながら、陸へと言葉を続けてくる。


「陸、陸!! 今日はうちをデートに連れてきてくれて、ありがとうございます、だ!」


「デートに誘ってくれたのは澪だからね、デートコースを考えるくらいは俺がしないと」


「それでもありがとうなんだ! だってうち、こういうところに来るの初めてだし、それが陸と一緒ならきっと楽しい!」


「そう言ってもらえると嬉しいな。でも本当によかったのか?」


「なにがだ?」


 と、ひょこりと首を傾げてくる澪。

 陸はそんな彼女へと言う。


「勝手な押し付けかもしれないけど、女の子ってデートするなら水族館とか……そういうムードある場所の方がよかったんじゃないか?」


「うち、陸と一緒ならどこでもいいんだ! それに陸、今日はここに来たかったんだろ? 用事があるって言ってた!」


 無論。

 用事というのは嘘だ。

 件の作戦を実行するため、澪をここに誘き出すための嘘。


「うちな、陸が好きなものを好きになりたい! そうやって、陸と同じもので感動していける女の子になりたいんだ!」


 と、そんな健気なことを言ってきてくれる澪。

 そんな彼女は陸に手を差し出しながら、さらに言葉を続けてくる。


「だから陸! うちに陸のことをもっと教えてくれ! うちのこと、陸の好きなように染めてくれ!」


「じゃあさっそく、行きたいところがあるんだけど……いいかな?」


「うん! うちは陸にしっかりついていくぞ! おまかせだ!」


 と、犬なら尻尾をすごく振っていそうな勢いの澪。

 可愛すぎてやばい。


 陸の心臓に爆弾がなければ、『澪のヤバさ』を加味してなお付き合いたいレベルだ。


(本当、どうしてこんなことになったんだか)


 などなど。

 陸はそんなことを考えながら、澪の手を優しく握るのだった。

 彼女をエロエロ変態ワールドにエスコートするために。

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